廿五里

千葉県市原市の大字、廿五里（ついへいじ）

廿五里（ついへいじ）は、千葉県市原市五井地区に位置する大字です。市原市の北西部に位置し、養老川の下流域に広がっています。この地域は、養老川の両岸にまたがっており、川が北東から南西へと流れる特徴的な地形をしています。廿五里橋が両岸を結び、地域内の交通を支えています。

地理

廿五里は、養老川沿いの低地であるため、過去には度々水害に見舞われてきました。特に、南東に位置する町田地区とともに、洪水による被害が頻発しました。廿五里村は、水害の度に集落を移転せざるを得ず、甚だしい場合には、一度の災害で二度も三度も移転を余儀なくされたと言われています。このため、「往古は漂流常無し」と語り継がれるほど、その土地の歴史は安定しませんでした。

1870年（明治3年）の洪水によって、養老川の流路は現在のような形になりました。旧河道は砂で埋められ、「川間」と呼ばれる場所となりました。明治時代には、灌漑を目的とした廿五里堰が建設されました。当時は、養老川下流域に六つの堰が存在し、周辺の農業用水として利用されていました。しかし、昭和中期に県営の廿五里堰が建設されたことで、旧堰はその役目を終えました。

廿五里の集落は、養老川の左岸側に位置しています。この地域には、養老川の旧河道である上前川や今津川が流れ、特に今津川が地域の南西端を形成しています。域内には、「廿五里」「廿五里新田」「下川原」「伏木」の四つの集落があります。旧東海村の中心集落であった廿五里には、村役場や小学校、中学校が置かれていました。現在では、小学校のみが現存しています。また、地域内には、「廿五里」「廿五里新田」「下川原」の三つの町会が組織されています。

養老川の右岸側は、「廿五里新田」と呼ばれる地区で、ほぼ全域を村上地区に囲まれています。県道139号の「廿五里」交差点は、この廿五里新田地区に位置しています。

河川

養老川
今津川
上前川

隣接する町丁字

北：村上
東：村上
南東：町田
南西：海保
西：柏原
北西：野毛

産業

廿五里は、農業が盛んな地域であり、特に稲作や果樹園が多く見られます。千葉県の特産品である梨は、市原市産の「市原梨」として多く生産されています。また、市原市農業協同組合（JA市原市）の東海営農センターが置かれ、梨の共同選果場としても機能しています。

歴史

地名「廿五里」の由来

廿五里（ついへいじ）は、その難読さから各種メディアで繰り返し取り上げられる地名です。行政上の正式表記は「廿五里」ですが、「二十五里」と表記されることもあります。小湊鐵道のバス停留所の名称は「二十五里」です。地元では、古くは「露乾地（つゆひじ）」と記されていたと伝えられています。廿五里という表記については、以下のような伝承があります。

宇佐八幡宮の社伝: 鎌倉公がこの神社を崇敬し、毎年幣帛を捧げていた。神社が鎌倉から25里の距離にあったため、村名になったという説。
東泉寺の寺伝: 東泉寺の刺繍仏が霊異を現したため、源頼朝が月ごとに焼香の使者を派遣したが、その距離が25里であったために村名になったという説。

しかし、『千葉県市原郡誌』では、これらの説は里程計算の結果から信憑性に欠けるとされています。また、「廿五里」という地名は他の地域にも存在することから、この地名が鎌倉との距離とは別の理由で採用された可能性も指摘されています。

沿革

前近代

戦国時代には、「津比地郷」という地名が養老川下流左岸に見られ、これが現在の廿五里に比定されています。1560年（永禄3年）には、北条氏が村上民部大輔の要望により、「津比地郷」を含む8つの郷を不入としました。江戸時代には、領主関係が複雑化し、旗本知行地や幕府領として頻繁に領主が交代しました。姉崎二十五郷の中では、海保村五郷組合に属していました。また、養老川に面した場所には渡船場があり、用水としても利用されましたが、近隣の村々との間で水論が頻発しました。洪水被害も度々発生し、特に1797年（寛政9年）の洪水は甚大でした。

近代

明治初年から町村制施行まで
1867年（明治元年）7月、廿五里村は菊間藩領となる。
1871年（明治4年）の廃藩置県により菊間県、後に木更津県所属となる。
1873年（明治6年）に千葉県所属となる。
1873年（明治6年）に廿五里小学校が開校。
1878年（明治11年）には、廿五里・野毛・飯沼の3村で連合戸長役場を設置。
1870年（明治3年）には大規模な洪水が発生し、水田の収穫が皆無となり、家屋の浸水も数日に及んだ。
1883年（明治16年）、山越永太郎が中心となり、廿五里堰（板羽目堰）が造成され、周辺8か村の水田を灌漑した。
町村制施行以後
1889年（明治22年）4月、廿五里村・野毛村・町田村・海保村・島野村・飯沼村が合併し、東海村が編成され、廿五里は東海村の大字となる。東海村役場が廿五里に置かれた。
1889年（明治22年）、廿五里小学校は東海尋常小学校となり、1892年（明治25年）の小学校令改正に伴い、尋常小学校と高等小学校が併設された。
1896年（明治29年）、東海尋常小学校が移転。
1897年（明治30年）、高等小学校が併設され、東海尋常高等小学校となる。

