服部 (アルバム)

UNICORN 3rd Album 『服部』

1989年6月1日にCBSソニーからリリースされたUNICORNの3枚目のオリジナルアルバム『服部』。
前作『PANIC ATTACK』から約1年ぶりのリリースとなった本作は、それまでの奥田民生中心の作詞作曲から一転、メンバー全員が楽曲制作に関わるという大きな変化を遂げました。

アルバムの背景

デビューアルバム『BOOM』(1987年)の頃、UNICORNは「ハードロックではなく、ハードなロックをやる」というキャッチフレーズで、ドラマチックで切ないメロディの楽曲を中心に展開していました。
しかし、メンバーの中には、そうしたアイドル的なイメージに対する鬱屈した思いが溜まっていました。
1988年にはキーボードの向井美音里が脱退。その後、阿部義晴が加入し、2枚目のアルバム『PANIC ATTACK』ではスタッフとしてクレジットされました。

制作の変革

『服部』のレコーディングは、1989年2月から様々なスタジオで行われました。
制作にあたっては、従来のイメージを覆すタイトルが採用され、制作方法も大きく変化しました。
メンバー全員が作詞・作曲を手掛け、ボーカルも奥田民生だけでなく、他のメンバーやゲストも担当しています。

奥田民生は、「ちゃんと自分らで考えて作れるようになった、最初のアルバム」と語っています。
このアルバム制作を通じて、UNICORNの歌詞や演奏スタイルは、従来のロックバンドの枠にとらわれないものへと進化しました。
ディレクターの河合誠一マイケルの影響も大きかったと奥田は述べています。

音楽性とアルバムタイトル

本作の音楽性について、ライターの藤野洋子は、ジャズ、ワルツ、サンバ、インド音楽、ロックンロール、フォークソングなど、バラエティに富んだ内容であると評しています。
奥田民生は、歌詞の中で男子や女子を題材としたものが減少していることについて、「あきちゃったの、それ自体に」と述べています。

アルバムタイトルは、メンバーの「意味のないタイトルにしたい」という要望から決定されました。
奥田民生は、「ほんとに何の意味もないタイトルにしたかった」と語っています。

収録曲

アルバムには、インストゥルメンタルの「ハッタリ」、子供が歌う「ジゴロ」、ハードロックナンバーの表題曲「服部」、ライブで人気の「おかしな2人」、ユーロピアンな雰囲気の「ペーター」など、個性的な楽曲が多数収録されています。

SIDE Bには、レゲエに挑戦した「珍しく寝覚めの良い木曜日」、シングルカットされた「デーゲーム」、同性愛をテーマにした「人生は上々だ」、ブラスアレンジが印象的な「抱けるあの娘」、代表曲「大迷惑」、そしてフォークソング調の「ミルク」が収録されています。

リリースとプロモーション

アルバムは、CD、CTの2形態でリリースされました。
CDの初回限定盤には、「服部」の題字が書かれた巾着袋が付属していました。

UNICORNは、本作のプロモーションでテレビ出演を本格化させ、「大迷惑」のヒットも相まって、大きな人気を獲得しました。

アートワーク

ジャケット写真には、メンバーではなく、老齢の男性の顔が大写しで採用されています。
モデルは、当時東京都荒川区在住の鳶職だった中村福太郎氏です。
ディレクターの河合誠一マイケルが、リチャード・アヴェドンの写真集を見て、ジャケットにできないかと考えていたことがきっかけで起用されました。

ツアー

本作を受けて、「UNICORN WORLD TOUR 1989 服部」と題したコンサートツアーが開催されました。
ツアー最終日には、初の日本武道館公演が行われ、全国から選ばれた服部姓の人々が招待されました。

批評と影響

本作は、音楽評論家から概ね肯定的な評価を受けています。
『CDジャーナル』は、「ユーモアあふれる独自のロック・サウンドを展開した」と評し、名盤であると称賛しました。
ロックバンド・マカロニえんぴつのメンバー、はっとりの芸名は本作のタイトルから取られています。

チャート成績

本作は、オリコンアルバムチャートで最高位3位を獲得し、27.1万枚を売り上げました。

多様な音楽性とユーモアに溢れた『服部』は、UNICORNの音楽性を大きく広げた作品として、今もなお多くのファンに愛されています。

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