李嗣業

李嗣業（り しぎょう）

唐代の武将、李嗣業は、その卓越した武勇と戦略眼で、唐朝を支えた人物として知られています。生年は不詳ですが、乾元2年（759年）に戦死しました。字は嗣業といい、その生涯は戦場での活躍に彩られています。

若き日の活躍

李嗣業は、京兆郡高陵の出身で、身長は7尺（約2メートル10センチ）と非常に高く、並外れた膂力の持ち主でした。開元年間に昭武校尉に任じられ、安西軍に配属されると、その武勇は瞬く間に知れ渡りました。常に先鋒を務め、陌刀（はくとう）という大型の刀を自在に操り、敵を圧倒しました。安西節度使の夫蒙霊詧（ふもうれいさつ）は、李嗣業の能力を高く評価し、戦の際には必ず同行させたと言われています。

西域での活躍

天宝6載（747年）、高仙芝（こうせんし）による小勃律（こぼつりつ）討伐に従軍し、左陌刀将として連雲堡の攻略に大きく貢献しました。この功績により、右威衛将軍に任命されました。その後も、タシュケント（石国）、西突厥の討伐で先鋒を務め、捕虜たちからは「神通大将」と畏怖されました。天宝9載（750年）、高仙芝に従ってタラス河畔の戦いに参加しますが、唐軍は大敗を喫しました。この時、高仙芝が再戦を試みようとしたのを李嗣業は諫め、撤退を勧めました。段秀実（だんしゅうじつ）の進言に従って兵を集結させ、見事な撤退戦を成功させたのです。この功績により、右金吾大将軍に昇進し、カシュガルに駐屯しました。カシュガルでは、白龍の祠を建て、枯れた井戸から水を出させたという逸話も残っています。

安史の乱での活躍

天宝12載（753年）、驃騎大将軍に任じられ、都に召還されると玄宗から酒を賜り、舞を披露しました。安史の乱が勃発すると、李嗣業は粛宗のもとに駆けつけ、郭子儀（かくしぎ）、僕固懐恩（ぼくこかいおん）らと共に戦いました。常に先鋒として敵陣を突破し、四鎮・伊西・北庭行軍兵馬使に任じられました。至徳2載（757年）、敵の手に落ちていた長安への進軍では、前軍を指揮し、李帰仁（りきじん）の騎兵による反撃を受け、唐軍の陣が乱れましたが、李嗣業は自ら最前線に出て奮戦し、数十人の敵兵を討ち取り、陣を立て直しました。その後、2千の歩兵で李帰仁の軍を押し返し、ウイグル軍との挟撃にも成功して長安を奪還しました。洛陽奪回の戦いでも、李嗣業は大きな功績を上げました。

壮絶な最期

乾元2年（759年）正月、李嗣業は魚朝恩（ぎょちょうおん）、郭子儀、李光弼（りこうひつ）らと共に相州を包囲しましたが、激戦の中で流れ矢に当たり、傷口が開いて数升の血を流して戦死しました。李嗣業は、私財を蓄えることなく、賞賜も全て軍に分配していたため、私財は何も残っていませんでした。その清廉潔白な人柄と、勇猛果敢な戦いぶりは、多くの人々に感銘を与えました。

伝記資料

李嗣業の伝記は、『旧唐書』巻一百九 列伝第五十九「李嗣業伝」と、『新唐書』巻百三十八 列伝第六十三「李嗣業伝」に詳しい記録が残されています。

李嗣業は、その卓越した武勇と清廉な人柄で、唐代の歴史に名を刻んだ英雄と言えるでしょう。

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