村田保

村田保：近代日本の法整備と水産振興に貢献した人物

村田保（むらた たもつ）は、天保13年（1843年）に生まれ、大正14年（1925年）に没した、明治時代の法制官僚、政治家です。幼名は虎之助といいました。彼は、元老院議官、貴族院勅選議員、水産伝習所二代目所長、大日本水産会副総裁、大日本塩業協会初代会長、大日本缶詰業連合会初代会長など、数々の要職を歴任し、日本の近代化に大きく貢献しました。

生い立ちと初期の活動

村田保は、肥前唐津藩の家臣の家に生まれました。幼少の頃から学問に励み、若山壮吉や林兵部少輔に師事しました。また、弓術、剣道、槍術、馬術など、武芸にも秀でていました。若い頃には、乗馬の練習中に事故を起こし、一時乗馬を断念したこともありましたが、後に西洋の曲馬術に対抗して練習に励み、自邸で披露するほどの腕前となりました。

新政府での法整備

明治維新後、村田保は昌平学校に出仕し、新政府の法整備に携わることになります。新律取調を命じられ、明清律を参照しながら新律綱領を編纂しました。しかし、箕作麟祥の翻訳したフランス民法典に触れたことで、西洋法制の優位性を認識し、イギリスへ留学して刑法を学びました。帰国後は、木戸孝允や伊藤博文らに新律改正の必要性を訴え、刑法改正に従事しました。また、旧幕時代に投獄された人々の罪状決定を促し、拷問の廃止にも尽力しました。

法典論争と民法典の延期

1880年代には、ドイツに留学し、行政裁判法、憲法、自治、刑法などを学びました。帰国後、法律取調委員会に所属し、民法、商法、民事訴訟法などの制定に携わりました。しかし、条約改正を急ぐ政府が民法典、商法典を公布すると、その内容が日本社会に適合しないとして強く反対し、法案の延期を画策しました。この法典論争において、村田保は、山縣有朋首相に働きかけ、民法、商法の施行延期を取り付けました。また、貴族院議員として、民法及商法施行条例施行延期議案を提出し、可決させました。

水産振興への貢献

村田保は、水産振興にも力を注ぎました。ドイツ留学中に、万国水産博覧会の話を聞き、日本の漁獲量がその豊富な水産資源に比して少ない点を指摘されたことがきっかけとなり、大日本水産会の設立を山田顕義に諮りました。1882年には大日本水産会が設立され、村田保は名誉会員、漁業法律学芸委員に就任しました。漁業法案の提出や水産伝習所長への就任、遠洋漁業奨励法の公布など、様々な政策を通じて日本の水産業の発展に貢献しました。日清戦争の際には、缶詰を製造して軍部に送ったというエピソードも残っています。

塩業・缶詰業への貢献

村田保は、塩業や缶詰業の発展にも貢献しました。大日本塩業協会の会長として、塩業調査所設置を建議し、可決させました。また、全国缶詰業連合会の会長として、国産品の原料戻し税導入を訴え、練乳原料砂糖戻税法を発布させました。

シーメンス事件弾劾演説と晩年

1914年、シーメンス事件が起こると、村田保は激しく憤慨し、山本権兵衛首相に辞職を強く求めました。壇上での激しい非難は、議院法違反との注意を受けるほどでした。その後、議員を辞職し、鎌倉に隠棲しました。1925年、腎炎のため死去しました。

官歴と著作

村田保は、数々の要職を歴任し、日本の法整備と水産振興に貢献しました。また、『刑法註釈』『治罪法註釈』『民法註釈』などの著作や翻訳書も多く残しており、法学研究にも貢献しました。

村田保は、日本の近代化に多大な貢献をした人物として、後世に語り継がれています。

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