本田定年

本田 定年（ほんだ さだとし）

本田定年は明治時代の地方行政官、民権運動家、そして書道家として知られています。彼の通称は孫三郎で、また号として退庵と名乗りました。武蔵国多摩郡下谷保村の名主を務めた他、神奈川県第十大区一小区の戸長や北多摩郡役所の書記としても知られています。定年は公務の合間に自由民権運動に関わり、晩年には東京で書法専修義塾を開校し、後進の指導に尽力しました。

生い立ちと学び

定年の幼名は簡蔵であり、彼は幕末の不安定な時代に育ちました。府中宿では近藤勇や日野宿の佐藤彦五郎の道場で天然理心流の剣術を学びます。元治2年（1865年）には父が亡くなり、慶応3年（1867年）には兄も急逝したため、家督を継ぐことになります。しかし、医術を学ぶ時間が限られていたため、彼は伊豆国から武田宗堅を呼び寄せ、彼に医業を任せる一方で無償で医術を学びました。

行政活動

明治5年（1872年）には下谷保村の元名主として壬申戸籍の編纂や地券の発行に尽力しました。その後、1873年には神奈川県第百十番学校を設立し、教育にも深く関わることになります。しかし、地租改正の調査に当たった際には村民の利益を考慮した結果、戸長に不適格とされる告発を受けることにもなりました。この頃の彼は実務に追われ、医業の継続を断念せざるを得ませんでした。

民権運動と出版活動

1879年に戸長を辞職し、その後北多摩郡役所の書記として民権運動に力を入れるようになります。1881年には自治改進党の幹事として活動し、次第に自由党に参加することになります。1883年には「武蔵野叢誌」を発行し、漢詩文を担当しますが、自由党の解党に伴い、短い政治的キャリアに終わりを告げます。

書道の道

1886年には書の集まりである六書会を結成し、1901年には書法専修義塾を開校、独自の教授法で書道を教える道を選びました。彼は展覧会で数々の評価を受け、特に1895年に第4回内国勧業博覧会で褒状を得た「楷書無量寿経屏風」は彼の書道家としての存在を広く知らしめました。

個人的生活と死

彼の晩年は病に苦しむこともありましたが、書道に対する情熱は失われていませんでした。1920年に故郷に帰り、1923年に71歳で世を去りました。定年の業績は書道の分野で今なお称賛されており、彼の作品はいくつかの文化財として保存されています。

著書と遺産

本田定年は『春秋乗』という自らの日記や、他の文人から受けた作品をまとめた「煙霞籍」を残しました。また、彼の書道は今も多くの人に影響を与え続けており、中国の書法に対する理解を深めるきっかけともなっています。彼の遺墨も多くの文化施設で保存されており、その価値が評価されています。

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