杉並区の町名

杉並区の町名について

この項目では、東京都杉並区に存在する、または過去に存在した町名を一覧化し、明治時代初期からの区内の町名の変遷について解説します。

杉並区の前史と行政区画の移り変わり

杉並区は、昭和7年（1932年）10月1日に、それまでの豊多摩郡杉並町、和田堀町、井荻町、高井戸町の区域を統合して成立しました（当時は東京市の一部でした）。以下に、明治時代初期から杉並区が成立するまでの行政区画の変遷を概説します。

現在の杉並区の区域は、かつて武蔵国多摩郡に属し、以下の20の村がありました。

田端村、馬橋村、高円寺村、成宗村、阿佐ヶ谷村、天沼村、和田村、堀之内村、和泉村、永福寺村、上井草村、下井草村、上荻窪村、下荻窪村、上高井戸村、中高井戸村、下高井戸村、大宮前新田、久我山村、松庵村

これらの村は、明治2年から4年（1869年から1871年）までは品川県に属していました。

明治4年7月（1871年8月）に廃藩置県が実施され、同年11月（1872年1月）には、従来の東京府、品川県、小菅県が廃止され、新しい東京府が設置されました。同時に府内は6大区・97小区に分割されました（大区小区制）。

明治22年（1889年）の市制・町村制施行までの間、行政区画は頻繁に変更されました。特に多摩郡の区域は複数の府県に所属し、その変遷は複雑でした。多摩郡の区域は、明治4年11月（1872年1月）にいったん東京府に所属しましたが、明治5年（1872年）5月には神奈川県に所属が変わりました。その後、東部の31村は同年の9月に再び東京府の所属となりました。この31村が現行の中野区および杉並区の区域に相当します。

明治7年（1874年）3月、大区小区の区割りが見直され、11大区・103小区が設置されました。後の杉並区となる区域は、このうちの第8大区第5・6小区に属していました。

その後、郡区町村編制法の施行に伴い、大区小区制は廃止され、明治11年（1878年）11月2日に東京府下に15区6郡（荏原、南豊島、北豊島、東多摩、南足立、南葛飾）が設置されました。このうち、東多摩郡が現行の中野区と杉並区の区域にあたります。同時に成立した北多摩郡、南多摩郡、西多摩郡は、明治26年（1893年）まで神奈川県に属していました。

明治22年（1889年）に市制・町村制が施行され、東京市（15区からなる）が成立し、東京府下の6郡は、既存の町村が整理統合され85町村となりました。85町村のうち、東多摩郡に属していたのは6村で、現在の杉並区の区域に該当するのは、杉並村、和田堀内村、井荻村、高井戸村の4村です。これら4村は、市制町村制施行前に存在した20の村が合併して成立しました。

新4村と旧20村の対応関係は以下の通りです。

杉並村 - 田端村、馬橋村、高円寺村、成宗村、阿佐ヶ谷村、天沼村
和田堀内村 - 和田村、堀之内村、和泉村、永福寺村
井荻村 - 上井草村、下井草村、上荻窪村、下荻窪村
高井戸村 - 上高井戸村、中高井戸村、下高井戸村、大宮前新田、久我山村、松庵村

杉並村は大正13年（1924年）に町制を施行して杉並町となり、和田堀内村、井荻村、高井戸村は大正15年（1926年）に町制を施行し、それぞれ和田堀町、井荻町、高井戸町となりました。

昭和7年（1932年）10月1日、東京市は周辺の5郡（荏原、北豊島、豊多摩、南足立、南葛飾）に属する82町村を編入し、いわゆる大東京市が成立しました。なお、旧6郡のうち、南豊島郡と東多摩郡は明治29年（1896年）に合併して豊多摩郡となっています。編入された82町村は20区に編成され、東京市は既存の15区と合わせて35区から構成されることとなりました。この時、杉並町、和田堀町、井荻町、高井戸町の区域をもって杉並区が新設されました。

昭和18年（1943年）7月1日、東京府と東京市が廃止され、新たに東京都が設置されました。この時、杉並区を含む35区は東京都直轄の区となりました。昭和22年（1947年）3月15日、35区は22区に再編されました（同年8月、板橋区から練馬区が分離し23区）。杉並区の区域に変更はありませんでした。

杉並区では、「○○地域」「旧●●町」のような区分けはほとんど使用されていません。

旧町名

以下は、明治22年（1889年）以前の旧村名、同年の市制町村制施行時点の大字名、昭和7年（1932年）の杉並区成立時の町名の対応表です。

（表は省略）

旧大字名

以下は、杉並区の成立時の大字名と旧村名の対応表です。

（表は省略）

昭和7年（1932年）の杉並区発足時の町名

昭和7年（1932年）の杉並区発足時に成立した町名のうち、以下の3町は成立直後に町名変更が実施され、元下井草町と上荻窪町の2町はこの時廃止されました。

上井草町 - もとは井荻町上井草。昭和8年、一部が井荻1〜3、善福寺町、新町、宿町、三谷町に変更。
元下井草町 - もとは井荻町下井草。昭和8年、矢頭町に改称。
上荻窪町 - もとは井荻町上荻窪。昭和9年、上荻窪1・2、宿町、西荻窪1〜3、神明町、関根町に変更。

現行町名

杉並区では全域において住居表示を実施しています。以下は住居表示実施後の町名と、当該住居表示実施直前の旧町名の一覧です。

（表は省略）

まとめ

杉並区の町名は、歴史的な変遷を経て現在の形になっています。明治初期の村から、大正期の町、そして昭和初期の区へと変化する中で、その区割りや名称は何度も変更されました。現在の町名を理解するためには、その歴史的な背景を理解することが不可欠です。

脚注

（脚注は省略）

参考文献

『角川日本地名大辞典 東京都』、角川書店 、1978
人文社編集・刊行『昭和三十年代東京散歩』（古地図ライブラリー別冊）、2004
人文社編集・刊行『昭和東京散歩』（古地図ライブラリー別冊）、2004
重藤魯『東京町名沿革史』、吉川弘文館、1967

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