有田正広

有田正広（ありたまさひろ、1949年 7月22日 - ）は、日本の音楽家であり、フルート（特にフラウト・トラヴェルソ）奏者、指揮者、そして音楽教育者として多岐にわたる活動を展開しています。東京に生まれ、バロック音楽を中心にルネサンスから近代までの幅広い時代のフルート音楽を演奏し、楽曲に応じて楽器を使い分けることで知られています。また、数多くの録音をリリースしており、その解説文の多くを自ら執筆しています。現在は、桐朋学園大学特任教授、昭和音楽大学客員教授、昭和音楽大学ピリオド楽器研究所所長を務めています。チェンバロ奏者である有田千代子は妻。

経歴

東京で生まれた有田正広は、幼少期からヴァイオリニストの叔父の影響を受け音楽に親しんで育ちました。小学生の頃にビゼーのフルート曲を聴いたことがきっかけでフルートの魅力に目覚め、13歳からフルート奏者の林リリ子に師事しました。桐朋学園大学に進学後、フランス・ブリュッヘンのリコーダー演奏に感銘を受け、留学を決意します。

1972年に桐朋学園大学を首席で卒業。同年、第40回NHK・毎日音楽コンクール（現・日本音楽コンクール）の管弦楽（フルート）部門で第1位と特賞を受賞しました。1973年、ベルギーのブリュッセル王立音楽院に留学し、ヴィーラント・クイケンに室内楽を、弟のバルトルト・クイケンにトラヴェルソを師事。1974年からはコレギウム・アウレウムのメンバーとして、ヨーロッパや日本で演奏活動を行いました。1975年にブリュッセル王立音楽院をプルミエ・プリで卒業。同年、ブルージュ国際音楽コンクールのフラウト・トラヴェルソ部門で第1位を獲得。1977年にはオランダのハーグ王立音楽院に入学し、半年で最高栄誉賞つきソリスト・ディプロマを得て卒業。帰国後は、フランス・ブリュッヘン指揮の「18世紀オーケストラ」、クイケン兄弟、トレヴァー・ピノック指揮の「イングリッシュ・コンサート」、レイチェル・ポッジャーなど、国内外の著名な音楽家と共演しました。

1978年、桐朋学園大学に新設された古楽科の講師に就任。翌年には花岡和生、本間正史、有田千代子と共に古楽科講師となり、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の中野哲也を加えてオトテール・アンサンブルを結成。1979年に『18世紀フランスの室内楽』でドイツ・グラモフォンの古楽レーベル、アルヒーフからレコードデビューし、芸術祭優秀賞（レコード部門）を受賞しました。

1981年には、ブリュッヘン指揮の『18世紀オーケストラ』の第1回ヨーロッパ公演でソリストを務め、1982年のヴェネツィアで開催されたコレッリ＝ヴィヴァルディ・フェスティバルでも「18世紀オーケストラのソリストたち」として演奏しました。同年、オトテール・アンサンブルにバロック・ヴァイオリンの高田あずみが加わりました。

1985年、トレヴァー・ピノック指揮の『イングリッシュ・コンサート』の日本公演でソリストを務め、同年発売のレコード『ドイツ・バロックのフルート音楽』が芸術祭作品賞とレコード・アカデミー賞を受賞しました。

1989年には、日本コロムビアから古楽レーベル「デンオン・アリアーレ」が立ち上がり、『バッハ、フルート・ソナタ全集』で同レーベルのスタートを切りました。1988年には、古楽オーケストラである東京バッハ・モーツァルト・オーケストラを結成し、1989年4月に結成コンサートを開催。これらの活動が高く評価され、第21回サントリー音楽賞を受賞しました。

1990年、「18世紀音楽祭協会」運営の「おぐに古楽音楽祭」の音楽監督に就任し、1999年に「福岡古楽音楽祭」に発展した後も2013年の最終公演まで務めました。

2006年には、東京芸術劇場で東京バッハ・モーツァルト・オーケストラによるモーツァルト没後250年記念コンサートを開催し、モーツァルトのフルートと管弦楽のための楽曲の全曲演奏と録音を行い、高い評価を得ました。以後、同劇場で定期公演を行うようになりました。

2007年、昭和音楽大学に設立されたピリオド楽器研究所の所長に就任。

2009年3月、東京バッハ・モーツァルト・オーケストラの最終公演を行い、同年4月にはロマン派をレパートリーとする日本初のピリオド楽器によるオーケストラ、クラシカル・プレイヤーズ東京（CPT）に発展させました。2017年10月13日の解散公演をもってCPTの活動を終了しました。

2018年、第30回ミュージック・ペンクラブ音楽賞（特別賞）を受賞。

2021年11月、第8回JASRAC音楽文化賞を受賞。

有田正広は、その長年にわたる音楽活動を通じて、日本の古楽界に多大な貢献をしてきました。

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