根津氏

禰津氏（ねつし）とは

禰津氏（祢津氏とも表記）は、信濃国小県郡禰津（現在の長野県東御市祢津周辺）を本拠とした武家の一族です。滋野氏の嫡流である滋野重道の次男、道直が根津を名乗ったのが始まりとされています。滋野氏の中でも、海野氏、望月氏と並び「滋野三家」として知られ、平安時代末期から信濃国を中心に勢力を誇りました。

出自と勢力拡大

禰津氏は、滋野氏一族として信濃国に勢力を拡大しました。特に、平安時代には信濃十六御牧の一つである楢原・新張牧を支配し、力を蓄えました。また、代々の婚姻関係を通じて諏訪氏との結びつきも強く、諏訪神党にも所属していました。さらに、鷹を使う武勇の一族としても知られ、「根津・諏訪流鷹匠」という流派を創始しました。

居館と城

禰津氏の居館としては、祢津古御館や宮入御館が知られています。また、祢津城（上の城、下の城）、矢立城、大石城、別府城、柴生田城、鷲尾城など、多くの城を拠点としていました。特に、祢津城は尾根に主郭を置き、曲輪を連ねた山城で、武田氏による改修も行われたと考えられています。

菩提寺と通称

禰津氏の菩提寺は定津院です。歴代当主は「小次郎」や「神平」を名乗ることが多かったとされています。「小次郎」は、嫡流である海野氏が「小太郎」を名乗ったことに対比して、次男家である禰津氏が用いたものと考えられています。また「神平」は、猶子である諏訪氏一門（神党）内での呼称であったと思われます。

平安・鎌倉・南北朝時代の活躍

禰津氏は、平安時代末期の保元の乱や平治の乱で源義朝に従い活躍しました。源平合戦では、源義仲の挙兵に際し、根津次郎貞行、根津三郎信貞が従軍しました。鎌倉時代には、源頼朝の上洛や承久の乱にも参戦し、武勇を示しました。また、次郎宗直は鷹匠としても名を馳せ、美濃守に任官しています。南北朝時代には、足利直義方として観応の擾乱で活躍したほか、南朝方としても戦いました。特に、祢津宗貞は、武蔵野合戦や桔梗ヶ原の戦いで南朝方の主力として活躍しました。

美濃国への土着と伝説

根津甚平是行は、信濃国根津の領主でしたが、美濃国恵那郡に土着し、長興寺に子宝を授かる観音様にお参りしたところ、嫡子を授かったという伝説があります。また、根津甚平是行と八重羽の雉伝説も残っています。

室町時代の勢力と衰退

室町時代には、大塔合戦で大将として従軍し、根津氏の勢力が広範囲に及んでいたことがわかります。しかし、その後、信濃守護小笠原氏との抗争や、村上氏との戦いなどで、徐々に勢力を失っていきました。特に、海野大乱では、他の滋野一族とともに村上氏に敗れ、領地を縮小させていきました。

戦国時代の動向

戦国時代には、武田信虎が海野平に侵攻した際に、海野氏や真田氏と共に上野国へ逃亡した一族もいましたが、根津元直は諏訪氏の猶子であったため本領を安堵されました。その後、根津氏は武田氏に臣従し、武田信玄の側室として禰津御寮人を出すなど、重縁関係で結ばれました。長篠の戦いでは、根津月直が討ち死にしています。武田氏滅亡後は、松鴎軒常安（根津政直）が徳川家康に仕え、上野国豊岡に所領を得ました。

分家による上野豊岡藩立藩と断絶

松鴎軒常安の甥である根津信政は、上野豊岡藩を立藩し大名となりました。しかし、三代で無嗣断絶となり、大名としての禰津氏は途絶えました。

本家のその後

本家の家督を継いだ根津昌綱は、真田昌幸同様、主君を転々としましたが、最終的には真田昌幸に同心し、家老として重用されました。子孫は、松代藩の家老や目付を務めました。

まとめ

禰津氏は、信濃国に発祥し、武勇に優れた一族として歴史に名を残しました。滋野三家の一角として、平安時代から戦国時代、そして江戸時代へと、その歴史は長く続きました。

系譜

（省略）

脚注

（省略）

注釈

（省略）

出典

（省略）

参考文献

柴辻俊六 『真田昌幸』（人物叢書）吉川弘文館、1996年
三島正之「川中島合戦と城郭（続）―関連城郭から展望する合戦の実像―」『中世城郭研究』第21号、中世城郭研究会、2007年、4-63頁、ISSN 0914-3203。
山中さゆり、「禰津家文書について禰津家文書について」、松代 第28号(2014年)、松代文化施設等管理事務所
田中豊茂『信濃中世武家伝 : 信濃武士の家紋と興亡』信濃毎日新聞社、2016年11月。ISBN 9784784072989。
二本松泰子『鷹書と鷹術流派の系譜』三弥井書店、2018年2月。ISBN 978-4-8382-3332-8。

史料

『吾妻鏡』
『太平記』
『大塔物語』
『高白斎記』
『松代藩史』

関連項目

* 祢津村

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