朝鮮労働党統一戦線部

朝鮮労働党統一戦線部（トンジョンブ）とは

朝鮮労働党統一戦線部は、北朝鮮の主要な情報機関の一つであり、通称「トンジョンブ（統戦部）」として知られています。俗に他の党諜報機関とともに「三号庁舎」とも呼ばれています。

概要

1977年に金日成の直接命令により新設され、韓国国内の民間団体や海外同胞（特に在日韓国・朝鮮人）の包摂を担当しています。南北対話や交流も指導しており、過去には文化部と呼ばれていました。他の機関と比較して、公然の宣伝工作を行う点が特徴です。また、外交問題にも直接・間接的に関与し、海外の親北朝鮮派の結集や組織構築、反北朝鮮派の孤立化工作、情報宣伝を専門的に行っています。最近まで、対南地下放送「救国の声放送」も運営していました。1973年には、統一戦線部幹部工作員によって埼玉県在住の母子が拉致される事件も発生しています。

2010年代以降は、対南関係の業務に加え、アメリカ合衆国との折衝も担うようになりました。2019年の米朝首脳会談に至るまでの調整過程では、アメリカ合衆国国務長官のカウンターパートとして統一戦線部長が対応しました。

朝鮮総聯との関係

2013年以降、統一戦線部の傘下機関である第225部（旧対外連絡部）が、日本の朝鮮総聯を指導しています。日本での情報活動の多くは、朝鮮総聯系の貿易会社を隠れ蓑にして行われています。さらに、韓国と北朝鮮で有事が起きた際には、日本にある組織を使って工作を行うとされています。一部には、朝鮮総聯関係者が土台人（工作員を支援する協力者）であるとの疑惑も存在します。

また、朝鮮総聯や朝鮮学校から金正日への「忠誠の資金」という名目で献金を集め、外貨獲得を行っています。在米僑胞の包摂も担当し、獲得したスパイを社会文化部に移設しています。

秘密工作機関「洛東江」

「洛東江」は日本にある秘密工作機関で、韓国南部に流れる川の名前から命名されました。社会文化部（当時）の直属組織であり、大物工作員である曹延楽は文世光事件に関与したとされています。また、張竜雲は朝鮮総聯活動家からスカウトされ、「洛東江」に所属した在日工作員でした（コードネームは「黒い蛇」）。彼は金日成・金正日父子のために、闇世界を通じて多額の不正資金を集めましたが、後に組織を裏切り、その実態を暴露する書籍を著しました。この書籍では、「洛東江」が田中実拉致事件の実行犯グループであることも暴露されています。

北朝鮮の「民間団体」

統一戦線部は、北朝鮮国内の「民間団体」を指揮しています。これらの団体は、朝鮮労働党の正体を隠すための隠れ蓑として利用されています。主な団体としては以下のようなものがあります。

朝鮮基督教連盟 (KCF)
朝鮮仏教徒連盟
朝鮮社会民主党
天道教青友党
祖国統一民主主義戦線中央委員会
朝鮮赤十字会

組織

複数の情報源によると、統一戦線部は以下のような組織を傘下に持っています。

直接浸透課
南北会談課
海外担当課
第7課(朝鮮総聯課)
朝鮮総聯
学習組
南朝鮮研究所（韓国の情報を収集）

歴代部長

金容淳（ - 2001年、交通事故により死亡）
金養建（2007年 - 2015年、交通事故により死亡）
金英哲（2016年 - 2019年）
張金哲（2019年 - 2021年）朝鮮労働党朝鮮アジア太平洋平和委員会委員兼任
金英哲（2021年 - 現任）

有名な工作員・関係者

宋斗律
崔承哲

まとめ

朝鮮労働党統一戦線部は、北朝鮮の対外工作を担う重要な機関であり、その活動は多岐にわたります。情報収集、組織構築、宣伝工作、そして非合法活動まで、その活動範囲は広範です。北朝鮮の政治体制を維持し、国際社会における影響力を拡大するための重要な役割を担っています。

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