朝陽丸

朝陽丸（ちょうようまる）

朝陽丸は、江戸幕府が海軍創設のためにオランダに発注した最初の軍艦の一つです。艦名は「朝日」や「山の東」を意味し、当時の日本が近代化に向けて進む象徴的な存在でした。

艦の概要

朝陽丸は、木造スクーナー型のコルベットで、内輪式の蒸気船でした。姉妹艦である咸臨丸とともに、幕府海軍の主力として期待されました。当初は「エド（Yedo、江戸）」という名で建造されました。

艦歴

長崎海軍伝習所

嘉永6年（1853年）のペリー来航を契機に、幕府は海軍力強化の必要性を痛感し、オランダに軍艦の発注と乗組員養成のための長崎海軍伝習所の設立を依頼しました。朝陽丸はその一環として建造されたコルベット2隻のうちの1隻で、代金は1隻あたり10万ドルでした。

咸臨丸に遅れて安政5年（1858年）に長崎に到着し、カッテンディーケによって日本に回航されました。カッテンディーケは、朝陽丸を回航してきた船長が若妻を同伴しており、その珍しい衣装が長崎で評判になったと記録しています。

初期幕府海軍での活躍

朝陽丸は、蟠竜丸、咸臨丸とともに、初期の幕府海軍の主力艦として活躍しました。万延元年（1860年）には神奈川港の警備に就き、イギリス船の捜索にも出動しました。文久元年（1861年）には、第一次東禅寺事件の際に長崎へ連絡航海を行い、小笠原諸島への物資輸送にも従事しました。

文久2年（1862年）には、伊勢、志摩、尾張の測量や、八丈島での小笠原への移民募集のために派遣されました。生麦事件後にイギリスとの関係が悪化すると、小笠原からの日本人撤収にも従事しました。

文久3年（1863年）には、奇兵隊が小倉藩領を占領した事件の際に、長州藩との交渉に向かいましたが、徳島藩からの砲撃や奇兵隊士による小倉藩士の切腹事件など、数々の困難に見舞われました。

戊辰戦争と箱館戦争

慶応4年（1868年）に戊辰戦争が勃発すると、朝陽丸は明治政府の手に渡り、明治政府軍に所属しました。中牟田倉之助が艦長となり、旧幕府軍を追撃して蝦夷地へ向かいました。

箱館戦争では、松前攻撃や箱館湾海戦で活躍しましたが、明治2年5月11日（1869年6月20日）の箱館総攻撃において、旧幕府軍艦蟠竜丸の砲撃を受け、火薬庫が誘爆して轟沈しました。中牟田倉之助は一命を取り留めたものの、副長以下乗組員の多くが戦死しました。

その後

箱館戦争終結後、朝陽丸乗組員の戦死者を弔う「己巳役海軍戦死碑」が函館山に建立されました。朝陽丸は、幕末の激動の時代を駆け抜けた悲劇の軍艦として、その名を歴史に刻んでいます。

船将

(艦長代)中牟田武臣(倉之助):明治2年1月 -
中牟田倉之助 徴士：明治2年3月30日(1869.5.11) - 明治2年6月（1869年7月ごろ）

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