張琚

張琚（ちょう きょ）

張琚は、五胡十六国時代の動乱期を生きた人物で、秦王を自称して短期間ながら自立を試みました。彼の生涯は、後趙の混乱に乗じて勢力を拡大する中で、苻健によって終止符が打たれます。

生涯

馮翊郡出身で、勇敢さと義侠心で知られていたと伝えられています。350年、後趙の将軍・王朗に仕えていた杜洪が長安を占拠し、東晋の征北将軍を自称すると、張琚はこれに呼応して司馬に任じられました。

氐族の酋長である苻健が関中攻略のために挙兵すると、張琚の弟である張先が迎撃に向かいましたが大敗。苻健軍の侵攻により各地が降伏する中、杜洪は長安を固守しました。その後も張先は苻菁の軍に敗れ捕らえられ、三輔の郡県は苻健の傘下に入ります。

苻健が長安を攻撃すると、張琚は杜洪と共に司竹へ逃走。苻健が長安に入城すると、秦州・雍州の民は苻健に寝返りました。351年、張琚らは東晋の梁州刺史・司馬勲に苻健討伐を要請。司馬勲はこれに応じて兵を送りますが、苻健に敗れて撤退しました。

352年、司馬勲が漢中へ退くと、張琚らは宜秋に駐屯します。杜洪はかねてより張琚を軽んじていたため、張琚は杜洪を殺害し、秦王を自称して建昌と改元、百官を設置しました。しかし、苻健が自ら歩騎2万を率いて宜秋に侵攻すると、張琚は敗北し、殺害されました。

史書における記述の相違

『十六国春秋』や『晋書司馬勲伝』には、『晋書苻健載記』や『資治通鑑』とは異なる記述が見られます。

これらの史書によれば、杜洪が張琚を軽んじており、司馬勲に「張琚を殺さねば関中は奪われる」と讒言したため、司馬勲が張琚を騙して殺害したとされています。張琚の弟・張先は池陽に逃れて兵を集め司馬勲を攻撃しましたが、杜洪はこの混乱に乗じて秦王を自称したとされています。そして、352年に苻健が杜洪を討伐したとされています。

このように、『晋書苻健載記』や『資治通鑑』では秦王を自称するのは張琚であるとされている点に大きな相違があります。

まとめ

張琚は、後趙の混乱に乗じて自立を試みたものの、苻健によって短期間で滅ぼされた人物です。史書によって記述に相違が見られるものの、彼の行動は当時の混乱した社会情勢を反映していると言えるでしょう。

参考文献

『晋書』巻112
『資治通鑑』巻098 - 巻099

もう一度検索