木村熊二

木村熊二：教育と信仰に生きた生涯

木村熊二（1845年3月3日 - 1927年2月28日）は、幕末から明治にかけて活躍した日本の牧師であり、教育者です。彼は、日本の天気予報の創始者とされる桜井勉を実兄に持ち、激動の時代の中で、教育と信仰に生涯を捧げました。

生い立ちと青年期

木村熊二は、出石藩の藩儒・桜井石門の次男として京都に生まれました。幼少期に出石、その後江戸へと移り住み、昌平黌で佐藤一斎や安積艮斎に師事しました。一斎の縁戚である田口卯吉らと親交を深め、21歳で田口卯吉の異父姉である田口鐙子と結婚しましたが、当時、熊二は軍事に奔走しており、夫婦として同居する時間は少なかったようです。

幕末には幕府に仕え徒目付となりますが、戊辰戦争では勝海舟の下で活動し、新政府軍に抵抗したため、追及を受けることとなりました。一時、写真師の下岡蓮杖の弟子となり身を隠しましたが、その後、日本脱出を試み、森有礼らと共に渡米しました。

キリスト教との出会いと帰国

アメリカでは、ミシガン州のホープ大学でキリスト教に出会い、1872年に受洗しました。同大学を卒業後、ニューブランズウィック神学校で学び、牧師資格を取得し、1882年に改革派の派遣宣教師として帰国しました。帰国後は、東京・西片に居を構え、私塾を開きました。そこで、巌本善治などの人材を育て、熱心なキリスト教教育者として女子教育に力を注ぎました。

明治女学校の設立

木村熊二は、日本のミッションスクールに批判的であり、妻の鐙子とともに1885年、九段下牛ヶ渕に明治女学校を設立しました。この学校は、近代日本における女子教育の先駆けとされています。しかし、アメリカ改革派教会からの名古屋での布教活動の命令を拒否し、校長に就任したため、資金援助は打ち切られました。

同年、一家は鎌倉に転居し、広大な邸宅は鐙子の弟である田口卯吉が借り受けました。また、日本初の本格的な女性誌とされる『女学雑誌』の発刊にも携わりました。しかし、翌1886年、鐙子がコレラにより急逝するという悲劇に見舞われました。

その後、伊東華子と再婚するも、華子のスキャンダルが原因で女学校の校長職を退くこととなります。さらに、華子が愛人と出奔したため、8年後に離婚しました。明治女学校は、巌本善治が校長を引き継ぎ、1909年に閉校するまで多くの人材を輩出しました。

小諸義塾の創設

1891年、木村は高輪台教会の牧師を辞任し、1892年には長野県南佐久郡野沢村に移住しました。1893年、小諸に私塾として小諸義塾を創設し、青年教育に尽力しました。1899年には旧制中学校として認可を受け、島崎藤村や丸山晩霞といった人物を教師として招きました。

また、木村は小諸で桃や苺の栽培を推奨し、中棚の湧き水が傷の治癒に効果的であることに気づき、中棚鉱泉を発掘しました。その近くには書斎として「水明楼」を移築しました。この水明楼は、島崎藤村の「千曲川のスケッチ」にも登場し、現在も残されています。

木村は、1896年に27歳下の東儀隆子と再婚しました。しかし、地元民に受け入れられなかったことや財政難などにより、小諸義塾は1906年に閉校を余儀なくされました。

晩年と死後

小諸義塾閉校後、木村は長野市に移住し、牧師として活動しました。1917年に東京に戻り、1927年に83歳でその生涯を閉じました。木村の命日には、「蓮峰忌」の名で供養が行われています。

1936年には、小諸義塾時代の教え子たちによって、木村の記念碑が小諸城址懐古園に建設されました。その碑には、島崎藤村が揮毫した「われらの父木村熊二先生と旧小諸義塾の記念に」という言葉が刻まれています。


木村熊二は、激動の時代の中で、教育と信仰に生涯を捧げた人物として、後世に語り継がれています。

もう一度検索