最初のドイツ秋季展

最初のドイツ秋季展：20世紀初頭の前衛美術の祭典

1913年、ベルリンで開かれた「最初のドイツ秋季展（Erster Deutscher Herbstsalon）」は、当時の前衛美術の動向を決定づける重要な展覧会でした。この展覧会は、ベルリンの「デア・シュトゥルム画廊」の主宰者であるヘルヴァルト・ヴァルデンによって企画・運営されました。パリの「サロン・ドートンヌ（秋季展）」に触発され、ドイツにおける前衛美術の隆盛を促す目的で開催されました。

展覧会の概要

展覧会の開催資金は、実業家であり美術収集家でもあったベルンハルト・ケーラーが提供しました。1913年9月20日から12月1日まで、ベルリンのポツダム通りに位置する1200平方メートルの会場で、大規模な展示が行われました。ヴァルデンに加え、「青騎士」のメンバーであったアウグスト・マッケとフランツ・マルクが運営に協力しました。

当時のドイツでは、前衛美術の動きとして、1906年にドレスデンの「ブリュッケ」グループ展、1911年以降のミュンヘンでの「青騎士」グループ展などが存在しました。「青騎士」はドイツ国内だけでなく、海外でも展覧会を開催し、国際的な広がりを見せていました。ヘルヴァルト・ヴァルデンは、1912年にベルリンに「デア・シュトゥルム画廊」を開設し、「青騎士」やイタリアの「未来派」の作品を展示していました。また、同じく1912年にはケルンで美術家グループ「ゾンダーブント」が展覧会を開催しており、前衛美術への関心が高まっていました。

国際的な前衛美術の展示

「最初のドイツ秋季展」は、ヴァルデンの「世界の前衛美術の動向を紹介したい」という強い希望から、ドイツ国内だけでなく、海外の芸術家の作品も数多く展示されました。イタリアの未来派からは、ジャコモ・バッラ、ウンベルト・ボッチョーニ、カルロ・カッラ、ルイージ・ルッソロ、ジーノ・セヴェリーニ、アルデンゴ・ソフィチらが作品を出展しました。フランスの「キュビスム」を代表する画家、フェルナン・レジェは15点もの作品を出展し、大きな注目を集めました。さらに、ドイツ表現主義のグループ「青騎士」からは、アウグスト・マッケとフランツ・マルクがそれぞれ7点と8点の作品を出展しました。

その他にも、パウル・クレー、ワシリー・カンディンスキー、マリアンネ・フォン・ヴェレフキン、アレクセイ・フォン・ヤウレンスキー、アルフレート・クービン、ガブリエレ・ミュンター、ハインリヒ・カンペンドンク、リオネル・ファイニンガー、ロベール・ドローネー、ソニア・ドローネー、ジャン・アルプ、マックス・エルンスト、マルク・シャガール、フランシス・ピカビア、オスカー・ココシュカ、ピート・モンドリアンなど、そうそうたる芸術家たちが参加しました。

展覧会カタログ

展覧会カタログには、90名の画家、彫刻家、建築家の作品が366点の図版とともに掲載されました。しかし、実際に展示された作品の図版は50点にとどまりました。カタログは、展覧会の概要を把握する上で重要な資料となっています。

アンリ・ルソー回顧展

「最初のドイツ秋季展」では、1910年に亡くなった素朴派の画家、アンリ・ルソーの回顧展も併せて開催されました。ルソーの油絵21点に加え、ペン画や素描も展示され、彼の独特な画風が注目を集めました。この回顧展は、ルソーの作品に対する評価を高める上で大きな役割を果たしました。

まとめ

「最初のドイツ秋季展」は、20世紀初頭の前衛美術の動向を決定づける上で重要な役割を果たしました。国内外の著名な芸術家が一堂に会し、それぞれの革新的な作品を展示したことで、美術史における重要な転換点となりました。この展覧会は、その後の美術界に大きな影響を与え、前衛美術の発展に大きく貢献しました。

参考文献

Aracil, Alfredo; Rodríguez, Delfín (1983). El siglo XX. Entre la muerte del arte y el arte moderno. Tres Cantos (Madrid): Ediciones ISTMO, S.A. ISBN 84-7090-126-5.
Behr, Shulamith (2000). Expresionismo. Movimientos en el Arte Moderno. Serie Tate Gallery. Madrid: Encuentro. ISBN 84-7490-578-8.
* Walden, Herwarth (1913). Erster Deutscher Herbstsalon. Berlin 1913 (en alemán). Berlín (Alemania): Verlag Der Sturm.

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