望月氏

望月氏の歴史と系譜

望月氏（もちづきうじ）は、信濃国佐久郡望月地方を本貫地とする武家の氏族です。この氏族は、滋野氏の流れをくむことから、その歴史は平安時代に遡ります。滋野氏は滋野為道の子である滋野則重、またはその孫である滋野広重に始まるとされ、彼らから分かれた武士団の中で、海野氏や根津氏と共に「滋野三家」と呼ばれています。

姓の起源

望月という姓の由来は、平安時代初期の貞観7年（865年）に遡ります。当時、信濃国で行っていた貢馬の「駒牽」の儀式が、8月29日から満月の日である8月15日に変更されました。この日に供された貢馬は「望月の駒」と称され、貢馬の数が最も多かった滋野氏に対して、望月の姓が与えられたと伝わっています。

滋野氏の分家

滋野氏は、その流れを受けて分家が形成されました。海野氏の長男である海野小太郎幸明から生まれた滋野直家は根津氏を、三男の滋野重俊が望月氏を興しました。これらの氏族は、戦いの際にお互いに協力し、出陣の際の位置取りにおいても名称を使ったとされています。具体的には、海野氏が戦う際は「海野幡中」、望月氏が戦う時は「望月幡中」と称され、三家は緊密に結びついていました。

鎌倉時代の隆盛

望月氏の全盛期は治承4年（1180年）の木曾義仲挙兵に従軍した頃と言われています。当時、国親・重隆父子は義仲のもとで名を馳せ、望月氏は佐久郡からさらなる勢力を拡大しました。横田河原の戦いでは、佐久衆が中核となり、彼らが編成した騎馬軍団が強力な戦力として機能していました。さらに、義仲が没落した後、望月氏は鎌倉幕府の御家人としての地位を確立し、数々の戦闘に参加しました。

室町時代の活動

鎌倉幕府が終焉すると、望月氏は中先代の乱に立ち上がり、北条時行を支持しました。攻撃を受けた本拠地の望月城を失いますが、すぐに再建し、勢力を保ち続けました。この時期、多くの一族は南朝に加わり、戦い続けました。応永7年（1400年）の大塔合戦にも参戦し、数々の戦功を立てました。

戦国時代の衰退と変遷

戦国時代に入ると、望月氏は武田氏や長尾氏による攻撃を受け、衰退の道をたどります。嫡流の望月昌頼は武田氏に抵抗しますが敗北。庶流の望月源三郎は武田氏に臣従し、その後信雅と名乗ります。信雅は長篠の戦いで討死し、その後、一族は新たな移転を余儀なくされ、難を逃れた者たちは静岡県へと移り住みました。現在でも多くの望月姓の子孫がこの地域に住んでいるとされています。

系譜と家紋

望月姓の由来となる「望月の牧」は、奈良時代から朝廷に馬を供えていたとされ、この伝統も望月氏に受け継がれました。家紋には九曜紋や七曜紋があり、望月氏は「月天七九曜」を本家に持ちつつ、独自の紋様を発展させました。望月城跡からは戦国時代に使われたと見られる家紋が発見されています。

このように、望月氏は佐久郡を中心に栄えた武士の一族として、その歴史や文化を色濃く刻んできました。

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