木下牧子
日本の作曲家、木下牧子は1956年に東京都で生まれました。幼少よりピアノを学び、東京都立芸術高等学校（ピアノ専攻）を卒業。一年間の浪人期間を経て東京藝術大学作曲科へ進学し、学部および大学院を修了しました。在学中、作曲を石桁真礼生、黛敏郎、浦田健次郎、丸田昭三に、ピアノを岩崎操に師事しています。大学院の修了作品である管弦楽曲「壺天」は、作曲科の首席卒業作品として演奏されました。現在は日本現代音楽協会の会員でもあります。
20代の頃は主にオーケストラ作品を中心に創作活動を行い、日本音楽コンクール管弦楽作曲部門や日本交響楽振興財団作曲賞などで入選するなど、その才能が早くから認められていました。また、「序奏とアレグロ」で吹奏楽の分野にもデビューを果たしています。
キャリアの転換期となったのは30代です。この頃から合唱作品の創作に重点を置くようになります。これは、声楽家で指揮者の鈴木成夫との出会いが大きな契機となりました。鈴木氏が木下氏の初期の歌曲「涅槃」（1978年）を絶賛したことから、鈴木氏が指揮する合唱団のために新作が委嘱され、これが木下氏の合唱組曲第1作「方舟」（作詩：大岡信）となりました。この作品は「かなりエポック・メイキング」と評され、続く組曲「ティオの夜の旅」などと共に、合唱界に新しい風を吹き込み、「ポスト新実徳英」と目されるほど歓迎されました。
合唱作品で確固たる地位を築いた現在も、木下氏は自身の創作の「本質は器楽にある」と述べています。実際、1990年代半ばまではオーケストラ作品も定期的に発表しており、「大きい編成を書きたい」という強い願望を持っていました。彼女が究極的に追求したのは、合唱と管弦楽を組み合わせた大規模な作品であり、これは「邪宗門秘曲」の管弦楽伴奏版（2001年）、「四万十川」（1999年）、そしてオペラ「不思議の国のアリス」（2003年）といった作品で実現されています。
歌曲の分野にも、若い頃はほとんど関心がなかったそうですが、1990年代半ばからその魅力に目覚め、2000年までに3冊の歌曲集を精力的に出版するなど、このジャンルでも多数の優れた作品を生み出しています。これらの歌曲集には、自身の合唱曲を歌曲用に編曲したものも含まれています。
創作姿勢として、木下氏は一貫してクラシック系の「純音楽作品」の作曲に専念しており、商業音楽への進出には否定的な考えを示しています。これは「ホールで演奏された時に最も輝く曲」を書き続けたいという信念に基づいています。そのため、マスメディアを通して彼女の作品が発表される機会は、NHKでの数作品程度に限られています。
2003年にオペラを発表した後、再び吹奏楽や管弦楽の作曲にも力を入れ始め、現在ではあらゆるジャンルで活躍するオールラウンドな作曲家として知られています。特に、モーツァルト劇場創立20周年記念委嘱作品として初演されたオペラ「不思議の国のアリス」により、三菱UFJ信託音楽賞奨励賞を受賞しました。これまでに5回、毎回異なる編成の作品展を開催しており、2019年の第5回「オーケストラ作品展」は大きな成功を収めました。
木下牧子の代表的な作品は多岐にわたります。
オペラ・音楽劇: オペラ「不思議の国のアリス」（2003/05年）、朗読/独唱、クラリネット、ピアノ（打楽器）のための音楽物語「蜘蛛の糸」（2012年）など。
管弦楽曲: 管弦楽曲「壺天」（1980年）、管弦楽のための「幻想曲」（1982年）、管弦楽のための「AURA」（1987年）、弦楽オーケストラのための「シンフォニエッタ」（1996年）、呼吸する大地〜オーケストラのための（2010/19年）、ピアノ・コンチェルト（2012/19年）、ルクス・エテルナ〜オーケストラのための（2016/19年）、アルトサクソフォン・コンチェルト（2021年）など。
管弦楽伴奏合唱曲: 「四万十川」、「虚無の未来へ」、「邪宗門秘曲」、「鴎」、「たいようオルガン」、「光はここに」など。
