木内曽益

木内曽益（きうち つねのり）とは

木内曽益は、1896年（明治29年）に福井県で生まれ、1976年（昭和51年）に没した日本の検察官です。数々の重大事件で主任検事を務め、戦後の検察組織においても重要な役割を果たしました。特に、昭和初期の激動期における主要な政治事件に関わったことで知られています。

生い立ちと初期のキャリア

福井県で生まれた木内は、福井県立大野中学校（現在の福井県立大野高等学校）を経て、第四高等学校 (旧制)に進学。1920年（大正9年）7月に東京帝国大学法学部を卒業後、台湾銀行に入行し、東京支店総務部業務第1課に配属されました。しかし、法律家としての道を志し、1921年（大正10年）10月に司法官試補となります。その後、1923年（大正12年）には東京地方裁判所兼区裁判所予備判事、福岡地方裁判所小倉支部予備判事を経て、1924年（大正13年）に千葉地方裁判所検事として検察官のキャリアをスタートさせました。

主要事件での活躍

1927年（昭和2年）には東京地方裁判所検事となり、血盟団事件の主任検事を務めます。この事件は、右翼団体である血盟団が起こしたテロ事件であり、木内がこの事件を「血盟団事件」と命名したことで知られています。その後、1932年（昭和7年）の五・一五事件では民間側の主任検事を務め、1936年（昭和11年）には二・二六事件でも民間側の主任検事を担当しました。これらの事件は、昭和初期の政治情勢を揺るがす重大なものであり、木内は検察官として重要な役割を担いました。

戦後のキャリア

戦後、木内は検察官として要職を歴任します。1946年（昭和21年）には浦和地方裁判所検事正、東京刑事地方裁判所検事正を歴任し、東京刑事地方裁判所検事正時代には、GHQの意向により日本共産党スパイ査問事件で釈放されたものの、懲役刑の執行停止状態となっていた宮本顕治と袴田里見に対して復権証明書を発行しました。1947年（昭和22年）には東京地方検察庁検事正となり、1949年（昭和24年）には最高検察庁次長検事に就任しました。しかし、1951年（昭和26年）に札幌高等検察庁検事長への異動を命じられた際、検察官の身分保障を規定した検察庁法第25条を盾に拒否を表明。この人事を巡る一連の出来事は「木内騒動」と呼ばれ、最終的に辞表を提出し退官しました。

その後

退官後の1966年（昭和41年）には、長年の功績が認められ、勲一等瑞宝章を受章しました。1978年（昭和53年）には、その蔵書が国立国会図書館に寄贈され、「木内曽益関係文書」として432点が所蔵されています。これらの資料には、血盟団事件関係者の獄中手記や検事宛の上申書、五・一五事件、二・二六事件、相沢事件の検察関係資料、国家主義運動関係の資料などが含まれており、当時の歴史を研究する上で貴重な資料となっています。

著作

木内は、検察官としての経験を基に、いくつかの著作も残しています。

『経済警察運用の実際』 (日本警務学会、1938年)
『検察官生活の回顧』 (私家本、1955年、1968年再改訂版)
『雪庵随想』 (私家本、1973年)

関連人物

木内の生涯と関連の深い人物として、以下の人物が挙げられます。

馬場義続
* 大橋武夫 (政治家)

木内曽益は、昭和初期の動乱期において、検察官として重要な役割を果たした人物であり、その生涯は、日本の司法史を語る上で欠かせないものとなっています。

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