崇厚

崇厚（すうこう、チュンホウ、満洲語: ᠴᡠᠩᡥᡝᠣ、転写：cungheo、Chonghou、1826年10月7日 - 1893年3月26日）は、清朝末期の官僚であり、字は地山と称しました。満洲鑲黄旗に属し、金の皇室の末裔であるワンギャ氏（完顔氏）の出身です。彼は河道総督麟慶の子で、盛京将軍崇実の弟にあたります。

崇厚は道光29年（1849年）に挙人となり、官僚としてのキャリアをスタートさせました。咸豊8年（1858年）には正四品の永定河道に任命され、同年に勃発したアロー戦争の戦後処理に携わります。咸豊10年（1860年）には正二品の長蘆塩運使に昇進し、咸豊11年（1861年）1月20日には三口通商大臣に任命され、天津条約によって開港した牛荘（現在の営口市）、天津、登州（現在の威海市と煙台市北部）の三港を管轄し、外国との交渉を担当しました。この任命は、恭親王奕訢の抜擢によるものであり、崇厚は奕訢が推進した洋務運動にも参加し、天津に天津機器製造局を設立しました。

しかし、民衆の外国人に対する敵対感情が高まる中、同治9年（1870年）にフランス領事アンリ・フォンタニールが暴徒に射殺される事件（天津教案）が発生しました。事態を収拾できないと判断した崇厚は、直隷総督曽国藩に応援を要請し、交渉を委ねました。崇厚自身は謝罪使としてパリへ赴きました。交渉は曽国藩の尽力でまとまり、その後の人事異動で曽国藩が両江総督に、李鴻章が後任の直隷総督となりました。また、三口通商大臣は北洋通商大臣と改称され、李鴻章が兼任することになりました。帰国後、崇厚は兵部左侍郎と総理各国事務衙門大臣に転任し、光緒2年（1876年）には急死した兄・崇実の盛京将軍も継承しました。

光緒4年（1878年）11月、ロシアがイリ地方を占領したため、事態を打開すべく全権大使としてサンクトペテルブルクへ派遣されました。光緒5年（1879年）10月2日、クリミア半島のリヴァディア宮殿でリヴァディア条約を締結しましたが、内容はイリ地方のロシアへの大幅な割譲やロシアの経済特権を認める不平等なものでした。この条約に対し、清国内では左宗棠や張之洞らが強く非難し、西太后も激怒しました。光緒6年（1880年）に帰国した崇厚は死刑を宣告されましたが、イギリス公使トーマス・ウェードの助命嘆願により赦免されました。その後、ロシアへ派遣された曽紀沢が、光緒7年（1881年）にリヴァディア条約を修正したイリ条約を締結し、清は面目を保ちましたが、崇厚は以後、活動の場を与えられないまま、光緒19年（1893年）に66歳でその生涯を閉じました。

崇厚は、清朝末期の動乱期において、外交官として重要な役割を担いましたが、結果的に不平等条約を締結した責任を問われ、失意のうちにその生涯を終えた人物でした。

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