李宝臣

李宝臣（り ほうしん）

李宝臣（718年 - 781年）は、中国唐代の武将であり、節度使です。字（あざな）は為輔（いほ）。現在の河北省北部にあたる范陽郡の奚族の出身です。彼は、安史の乱を機に台頭した地方勢力の一つ、河朔三鎮の一角である成徳軍（旧恒陽軍）を率いました。

生涯

李宝臣は、元は張忠志という名で、范陽の軍人である張鎖高の養子でした。彼は、安禄山の部将として仕え、後に安禄山の仮子となり、安忠志と改名しました。安史の乱では、当初は唐軍と敵対しましたが、安禄山の死後、同じく安禄山の部将であった李懐仙や田承嗣とともに唐に投降しました。

投降後、李宝臣は恒陽節度使に任じられ、その際に朝廷から李宝臣の名を賜り、改名しました。彼は、恒州、趙州、深州、定州、易州、冀州を支配し、後に滄州もその支配下に置きました。

李宝臣の正式な肩書きは、「成徳軍節度恒定等州観察使恒州刺史李宝臣」であり、これは彼が節度使としての軍事権だけでなく、観察使としての民政権、そして恒州刺史としての行政権も兼ね備えていたことを示しています。つまり、彼は、地方において強大な権限を持つ存在であったと言えるでしょう。

李宝臣は、盧龍軍節度使に任じられた李懐仙、魏博節度使に任じられた田承嗣と共に、それぞれが地方勢力として割拠し、河朔三鎮を形成しました。この三鎮は、唐朝の中央政府の統制が及ばない、半独立的な勢力として存在し続けました。李宝臣は、この三鎮の中で最も遅く、建中2年（781年）に没しました。

評価

李宝臣は、安史の乱という激動の時代に、その才覚を発揮し、地方勢力として台頭しました。彼は、軍事的な能力だけでなく、民政にも長けており、支配地域の安定に貢献しました。しかし、彼のような地方勢力の割拠は、唐朝の中央集権体制を弱体化させる要因にもなりました。

脚注

伝記史料
『旧唐書』巻142 列伝第九十二 李宝臣
『新唐書』巻211 列伝第一百三十六 李宝臣
参考文献
* 『中国の歴史　第4巻隋唐帝国』布目潮渢・栗原益男著、講談社、1974年

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