村上光昭

村上 光昭（むらかみ みつあき、後に神光 光昭＝しんこう みつあき）は、1943年12月1日に北海道檜山郡上ノ国町で生まれ、2018年5月22日に逝去した人物です。大相撲力士として井筒部屋に所属しましたが、高砂一門に移動する前の時津風一門の流れを汲む部屋でした。現役時代は、改名後の「神光」よりも本名の「村上」として広く知られていました。身長178cm、体重97kgという体格で、右四つからの寄りを最も得意手としていました。最高位は1966年5月場所の東幕下13枚目です。力士としては決して大成したとは言えませんが、引退後は実業家として成功を収めました。

彼のキャリアは、中央大学相撲部での活躍から始まりました。大学時代から並外れた個性の持ち主として知られ、強引な一面も持ち合わせていました。たとえば、授業に向かおうとする後輩を強引に映画館へ連れて行くといったエピソードが語り継がれています。無類の映画好きが高じ、彼には「映画太郎」あるいは短縮して「画太郎」というニックネームがつけられていました。ちなみに、彼の誕生日である12月1日は、奇しくも日本映画連合会が定めた「映画の日」と同じです。学業においても優秀で、卒業研究以外の必要単位をすべて取得していたため、卒業まで1年近く期間が残っていた1965年5月場所に、大学に在学したまま初土俵を踏みました。

当初は時津風部屋への入門を希望していましたが、当時の時津風親方（元横綱・双葉山）から「大卒をこれ以上受け入れるのは難しい」との言葉を受け、同じ時津風一門の井筒部屋を紹介され、そこに入門する運びとなりました。

しかし、入門後の力士としての道は平坦ではありませんでした。軽量ながら正面からぶつかる四つ相撲を主戦場としたことが、かえってアダとなり、初土俵から最初の1年間は6場所のうち3場所で負け越しを経験し、番付も幕下下位からなかなか上がれませんでした。相撲界に入ってからも、彼の型破りな性格は健在でした。1966年3月場所前には、自ら髷を切って部屋を飛び出すという騒動を起こし、連れ戻された腹いせか、その場所の場所入りにアロハシャツ姿で現れるという奇行を見せました。この場所では、厳しい叱責の影響もあってか、1勝6敗と大きく負け越しています。こうした常軌を逸した行動は、彼が初土俵を踏む直前の1965年3月場所限りで廃業した若羽黒（番付上のみの出場）に似ていると言われ、「ミニ若羽黒」と形容されることもありました。また、相撲教習所での授業中、「相撲は見世物、ショーだ」と発言した教授に対し、「私は人生をかけて勝負しているのであり、見世物をしに来たのではない」と真っ向から反論したエピソードもあります。この一件で、協会から「君は教習所で学ぶことはないだろう」と言われ、口頭試問のみで卒業を認められたという異例の対応を受けています。力士としての目立った活躍は、三段目への陥落が目前に迫っていた1966年5月場所に幕下優勝を果たしたことくらいでした。その後、関取に昇進することなく、三段目へ陥落した末、初土俵からちょうど3年半が経過した1968年9月場所を最後に現役を引退しました。

実は、村上は最初から相撲で大成することだけを目指していたわけではありませんでした。かねてより実業家への転身を志しており、角界への入門は人脈を築き、自己の宣伝を行うための手段であったと後に語っています。1968年7月場所後には、部屋の関係者に起業の相談を持ちかけ、徐々に引退の準備を進めようとしていました。しかし、当時の師匠であった井筒親方（元東前頭2枚目・鶴ヶ嶺道芳）は体調がすぐれず、村上の相談に全く応じませんでした。また、かつて彼の付き人を務めた君ヶ濱親方（元関脇・鶴ヶ嶺昭男）も、後継者問題に直面しており、余裕がない状況でした。君ヶ濱親方からは「あなたなら一人で何でもできるはずだ」と突き放すような態度を取られてしまい、周囲からの協力が得られないことを悟った村上は、当初の予定を早め、1968年9月場所前に引退届を提出しました。

角界を去ってわずか3ヶ月余りの1969年1月には、千葉県市川市に解体業を営む「株式会社 村上工業」を設立しました。現役時代から「隠れた秀才」と評された明晰な頭脳を経営に活かし、事業を着実に成長させました。一般の建設業者だけでなく、千葉県や市川市といった自治体、さらには母校である中央大学をはじめとする学校法人とも主要な取引を行い、京浜地域の都市開発事業にも大きく貢献しました。

晩年になっても角界との繋がりは保ち続け、中央大学相撲部のOB会長を務めるなど、母校の後輩である一山本を大相撲の世界に勧誘するなど、相撲界への貢献も行っていました。

力士としては短期間で引退しましたが、その後の実業家としての華々しい成功は、彼の持つ非凡な才能と行動力を物語っています。

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