村上 (市原市)

千葉県市原市の大字、村上

村上（むらかみ）は、千葉県市原市五井地区に位置する大字です。郵便番号は290-0031。

概要

市原市北西部の五井地区にあり、かつての村上村の範囲がそのまま大字となっています。地域北部には館山自動車道が東西に走り、市原インターチェンジが設置されています。このインターチェンジ周辺は五井駅東口土地区画整理事業の対象区域であり、物流施設などの誘致が予定されています。

地理

養老川下流右岸の屈曲部に位置し、地域の中央部から東部、および西部にかけては自然堤防となっています。かつて養老川が流れていた場所は、両自然堤防の間にあたります。養老川の対岸、西側には廿五里新田地区があり、村上地域に三方を囲まれるように入り込んでいます。

河川

養老川

隣接する町丁字

北は玉前、五井、平田、飯沼、東は惣社、東南は諏訪、西広、南は小折、柳原、玉前（飛び地）、南西は町田と隣接しています。

歴史

地名の由来

地名の由来は、「高くなった所」を意味する「盛上（もりかみ）」が転訛したとされています。

前近代

村上小学校の敷地を含む地域中央部の微高地は、上総国府の推定地の一つであり、「村上遺跡群」として発掘調査が行われています。

『飯香岡八幡宮由緒本記』には、1180年に源頼朝が同社に寄進した神領の一つとして「市原郡市原庄」の「村上村」が登場しますが、この資料の成立時期は不明確で、1180年の時点で「村上村」が存在したかは断定できません。

戦国期の村上城

「村上」という地名が史料上で確認できるのは戦国時代です。中世には、養老川沿いを「鎌倉街道」という幹線道路が通り、村上と分目の間で養老川を渡っていたと考えられています。交通の要衝であったこの地には、村上城と呼ばれる城があったとされ、「堀ノ内」や「門前」などの小字名が残っています。諏訪神社の社伝によると、同社はもともと村上村の鎮守でしたが、1521年に領主の村上周防守義清が信濃国から上下諏訪神社を勧請したとされています。また、『上総国町村誌』には、大永年間（1521年 - 1528年）に村上大蔵大輔義芳が居城としていたとの記述があります。

この地域には、在地領主として村上氏が存在していたことは確実視されています。1560年の「北条家朱印状写」には、村上民部大輔が8か郷の不入権を認められ、椎津城の普請役を命じられています。この8か郷は、泉之郷、嶋之郷、町田郷、津比地郷、引田、麻井郷、梶路郷、風戸郷で、泉之郷を除き養老川対岸に位置しています。村上民部大輔と村上城の関係は不明ですが、位置関係から村上を本拠地とする一族と考えられます。

1590年には、豊臣秀吉によって軍勢による狼藉や放火を禁止する禁制が出され、その対象の村の一つとして「村上」の名が記されています。また、慶長末年には観音寺が建立されています。

江戸時代

江戸時代には、領主権が分割され、旗本領や大名領、幕府直轄領として領主が交替しました。『元禄郷帳』などでは、村高は609石余り。『旧高旧領取調帳』によれば、幕府領のほか、旗本曽根氏、仙石氏、中野氏の相給となっていました。

江戸時代には、五井村との結びつきが強く、灌漑用水の共同利用が行われていました。

幕末期

1868年の戊辰戦争時には、観音寺に旧幕府軍100人が立て籠もり、新政府軍と戦いましたが敗走しました。この際、観音寺は新政府軍によって放火されました。『千葉県市原郡誌』によれば、5月7日に彰義隊の敗兵約20人が観音寺に立て籠もったとあり、観音寺の焼失は兵火によるものと記されています。村人たちは一時彰義隊に同調して竹槍や蓆旗を持って村境まで行進しましたが、新政府軍の砲弾が飛来すると逃走しました。旧幕府軍側では、鈴木仁三郎、下山鉄次郎らの戦死者の名が伝えられており、鈴木は観音寺墓地に、下山は惣社の国分寺墓地に葬られました。

近代

1873年に千葉県が発足するとこれに所属しました。1874年には、村上村と平田村を学区とする村上小学校が開設され、1876年に村上村の永昌寺に移転しました。1889年の町村制施行により、五井村が発足し、村上村はその大字「村上」となりました。1910年には村上青年団が発足し、1927年には小湊鉄道線上総村上駅が開業しました。

年表

1889年（明治22年）4月1日 - 五井村の大字「村上」となる。
1891年（明治24年）5月20日 - 五井村が町制を施行し、五井町の大字となる。
1927年（昭和2年） - 小湊鐵道小湊鉄道線の上総村上駅が開業。
1959年（昭和33年）1月28日 - 五井町立村上小学校が閉校。
1959年（昭和33年）4月1日 - 五井町立国府小学校が開校。
1963年（昭和38年）5月1日 - 五井町などが合併して市原市となり、市原市の大字となる。
2023年（令和5年）3月18日 - 五井駅東口土地区画整理協議会が発足。

世帯数と人口

2023年（令和5年）4月1日現在

世帯数: データなし
人口: データなし

推移

1793年（寛政5年） - 家数99（『上総国村高帳』）
1886年（明治19年） - 戸数105、人口612（『上総国町村誌』）
1891年（明治24年） - 戸数116、人口648

通学区域

小学校: 市立国府小学校
中学校: 市立五井中学校
高等学校: 市原市内県立高校

施設

千葉県教育振興財団市原作業所
観音寺
永昌寺
白幡神社
東日本高速道路株式会社市原管理事務所

交通

鉄道

小湊鐵道小湊鉄道線 - 上総村上駅

バス

字内を通過するバス路線はなし

道路

館山自動車道（市原インターチェンジ）
国道297号市原バイパス
千葉県道21号五井本納線
千葉県道140号五井山倉線
千葉県道141号五井町田線

脚注

注釈

出典

参考文献

小沢治郎左衛門『上総国町村誌第一編』1889年。NDLJP:763698。
千葉県市原郡教育会『千葉県市原郡誌』千葉県市原郡、1916年。NDLJP:951002。
市原市埋蔵文化財センター編『村上城跡』市原市教育委員会、1986年。
辻井義輝「千葉県市原市における漢文石碑・資料の翻刻（三）─柏原黒須家、今富千葉家、請西藩士政田謙蔵の碑―」『東洋学研究』第59号、2022年。