本多嘉一郎

本多嘉一郎：映画人から調布市長へ

本多嘉一郎（ほんだ かいちろう）は、1903年（明治36年）に大分県で生まれ、1980年（昭和55年）に77歳で亡くなった、日本の映画人であり地方政治家です。彼は、調布市の第4代市長として1962年（昭和37年）から1978年（昭和53年）までの4期16年間にわたりその職を務め、調布市の発展に大きく貢献しました。

映画界での活躍

20代の頃、本多は東亜キネマ京都撮影所（等持院撮影所）で撮影技師としてキャリアをスタートさせました。1930年（昭和5年）には、久保義郎監督の無声映画『一度はすべての女に』の撮影を担当するなど、初期の日本映画界で重要な役割を担いました。

1931年、東亜キネマの経営不振から東活映画社に移籍。1932年（昭和7年）には、東京地区に撮影所を新設するための調査担当として東京へ派遣され、多摩川沿いの調布町に撮影所を建設することを決定しました。本多は、「水澄み、時代劇、現代劇に最適なり」と本社に報告し、この地が映画撮影に適していることを強調しました。

東活映画社は後に解散しましたが、本多が尽力して建設された「日本映画多摩川スタジオ」は、その後、日活に買収され「日活多摩川撮影所」となりました。さらに、戦時統合により大映の「大映多摩川撮影所」（現在の角川大映スタジオ）となり、本多はそのまま同地に勤務し続けました。大映時代には、黒澤明監督の『羅生門』や衣笠貞之助監督の『地獄門』など、国際的に評価される名作が次々と生み出されました。

調布市長としての革新市政

本多は、1942年（昭和17年）に調布町議会議員に初当選し、政治家としてのキャリアもスタートさせました。第二次世界大戦後には、日本社会党結成中央委員に就任。1955年（昭和30年）に調布町と神代町が合併し調布市が誕生すると、市制施行後の市長選挙に何度か挑戦し、1962年（昭和37年）に58歳で第6代調布市長に初当選しました。

市長在任中は、高度経済成長期のベッドタウンとして発展する調布市において、様々な革新的な政策を実行しました。特に、競輪事業については、日本社会党の方針を転換し、市の財政のために継続するという決断を下しました。また、1972年（昭和47年）には、調布市の将来像を示す「基本構想」を策定し、議会で満場一致で採択されました。

さらに、1972年（昭和47年）から1974年（昭和49年）にかけては、東京都市長会の会長も務め、首都圏の自治体運営にも貢献しました。1977年（昭和52年）には、調布市グリーンホール・総合福祉センターを竣工させ、市民生活の向上に尽力しました。

1978年（昭和53年）に調布市長を退任し、1980年（昭和55年）に77歳でその生涯を終えました。

その後と「映画のまち調布」

本多の没後、調布市は市内に角川大映スタジオと日活調布撮影所の2つの映画スタジオが存在することから、「映画のまち調布」として地域活性化に取り組んでいます。この取り組みは、本多が映画界に貢献したこと、そして調布市に映画撮影所を誘致した功績を記念するものでもあります。

著書

本多嘉一郎は、『カツドウ屋市長奮戦記 - 東京・調布市に根づく革新市政』を著し、自身の政治活動を記録しました。

本多嘉一郎は、映画人としての経験と政治家としての手腕を活かし、調布市の発展に大きく貢献した人物として、その名は今も語り継がれています。

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