服部ケサ

服部ケサ：ハンセン病患者に寄り添った女医

服部ケサ（1884年7月22日 - 1924年11月22日）は、日本の医師であり、ハンセン病患者の治療に生涯を捧げました。歌人である服部躬治を兄に、小説家の水野仙子を妹に持つ文化的な家系に生まれました。

生い立ちと医師への道

1884年、福島県岩瀬郡須賀川村（現在の須賀川市）で、商家を営む父・直太郎と母・せいの次女として誕生しました。尋常小学校、高等小学校を経て裁縫専修学校を卒業後、1901年に兄を頼って上京しますが、家族の病気のために帰郷します。明治期の近代化が進む一方で、閉塞感を抱いていたケサは、病弱な家族を支えたいという思いから医師を志すようになります。

女医としての苦難とハンセン病との出会い

1905年、東京女医学校に入学し、1909年に前期医術開業試験に合格しました。1910年には洗礼を受けますが、同年赤痢に罹患し、生死の境をさまよいます。1914年に医師免許を取得しますが、当時の女性医師の就職先は限られていました。そのため、三井慈善病院に看護師として勤務することになります。この病院でハンセン病患者の診療に多く携わることになり、後に同志となる三上千代と出会います。

草津での献身的な活動

1917年、ハンセン病患者の診療施設設立を計画していたコンウォール・リーと三上千代に請われ、群馬県草津町へ向かいます。翌年に開設された聖バルナバ医院で、多くの患者の診察にあたりました。1918年には、肋膜炎を患っていた妹のてい（水野仙子）も転地療養のため草津に身を寄せますが、翌年亡くなります。

リーとの対立と晩年

体調が必ずしも万全ではなかった服部は、事業主でもあるリーとの間で、働き方や宗派の違いから考え方の相違が生まれます。1924年、持病の心臓病が悪化するなか、三上とともに聖バルナバ医院を退職し、新たに「鈴蘭医院」を開設しますが、同年11月22日、心臓麻痺によりその生涯を閉じました。

死後

ケサの功績を称え、草津聖バルナバ教会に墓があるほか、須賀川市の十念寺にも分骨埋葬されています。1956年には、須賀川市にある公立岩瀬病院の敷地内に顕彰碑が建立され、2002年には須賀川市社会福祉協議会によって「服部ケサ賞」が創設されました。この賞は、社会福祉の分野で顕著な功績を上げた個人や団体を表彰するもので、彼女の偉業を未来に伝えるためのものです。

まとめ

服部ケサは、困難な時代の中で、ハンセン病患者に寄り添い、その治療に尽力しました。女性医師として、また一人の人間として、その生涯を社会貢献に捧げた彼女の生き方は、今もなお多くの人々に感動と勇気を与えています。

参考資料

最上二郎、2004年12月20日『ハンセン病と女医服部けさ』歴史春秋出版社、ISBN 978-4-8975-7523-0
須賀川人物伝 服部ケサ 外部リンク

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