木村知義

木村 知義（きむら ともよし）

1948年1月28日生まれ。現在は「21世紀社会動態研究所」を主宰し、社会動向に関する研究・分析・発信を行っている。かつてはNHKアナウンサーとして活躍し、退職後には多摩大学経営情報学部客員教授（～2019年3月）、東北学院大学教養学部非常勤講師（～2018年3月）を務めるなど、教育分野でも精力的に活動した人物である。

NHKアナウンサーとしての歩み

大阪府立北野高等学校を経て法政大学を卒業後、1970年にNHKに入局した。アナウンサーとしてのキャリアは、まず京都放送局での勤務から始まった。この京都時代に、木村氏は日本の知的・文化的領域で影響力を持つ多くの著名人へのインタビューを手掛けた。思想家の桑原武夫氏、動物生態学者の今西錦司氏、随筆家の岡部伊都子氏、哲学者の梅原猛氏、日本文学研究者の杉本秀太郎氏、中国文学者の竹内実氏、考古学者の森浩一氏、そして狂言師の茂山千作氏など、多岐にわたる分野の識者との対話を通じて、その後のジャーナリストとしての視点や深みを培ったと言われている。

その後、東京に移り、報道分野の第一線で活躍するようになる。激動の昭和史を振り返る企画や、緊迫した事件・災害現場からのリポートを数多く担当した。具体的には、日本海中部地震発生時の現地からの取材、世界の注目を集めたペルー日本大使公邸占拠事件における中継、そして未曽有の被害をもたらした阪神・淡路大震災における被災地からの詳細な報道などが挙げられる。これらの経験は、ジャーナリストとしての使命感と現場対応能力を鍛え上げた。

担当番組と仕事への姿勢

木村氏はテレビ、ラジオ双方で幅広い番組を担当した。テレビ番組では、『NHKニュースワイド』でリポーターを務めたほか、関東甲信越地域向けの『きょうのスポーツとニュース』、『こんばんはにっぽん』、『NHKスペシャル』などに出演。京都局制作の『女性手帳』にも関わった。NHK退職後も、『東北ライフライン情報』といった番組を担当している。

ラジオ番組においても重要な役割を担った。特に、NHKラジオ第一の看板番組である『ラジオあさいちばん』では、1999年4月から2008年3月まで、長年にわたり平日隔週のメインキャスター（アンカー）を務めた。遠田恵子氏らとコンビを組み、毎朝、国内外のニュースや情報を分かりやすく、時には鋭い視点でリスナーに伝えた。また、独自の視点からアジア情勢を深掘りする特集番組の企画、取材、制作や、日本の未来像を探るラジオ特集シリーズ『21世紀日本の自画像』の企画・制作にも精力的に取り組み、2006年5月には『日本の自画像–憲法とこの国のゆくえ』の企画・制作・司会を務めた。これらの番組制作を通じて、ジャーナリストとしての問題意識や構成力を発揮した。

ジャーナリストとしての活動を通して一貫していたのは、「なぜ」という根源的な問いを常に持ち続ける姿勢であった。表面的な事実だけでなく、その背景にある構造や原因を深く掘り下げ、物事を多角的に、そして批判的に捉える視点を重視した。この探求心と分析力は、その後の研究・教育活動にも引き継がれている。

また、個人的な一面として、体力づくりと精神鍛錬のためにボクシングジムに通い、鍛錬を積んでいた時期もあった。強靭な体力と精神力を持って、厳しい取材や多忙な番組制作に臨んでいたことがうかがえる。

NHK退職後の活動と人物関係

NHKを退職後は、教育者としての道を歩んだ。多摩大学経営情報学部では客員教授として2019年3月まで教鞭を執り、次世代を担う学生たちに自身の経験や知識を伝えた。また、東北学院大学教養学部においても非常勤講師を2018年3月まで務め、多様な視点から現代社会について講義を行った。

現在は、自身が主宰する「21世紀社会動態研究所」を中心に活動を展開しており、社会の動向や構造変化に関する研究、分析を行っている。ジャーナリスト、教育者として培った知見を活かし、現代社会が直面する様々な課題について発信を続けている。

木村氏のキャリアにおいて影響を与えた人物や、交流のある人物についても触れておこう。元NHKアナウンサーの佐々木敦氏からは、インタビュー技術やアナウンス論において多くの影響を受けたことを語っている。また、フリーアナウンサーの有働由美子氏は、木村氏の高校およびNHKの後輩にあたり、NHK時代の新人研修では指導する立場でもあった。多摩大学で教鞭を執っていた際には、当時学生であった声優の杉浦那由多氏が木村氏の授業を受講しており、企画立案の面白さと伝えることの難しさを実感したというエピソードが残っている。

同期入局のアナウンサーには、青木健一氏、朝妻基祐氏、浅見忠司氏、生熊雅夫氏、板谷直実氏、井上元氏、大滝重輿氏、小柳実氏、金城紀昭氏、久保慶子氏（旧姓・伊藤）、黒沢典之氏、桑原堯氏、向後雅博氏、古賀成治氏、斉藤正安氏、榊寿之氏、柴田実氏、田沢真氏、田中久雄氏、谷口俊二氏、寺田道雄氏、中谷成子氏（旧姓・尾関）、二宮正博氏、野島正興氏、深草耕太郎氏、藤沢武氏、藤野寿一氏、二見和男氏、増渕路子氏（旧姓・佐藤）、丸山晃氏、三杉栄氏、宮川俊二氏、宮田修氏、室井民雄氏など、多数の名前が挙げられる。

木村知義氏は、ジャーナリストとして、教育者として、そして研究者として、常に社会の動きを鋭く見つめ、多角的な視点から情報を発信し続けている。

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