吹奏楽曲: 序奏とアレグロ（1982年度全日本吹奏楽コンクール課題曲B）、シンフォニア（1988年）、パルセイション（2006年度全日本吹奏楽コンクール課題曲III）、ゴシック（2006年）、サイバートリップ（2008年）など。
室内楽曲: ふるえる月〜打楽器アンサンブル（2000年）、ねじれていく風景〜クラリネット、ヴァイオリン＆ピアノのための（2004年）、打楽器コンチェルト（2008年）、もうひとつの世界〜ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ＆ピアノのための（2011年）、夜は千の目を持つ〜アルト・サクソフォン＆ピアノのための（2011〜2012年）、時のかけら〜マリンバ＆ピアノのための（2014/17年改訂）、SPARKS〜マリンバ・ソロのための（2015年）、砂の書～マリンバ・オーケストラのための（2017年）など。
ピアノ曲: こどものためのピアノ曲集「不思議の国のアリス」（1993年）、9つのプレリュード（2001年）、ピアノ連弾曲集「やわらかな雨」（2002年）、2台ピアノのための「迷宮のピアノ」（2019年）、ピアノ曲集「記憶の森」全7曲（2019年）など。
合唱曲: 混声、女声、男声の各編成で多数の組曲や曲集を発表しており、特に混声合唱組曲「方舟」「ティオの夜の旅」「地平線のかなたへ」などが知られています。
歌曲: 歌曲「涅槃」、歌曲集「愛する歌」（「ロマンチストの豚」を含む）、歌曲集「晩夏」「秋の瞳」「花のかず」など、多数の歌曲集を発表しています。
* NHK全国学校音楽コンクール課題曲: 「もえる緑をこころに」（1992年度中学校の部）、「めばえ」（1997年度高等学校の部）、「なぎさの地球」（2002年度高等学校の部）、「まいにち『おはつ』」（2006年度小学校の部）など。
その他、マンドリンオーケストラ曲も作曲しています。また、書籍『よくわかる楽典』（ナツメ社）では監修とエッセイを担当しました。公式サイトでは、作品リストなどの情報を確認できます。
20代の頃は主にオーケストラ作品を中心に創作活動を行い、日本音楽コンクール管弦楽作曲部門や日本交響楽振興財団作曲賞などで入選するなど、その才能が早くから認められていました。また、「序奏とアレグロ」で吹奏楽の分野にもデビューを果たしています。
キャリアの転換期となったのは30代です。この頃から合唱作品の創作に重点を置くようになります。これは、声楽家で指揮者の鈴木成夫との出会いが大きな契機となりました。鈴木氏が木下氏の初期の歌曲「涅槃」（1978年）を絶賛したことから、鈴木氏が指揮する合唱団のために新作が委嘱され、これが木下氏の合唱組曲第1作「方舟」（作詩：大岡信）となりました。この作品は「かなりエポック・メイキング」と評され、続く組曲「ティオの夜の旅」などと共に、合唱界に新しい風を吹き込み、「ポスト新実徳英」と目されるほど歓迎されました。
合唱作品で確固たる地位を築いた現在も、木下氏は自身の創作の「本質は器楽にある」と述べています。実際、1990年代半ばまではオーケストラ作品も定期的に発表しており、「大きい編成を書きたい」という強い願望を持っていました。彼女が究極的に追求したのは、合唱と管弦楽を組み合わせた大規模な作品であり、これは「邪宗門秘曲」の管弦楽伴奏版（2001年）、「四万十川」（1999年）、そしてオペラ「不思議の国のアリス」（2003年）といった作品で実現されています。
歌曲の分野にも、若い頃はほとんど関心がなかったそうですが、1990年代半ばからその魅力に目覚め、2000年までに3冊の歌曲集を精力的に出版するなど、このジャンルでも多数の優れた作品を生み出しています。これらの歌曲集には、自身の合唱曲を歌曲用に編曲したものも含まれています。
