服部正利

服部正利：日本競馬史に名を刻んだ名調教師

服部正利（はっとり まさとし、1930年11月25日 - 1987年11月16日）は、愛知県名古屋市出身の、日本競馬界に多大な貢献をした元騎手、元調教師です。1986年には中央競馬全国最多勝利調教師の栄冠に輝き、その名声を不動のものとしました。

騎手時代：華麗なるキャリアの幕開け

服部正利は1943年、鳴尾で厩舎を営んでいた義理の伯父・伊藤勝吉の下で、騎手の道を歩み始めます。太平洋戦争による競馬の中断を挟みながらも、1948年に騎手免許を取得。騎手時代には、映画会社大映社長の永田雅一氏に可愛がられ、数々のレースに騎乗しました。中でも1953年の東京優駿（日本ダービー）では、「羅生門」に因んで名付けられた競走馬ラショウモンに騎乗、注目を集めました。1958年にはユーシユンで京都大障害（秋）を制し、重賞競走初勝利という栄誉を手にしました。1965年までの騎手生活で、通算176勝を記録するなど輝かしい実績を残しています。

調教師時代：数々の名馬を育成

1966年、35歳の若さで調教師に転身。1971年、ニホンピロムーテーの毎日杯制覇で重賞初制覇を飾り、その後の活躍の足掛かりとしました。ニホンピロムーテーはその後も神戸杯、京都新聞杯を連勝し、菊花賞でGI級競走初制覇を達成。この勝利を機に、服部正利の名は一躍有名になりました。1974年には、キタノカチドキが皐月賞を含む二冠を達成するなど、数々の名馬を世に送り出しました。大レース前には強気のコメントを連発することから「服部ラッパ」と呼ばれましたが、その言葉は常に結果で裏付けられました。

1977年には、マルゼンスキーが中京競馬場に遠征してきた際、関西の有力馬が出走を回避し、競走が不成立になる危機に瀕しました。しかし服部は、関西競馬の威信をかけて、自厩舎の2頭を繰り出し、競走成立に貢献しました。このエピソードは、服部正利の強い責任感と、関西競馬界への揺るぎない愛情を物語っています。

また、服部正利はニホンピロウイナーの育成においても、その先見の明を見せつけました。皐月賞で敗れた後、すぐに短距離路線に転向を決め、マイルチャンピオンシップなどで勝利を収め、大成させました。これは、中央競馬が本格的に短距離路線を整備する前年のことでした。息子の利之氏は、この決断を「先見の明があった」と振り返っています。一方、弟子である若手騎手への指導は厳しく、その厳しさゆえに、昆貢や松本弘といった騎手が他厩舎、地方競馬に移籍するなど、その指導スタイルも話題となりました。

晩年と死：競馬界への大きな損失

1986年、41勝を挙げて中央競馬全国最多勝利調教師に輝きました。しかし同年、胃がんが発覚。闘病生活を送った後、現場に復帰しますが、1987年11月16日、56歳という若さでこの世を去りました。調教師として絶頂期にあった最中の死は、多くの関係者に深い悲しみを与えました。息子の服部利之氏も2023年7月に亡くなり、父子そろって調教師として現役のまま生涯を終えたことになります。

数々の名馬たち

服部正利厩舎からは、ニホンピロムーテー、キタノカチドキ、ニホンピロウイナーなど、日本競馬史にその名を刻んだ数々の名馬が輩出されました。これらの名馬は、服部正利の卓越した調教師としての才能と、馬への深い愛情によって生み出された産物と言えるでしょう。

まとめ

服部正利は、騎手として、そして調教師として、日本競馬界に大きな足跡を残した人物です。その厳格な指導、先見の明、そして馬への深い愛情は、多くの関係者に深い感銘を与え続け、現代の競馬界にも大きな影響を与え続けています。彼の功績は、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

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