木津川 (大阪府)

木津川：大阪の歴史を刻む水路

木津川は、大阪市南西部を流れる一級河川で、淀川水系の主要な分流です。その流れは、大阪の都市構造、歴史、産業の発展と深く結びついてきました。流域は北部が住宅地、南部は工業地帯として利用され、多様な顔を持つ地域を潤しています。

地理

木津川は、西区の中北部で土佐堀川から分流し、南へ縦断します。道頓堀川との合流を経て、大正区、浪速区、西成区の境界を形成しつつ南下。その後、南西へと流れを変え、最終的に大阪港へと注ぎます。この流れは、単なる水の流れではなく、大阪の街の骨格を形成する重要な要素です。

歴史

木津川の歴史は、単なる河川の歴史に留まりません。古代から近世にかけて、軍事的な要所としての役割を果たし、豊臣家の軍船停泊所の建設や、木津川浚渫といった事業が行われました。江戸時代には船番所が置かれ、河村瑞賢による難波島開削などの大規模な改修も実施されています。また、泉尾新田への用水路としての役割や、舟囲場、天満屋敷の建設など、様々な歴史的背景を持っています。

明治時代に入ると、木津川は次第に水運の主役を安治川に譲ります。しかし、第一次世界大戦時の造船ブームや、周辺工場の進出に伴い、再び活気を取り戻しました。現在も運河としての重要な役割を担い続けています。

年表

天正4年（1576年）: 第一次木津川口の戦い。毛利水軍が織田信長軍を破り、石山本願寺へ兵糧を輸送。
天正6年（1578年）: 第二次木津川口の戦い。織田方の九鬼水軍が毛利水軍を撃破。
慶長15年（1610年）: 中村勘助が木津川尻に軍船係船所を建設。勘助島（現在の大正区三軒家）と名付けられる。
1614年（慶長19年）: 木津川口の戦い (1614年)。
寛永7年（1630年）: 中村勘助による木津川の浚渫。
元禄12年（1699年）: 河村瑞賢が難波島を開削し、水流を改良。
宝永5年（1708年）: 川口の浚渫と遠見番所を設置。
享保15年（1730年）: 再度川口の浚渫を実施。
天保3年（1832年）: 木津川口に石堤を築き、松を植える（千本松の由来）。
安政3年（1856年）: 江戸幕府が木津川口・安治川口への台場建設を指示。
安政4年（1857年）: 幕府、高松藩に木津川口台場の警備を命令。
文久3年（1863年）: 土佐山内藩が木津川口、美濃苗木藩が木津川船手番所を警備。
明治14年（1881年）: 大阪府が難波島西部を開削し、三軒家に舟囲場を開設。
明治18年（1885年）: 木津川を中心に工場が次々と開業。
大正3年（1914年）: 木津川焼却場開設。
大正4年（1915年）: 大正橋架設。
大正5年（1916年）: 木津川運河開削。
大正8年（1919年）: 造船所が木津川筋に32社も立ち並ぶ。
大正9年（1920年）: 岩崎運河開削。
大正12年（1923年）: 大正運河開削、木津川尻に大阪木津川尻飛行場（後の木津川飛行場）が開設。
昭和4年（1929年）: 船町に木津川飛行場が日本初の公共用空港として開設。
昭和12年（1937年）: 大浪橋架設。
昭和15年（1940年）: 木津川の防潮堤が完成。
昭和45年（1970年）: 大正運河閉鎖、防潮水門完成。
昭和48年（1973年）: 千本松大橋完成。
平成6年（1994年）: 新木津川大橋開通。

水深と幅員

木津川の干潮水深は、過去に大幅な変化を遂げています。昭和5年（1930年）には10.5メートルあったものが、昭和27年（1952年）には3.2メートルまで浅くなりました。これは、河川改修や堆積物の影響によるものです。平均幅員は昭和27年の調査で169メートルとされています。

支流

木津川には、以下の支流があります。

尻無川（分流）
三軒家川
住吉川

渡船

木津川の中・下流域では、両岸を結ぶ公営渡船が市営で運航されています。これらは歩行者や自転車専用で、無料で利用可能です。渡船の運行は、住民の生活を支えると共に、水都大阪の風景を構成する重要な要素となっています。

落合上渡
落合下渡
千本松渡
木津川渡

主な橋梁

木津川には、数多くの橋が架かっています。上流から下流にかけて、以下のような橋梁があります。

昭和橋
木津川橋
木津川大橋
大渉橋
松島橋
伯楽橋
千代崎橋
大正橋
大阪環状線木津川橋梁
大浪橋
木津川橋
千本松大橋
新木津川大橋

流域の行政区

木津川が流れる地域は、以下の行政区にまたがっています。

大阪市西区
大阪市大正区
大阪市浪速区（左岸）
大阪市西成区（左岸）
* 大阪市住之江区（左岸）

文化事業

2009年からは、護岸堤防を活用したウォールペインティングが実施され、地域のアート文化にも貢献しています。これは、おおさかカンヴァス推進事業の一環として行われ、水辺の景観に新たな彩りを加えています。

木津川は、大阪の歴史、産業、そして文化を支える重要な河川です。過去の遺産を継承しつつ、現代においても、地域社会に深く根ざした存在として、その役割を果たし続けています。

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