木綿 (ゆう)

木綿（ゆう）とは

木綿（ゆう）とは、楮（こうぞ）の木の皮を原料とした繊維、およびそれを用いて織られた布のことです。楮の皮を蒸して水に晒すことで得られる白い繊維を使い、布が作られます。古代の日本では、木綿（もめん）が伝わる以前に、麻と並んで様々な植物繊維が利用されていました。楮から作られた繊維は「ゆう」（旧仮名遣いでは「ゆふ」）と呼ばれ、「木綿」と表記されることもありました。この「ゆう」を用いて織られた布は、太[[布]]（たふ）、栲（たえ/たく）、栲布（たくぬの）などと呼ばれました。

木綿（ゆう）の利用

布としての利用

「ゆう」は、楮から作られた繊維を使い織られた布を指します。ただし、太[[布]]には藤蔓から作られた布も含まれます。これらの布は、古代日本の生活において広く利用されていました。

木綿花（ゆうはな）

「ゆう」から作られた造花は、木綿花（ゆうはな）と呼ばれます。

神道における木綿（ゆう）

神道では、木綿（ゆう）は神聖なものとして扱われ、神事に用いられます。具体的には、以下の様な形で使用されます。

幣帛（へいはく）: 神に捧げる贈り物として用いられます。
木綿垂（ゆうしで）: 紙垂の代わりに榊に付けられます。
木綿鬘（ゆうかずら）: 冠に懸けて使用されます。厳重な斎戒の象徴とされていますが、実際には麻が用いられます。神宮式年[[遷宮]]や他の神社の遷座の際に、頭に直接巻かれます。
木綿襷（ゆうだすき）: 袖をかかげるための襷として使用されます。こちらも実際には麻を用い、遷宮・遷座の際に宮司が左右の肩から斜めに両脇にかけ、それ以下の者は左肩から右脇にかけます。

木綿（ゆう）と麻

伊勢神宮の神事では、木綿鬘や木綿襷、大麻（おおぬさ）などに「木綿」とありますが、実際には麻が用いられています。また、玉串や大麻の麻苧も木綿（ゆう）と呼ばれることがあります。これは、古代において麻が神聖なものとして扱われていたことと関連しています。

木綿襷の使用例として、最も古い事例は允恭天皇4年（5世紀）の盟神探湯（くがたち）の際に、参加者が身に着けたという記録があります。

まとめ

木綿（ゆう）は、楮を原料とした布であり、古代から神事にも用いられてきました。現在では麻で代用されることが多いですが、その歴史的意義は重要です。神道における木綿（ゆう）の役割を理解することは、日本の文化や歴史を深く知る上で不可欠です。

参考文献

國學院大學日本文化研究所 編『神道事典』（縮刷）國學院大學日本文化研究所、1999年。
三好和義; 岡野弘彦『伊勢神宮』淡交社〈日本の古社〉、2003年。
* 永原慶二『新・木綿以前のこと』中央公論社〈中公新書〉、1990年。

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