李懐信

李懐信（り かいしん）は、明代に活躍した軍人であり、生没年は明らかになっていません。彼の本貫は大同府です。

生涯

李懐信は、代々蔭官の恩恵を受け、都指揮僉事（としきしせんじ）という役職に就きました。これは、軍の指揮官を補佐する役割で、彼は山西都司（さんせいとし）を管掌しました。彼は職務に清廉に取り組み、その功績から何度も推薦を受けています。万暦年間には、延綏中路参将（えんすいじゅうろさんしょう）という役職に転じ、さらに定辺副総兵（ていへんふくそうへい）へと昇進しました。

当時の明朝北辺は、ボショクト・ジノン、火落赤（かろせき）、鉄雷（てつらい）、擺言太（はいげんたい）といった異民族による侵攻が頻発していました。李懐信は、これらの侵攻に対して果敢に立ち向かい、たびたび敵を撃破しました。この時期には、杜松（としょう）、王威（おうい）、張承廕（ちょうしょういん）、官秉忠（かんへいちゅう）といった将軍たちと共に、明の西北辺境を守り抜きました。異民族の侵入は激しかったものの、彼の指揮下にある兵士たちの士気は高く、防衛線を支え続けました。

万暦43年（1615年）、李懐信は甘粛総兵官（かんしゅくそうへいかん）に抜擢され、その功績を称えて、延安府の人々によって生祠（せいし）が建てられました。これは、生きている人物を祀る祠であり、彼がいかに地域住民に尊敬されていたかを物語っています。同じ頃、松山部（しょうざんぶ）が侵入し、蘆溝墩（ろこうとん）の各所を略奪すると、李懐信は直ちに応戦し、これを打ち破りました。この戦いでは、300人以上の敵兵を斬首し、多数の馬や武器を鹵獲する大戦果を挙げました。その後、松山部が三道に分かれて鎮番（ちんばん）の諸堡を侵犯してきた際も、李懐信は兵を分けて迎え撃ち、敵が退却する際には追撃をかけ、さらに190あまりの首級を挙げました。甘粛は北に松山部、南に青海部という二つの異民族勢力に挟まれた防御の難しい土地でしたが、李懐信は度重なる侵入を撃退し、彼の威名は河西一帯にまで轟きました。

万暦47年（1619年）には、遼東においてチャハル部や後金の勢力が拡大したことを受け、李懐信は援勦総兵官（えんしょうそうへいかん）として遼東の救援に派遣されました。当時、熊廷弼（ゆうていひつ）が経略（けいりゃく）として派遣されており、李懐信は柴国柱（さいこくちゅう）、賀世賢（がせいけん）と共に4万の兵を率いて瀋陽を守備しました。チャハル部の煖兎（だんとう）や炒花（しょうか）が侵入を試みた際には、李懐信は熊廷弼の命を受け、首山（しゅざん）に駐屯しました。しかし、天啓元年（1621年）に後金が遼陽に侵攻すると、李懐信は侯世禄（こうせろく）、蔡国柱（さいこくちゅう）、姜弼（きょうひつ）、董仲葵（とうちゅうき）らと共に5万の兵を率いて遼陽城の東南5里に駐屯したものの、後金の左翼4旗（さよくしき）に敗北を喫してしまいました。天啓2年（1622年）には大同に駐屯しましたが、天啓3年（1623年）に罷免されました。その後、辺境での軍功が認められ、左都督（さとうとく）に昇進したものの、その後の消息は明らかではなく、長らくの時を経て、自宅で亡くなりました。

脚注

この記述は、『明史』巻239 列伝第127に記載されている李懐信の記録に基づいています。

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