杉浦玄任

杉浦玄任（すぎうら げんにん / すぎうら げんとう）

生年は不明ですが、天正3年（1575年）に没したとされる戦国時代の武将、杉浦玄任。彼は、杉浦壱岐守、壱岐法橋とも呼ばれ、官位は壱岐守でした。子に杉浦又五郎がいます。越前大野城主、亥山城主として知られています。

生涯

杉浦玄任は、本願寺の坊官であり、加賀一向一揆の重要な指導者の一人でした。永禄10年（1567年）には、下間頼総を大将とする加賀一向一揆の越前侵攻に参加し、朝倉義景と戦いました。この戦いの後、足利義昭の仲裁によって朝倉氏と本願寺の間で和睦が成立し、その際、玄任の嫡子である又五郎が一揆方の人質として越前に預けられました。

元亀元年（1570年）には、織田信長が顕如に突きつけた石山本願寺明け渡し要求に対し、徹底抗戦を主張した主戦派の一人として、『石山軍記』にその名が記されています。

元亀2年（1571年）4月28日、甲斐の武田勝頼から、加賀・越中の一向一揆に上杉謙信の越中進出を阻止するよう要請されると、元亀3年（1572年）5月、加賀一向一揆を率いて越中へ進軍。椎名康胤や越中一向一揆と合流し、連合軍の総大将として上杉軍と戦い、各地で勝利を収めました。しかし、同年8月に上杉謙信が本隊を率いて戦場に到着すると、戦況は次第に不利となり、金沢御坊へ援軍を要請しました。9月初旬の尻垂坂の戦いでは大敗を喫し、富山城を守り切れずに撤退を余儀なくされました。

天正元年（1573年）8月には、加賀へ侵攻してきた上杉謙信に対し、加賀・越中国境付近の朝日山城で迎撃。鉄砲の一斉射撃などによって上杉軍に大きな損害を与え、これを撃退しました。しかし、天正2年（1574年）2月、越前で内乱状態となった一揆軍の大将として金津に着陣。越前一向一揆は総勢2万余に膨れ上がりました。玄任は一揆軍を率いて織田家臣の溝江長逸や富樫泰俊らを討ち、越前全域を門徒が支配すると、本願寺から大野郡司に任命され、亥山城（別称：土橋城）を居城としました。さらに同年4月には土橋信鏡を滅ぼしました。

天正3年（1575年）、織田信長の部将である金森長近、原政茂が美濃の各峠口から越前に侵攻してくると、大野郡司となっていた玄任は、一揆軍を率いて鉢伏山城に入り、迎え撃ちました。しかし、織田信長の圧倒的な軍勢の前に、裏切りや逃亡者が相次ぎ、大敗を喫しました。この戦いで玄任は戦死したとも、加賀へ帰国後、責任を問われ金沢御坊で処刑されたとも伝えられています。

本願清水

玄任が亥山城主となった際、織田軍との戦いに備えて城を堀で囲むため、門徒を動員して城近くの湧水池を掘り下げ、水を引きました。その結果、豊富な水量を誇る湧水となり、「本願清水（ほんがんしょうず）」と呼ばれるようになりました（『大野市史』）。一向一揆壊滅後、新たに大野の支配者となった金森長近によって治水工事が行われ、生活用水などにも広く利用されるようになり、大野の住民の生活を潤しました。現在、本願清水は淡水型イトヨの生息地として、国の天然記念物に指定されており、水源地周辺は「本願清水イトヨの里」として整備されています。

参考文献

『越州軍記』
『北陸七国志』
『朝倉義景』吉川弘文館
『遠山文書』
福井新聞2010年5月15日（土曜日）金津溝江田代・乱世をくぐり抜けた男たち④、妙隆寺住職　児玉常聖（あわら市）
笠原一男・井上鋭夫『日本思想大系 17 蓮如・一向一揆』（岩波書店、1972年）

関連作品

赤神諒『仁王の本願』（KADOKAWA、2021年12月22日）（玄任を主人公とした小説）

関連項目

下間頼照
七里頼周
御清水

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