本山駅 (神奈川県)

本山駅（ほんざんえき）

本山駅は、昭和初期に神奈川県横浜市鶴見区豊岡町に存在した、鶴見臨港鐵道（現在のJR鶴見線にあたる）の旅客駅です。正式な駅名は本山停留場（ほんざんていりゅうじょう）と称しました。

歴史

この駅は、曹洞宗の大本山である總持寺への参拝客を主な利用客と想定した門前駅として計画され、1930年（昭和5年）10月28日に鶴見臨港鐵道の停留場として開設されました。当時の路線としては、現在のJR鶴見線の鶴見駅と国道駅の間に位置していました。

しかしながら、その歴史はわずか12年間と非常に短いものでした。太平洋戦争の激化に伴い、戦時下の燃料供給制限に対応するため、鉄道における停車駅の削減が図られることになり、本山駅は休止ではなく廃止の対象となりました。1942年（昭和17年）12月12日、開業から12年あまりで廃止されたのです。鶴見臨港鐵道は翌1943年（昭和18年）に国有化されるため、本山駅は国有化を待たずに姿を消した駅となりました。

駅名の由来

駅名の「本山」は、駅の最寄りに位置する總持寺に由来しています。總持寺は曹洞宗における二つの大本山の一つであり、その「本山」という地位から駅名が採用されました。これは、隣接する国道駅や石油駅がそれぞれ「国道」「日本石油（当時）」といった付近の地理的特徴や施設名から命名されたのと同様の例と言えます。

駅構造と遺構

本山駅は高架上に設けられた駅で、島式ホーム1面2線の構造を有していました。駅の廃止から長い年月が経過していますが、現在もなお当時の駅のプラットホームや高架上へ昇るための階段部分が鉄道遺構として残存しています。これらは、現在のJR鶴見線の鶴見駅から国道駅へ向かう区間の車窓から確認することが可能です。

駅周辺と高架下の利用

駅が機能していた当時は、近くに總持寺や花月園（花月園遊園地、後に花月園競輪場）といった著名な施設があり、これらの参詣客や行楽客で賑わっていました。駅の高架下には、食堂、石材店、生花店、菓子店などが並ぶ商店街が形成されており、多くの利用者で活気にあふれていたと言われています。

駅廃止後も、高架下空間は引き続き活用されました。鶴見臨港鐵道から分離独立した川崎鶴見臨港バスは、この高架下に鶴見営業所を置いていました。1970年に営業所自体が鶴見区駒岡へ移転した後も、高架下の施設は「鶴見営業所分室本山車庫」としてバス関連施設として使用され続けています。この場所の最寄りのバス停留所は「本山前」と名付けられています。

また、当駅跡のすぐ直下には、かつて「開かずの踏切」として知られた総持寺踏切がありましたが、こちらも周辺の整備に伴い2012年に廃止されています。

現在の周辺施設としては、總持寺のほか、鶴見大学、鶴見で最も古い寺院とされる子生山東福寺などがあります。近隣の鉄道駅としては、京急本線の花月総持寺駅（かつての花月園前駅）、さらにかつて京浜電鉄や海岸電気軌道にも総持寺駅が存在しました。

もう一度検索