杜洪

杜洪（と こう）

杜洪は、五[[胡十六国時代]]の後趙に仕えた人物で、生年は不明ですが352年に没しました。京兆郡の出身で、後趙の混乱に乗じて自立し、短期間ながらも独自の勢力を築き上げました。

生涯

杜洪は元々、京兆郡の豪族であったとされています。後趙に仕え、長安の守将であった車騎将軍・王朗の軍中司馬を務めていました。350年、後趙内部で権力争いが激化すると、王朗は長安を離れて洛陽へ向かいます。この機に乗じて、杜洪は長安を占拠し、東晋の征北将軍・雍州刺史を自称しました。彼は張琚を司馬に任じ、関中の民衆（胡漢問わず）を傘下に収めました。

しかし、杜洪の支配は長くは続きませんでした。枋頭に割拠していた氐族の酋長・苻健が関中攻略を目論み、杜洪を油断させるために石祗に従属する姿勢を見せつつ、着々と兵力を蓄えていました。そして、満を持して西征を開始し、潼関と軹関へそれぞれ兵を派遣、自らも大軍を率いて後詰めにつきました。

杜洪は苻健の動きを侮り、張先の軍を差し向けますが、大敗を喫してしまいます。関中の兵力を総動員して迎撃しようとする杜洪に対し、弟の杜郁は降伏を勧めますが、聞き入れられませんでした。杜郁は自らの軍を率いて苻健に降伏し、さらに杜洪が守備を任せていた将兵たちも苻健に寝返るなど、杜洪は孤立を深めます。

苻健軍の侵攻により、長安は陥落寸前となり、杜洪は張琚と共に司竹へ逃走しました。その後も東晋に援軍を要請するなど抵抗を試みましたが、最終的には張琚に殺害され、その勢力は終焉を迎えました。張琚は杜洪の死後、秦王を自称しています。

史書における記述の相違

一部史書（『十六国春秋』、『晋書』司馬勲伝）では、『晋書』苻健載記や『資治通鑑』とは異なる記述が見られます。これらの史書によれば、杜洪はかねてより張琚を軽んじており、司馬勲に対し「張琚を殺さねば関中は危うい」と語ったとされています。司馬勲はこれを受けて張琚を殺害しますが、張琚の弟である張先が反乱を起こし、混乱に乗じた杜洪が秦王を自称したとされています。しかし、苻健の侵攻により敗北し、殺害されたとされています。この記述は、『晋書』苻健載記や『資治通鑑』における張琚が秦王を自称したという記述と大きく異なります。

このように、杜洪の生涯は史料によって異なった側面が描かれており、当時の混乱した政治情勢を反映していると言えるでしょう。

参考文献

『晋書』巻112
『資治通鑑』巻098 - 巻099

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