現代

第二次世界大戦後の学制改革により、東海村立東海小学校の敷地に東海村立東海中学校が設立されました。中学校は1962年（昭和37年）に海上地区に移転しました。1954年（昭和29年）に東海村は五井町の一部となり、1962年（昭和37年）には県営廿五里堰が完成し、養老川左岸の広範囲な灌漑が可能になりました。1963年（昭和38年）に市原市が発足し、廿五里も市原市の大字となりました。1972年（昭和47年）には廿五里橋が架設されました。

年表

1797年（寛政9年）: 大規模な洪水被害が発生。
1867年（明治元年）7月: 菊間藩領となる。
1870年（明治3年）: 大規模な洪水被害が発生。
1871年（明治4年）: 菊間県所属、後に木更津県所属となる。
1873年（明治6年）: 廿五里小学校が開校。
1883年（明治16年）: 廿五里堰（板羽目堰）が完成。
1889年（明治22年）:
4月: 町村制施行により、旧廿五里村が東海村の大字となる。
廿五里小学校が東海尋常小学校となる。
1896年（明治29年）: 東海尋常小学校が移転。
1897年（明治30年）: 東海尋常小学校が東海尋常高等小学校に改称。
1925年（大正14年）: 東海尋常小学校〈2代目〉と東海尋常高等小学校〈初代〉が統合して東海尋常小学校〈3代目〉が開校。
1941年（昭和16年）: 東海尋常高等小学校が東海国民学校に改称。
1947年（昭和22年）4月1日:
東海国民学校が東海村立東海小学校に改称。
東海村立東海中学校が開校。
1954年（昭和29年）: 町村合併により五井町の大字となる。
1962年（昭和37年）: 県営廿五里堰が完成。
1963年（昭和38年）5月1日: 町村合併により発足した市原市の大字となる。

災害記録

（詳細な記録は省略）

世帯数と人口

(2022年（令和4年）4月1日時点の世帯数と人口)

（詳細な情報は省略）

通学区域

（市立小学校、市立中学校、県立高等学校の通学区域）

（詳細な情報は省略）

施設

公共

市原市立東海小学校
市原警察署廿五里駐在所
廿五里新田町会集会所
下川原自治会館

神社仏閣

恵光院（真言宗豊山派）
東泉寺（真言宗豊山派）
若宮八幡神社
宇佐八幡神社

交通

鉄道

最寄駅：五井駅

バス

字内の停留所：「二十五里」「東海公民館前」「下河原」
通過する一般路線：詳細省略

道路

地域の北東端は国道297号
館山自動車道（館山道）市原インターチェンジ
千葉県道139号茂原五井線：廿五里橋で養老川を越える
館山道：県道に沿って走る
地域南部には「フルーツ通り」の愛称がある市原市道が東西に走る

東日本高速道路館山自動車道
国道297号
千葉県道139号茂原五井線
フルーツ通り（市原市道）

市原市外の「廿五里」について

「廿五里（二十五里）」と記して「ついへいじ」「つうへいじ」などと読む地名は、市原市以外にも各地に存在します。例えば、現在の千葉市若葉区みつわ台付近にも「二十五里」と記して「つうへいじ」と読む地名がありました。この地名の由来については、千葉常胤が鎌倉の弁ヶ谷から25里離れたこの地に弁財天を勧請したこと、また、千葉氏の重臣であった通平寺氏がこの地に城を築いて住んだことが混ざり合って「二十五里」と記し、「つうへいじ」と読むようになったとされています。

考古学者の鈴木文雄氏によれば、「二十五里」と記して「つうへいじ」などと読む地名は、市原市や千葉市の他にも、千葉県夷隅郡大原町（現在のいすみ市）、埼玉県北埼玉郡松伏町などにも存在し、茨城県猿島郡三和町（現在の古河市）には二十五里寺（つうへいじ）があるとのことです。

脚注

（注釈と出典は省略）

参考文献

小沢治郎左衛門『上総国町村誌 第一編』1889年
千葉県市原郡教育会『千葉県市原郡誌』千葉県市原郡、1916年
鈴木文雄「廿五里地名考」『研究連絡誌』7・8合併、千葉県文化財センター、1984年
鎗田功『旧市原郡東海村の今と昔』市原ふるれんネット（ふるさと市原をつなぐ連絡会）、2021年
市原市埋蔵文化財センター 編『村上城跡』市原市教育委員会、1986年

関連項目

* 関東地方の難読地名一覧

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