創作姿勢として、木下氏は一貫してクラシック系の「純音楽作品」の作曲に専念しており、商業音楽への進出には否定的な考えを示しています。これは「ホールで演奏された時に最も輝く曲」を書き続けたいという信念に基づいています。そのため、マスメディアを通して彼女の作品が発表される機会は、NHKでの数作品程度に限られています。
2003年にオペラを発表した後、再び吹奏楽や管弦楽の作曲にも力を入れ始め、現在ではあらゆるジャンルで活躍するオールラウンドな作曲家として知られています。特に、モーツァルト劇場創立20周年記念委嘱作品として初演されたオペラ「不思議の国のアリス」により、三菱UFJ信託音楽賞奨励賞を受賞しました。これまでに5回、毎回異なる編成の作品展を開催しており、2019年の第5回「オーケストラ作品展」は大きな成功を収めました。
木下牧子の代表的な作品は多岐にわたります。
オペラ・音楽劇: オペラ「不思議の国のアリス」（2003/05年）、朗読/独唱、クラリネット、ピアノ（打楽器）のための音楽物語「蜘蛛の糸」（2012年）など。
管弦楽曲: 管弦楽曲「壺天」（1980年）、管弦楽のための「幻想曲」（1982年）、管弦楽のための「AURA」（1987年）、弦楽オーケストラのための「シンフォニエッタ」（1996年）、呼吸する大地〜オーケストラのための（2010/19年）、ピアノ・コンチェルト（2012/19年）、ルクス・エテルナ〜オーケストラのための（2016/19年）、アルトサクソフォン・コンチェルト（2021年）など。
管弦楽伴奏合唱曲: 「四万十川」、「虚無の未来へ」、「邪宗門秘曲」、「鴎」、「たいようオルガン」、「光はここに」など。
吹奏楽曲: 序奏とアレグロ（1982年度全日本吹奏楽コンクール課題曲B）、シンフォニア（1988年）、パルセイション（2006年度全日本吹奏楽コンクール課題曲III）、ゴシック（2006年）、サイバートリップ（2008年）など。
室内楽曲: ふるえる月〜打楽器アンサンブル（2000年）、ねじれていく風景〜クラリネット、ヴァイオリン＆ピアノのための（2004年）、打楽器コンチェルト（2008年）、もうひとつの世界〜ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ＆ピアノのための（2011年）、夜は千の目を持つ〜アルト・サクソフォン＆ピアノのための（2011〜2012年）、時のかけら〜マリンバ＆ピアノのための（2014/17年改訂）、SPARKS〜マリンバ・ソロのための（2015年）、砂の書～マリンバ・オーケストラのための（2017年）など。
ピアノ曲: こどものためのピアノ曲集「不思議の国のアリス」（1993年）、9つのプレリュード（2001年）、ピアノ連弾曲集「やわらかな雨」（2002年）、2台ピアノのための「迷宮のピアノ」（2019年）、ピアノ曲集「記憶の森」全7曲（2019年）など。
合唱曲: 混声、女声、男声の各編成で多数の組曲や曲集を発表しており、特に混声合唱組曲「方舟」「ティオの夜の旅」「地平線のかなたへ」などが知られています。
歌曲: 歌曲「涅槃」、歌曲集「愛する歌」（「ロマンチストの豚」を含む）、歌曲集「晩夏」「秋の瞳」「花のかず」など、多数の歌曲集を発表しています。
* NHK全国学校音楽コンクール課題曲: 「もえる緑をこころに」（1992年度中学校の部）、「めばえ」（1997年度高等学校の部）、「なぎさの地球」（2002年度高等学校の部）、「まいにち『おはつ』」（2006年度小学校の部）など。
その他、マンドリンオーケストラ曲も作曲しています。また、書籍『よくわかる楽典』（ナツメ社）では監修とエッセイを担当しました。公式サイトでは、作品リストなどの情報を確認できます。
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