東京臨海高速鉄道71-000形電車

東京臨海高速鉄道71-000形電車は、東京臨海高速鉄道が運行するりんかい線向けに新たに開発された通勤形車両です。約30年にわたりりんかい線の輸送を担ってきた70-000形電車の後継車両として、2025年度下期からの営業運転開始を予定しており、2027年度上期中には全8編成80両が投入される計画です。製造は総合車両製作所（J-TREC）が手掛けています。

車両の特徴

車体構造と外観

車体には、軽量かつ高剛性なオールステンレス車体である総合車両製作所の「Sustina（サスティナ）」ブランドが採用されています。側面は凹凸がなく滑らかな形状で、従来の70-000形と比較して車体幅が150mm拡大されており、これにより混雑時の車内空間の圧迫感が和らげられています。前面デザインは、70-000形の丸みを帯びた親しみやすい形状を継承しつつ、上部のひさし形状が横方向への広がりを感じさせるデザインとなっています。安全性向上のため、前面には衝撃吸収材が設置され、車両構体の剛性も高められています。

外観のカラーリングは、70-000形を踏襲しながらも、「優しい微笑み」をイメージした新たなアレンジが加えられています。側面のラインカラーは、ホームドアが設置されている環境を考慮し、車両の腰部から上部にかけて配されています。エメラルドブルーのグラデーションは、沿線に広がる東京湾ウォーターフロントの水辺空間を表現しています。

快適性とバリアフリーを追求した車内

車内空間は、白を基調とし、灰色や紺色でまとめられることで、沿線の洗練された都市景観をイメージしています。妻面の化粧板には木目柄が用いられるなど、70-000形の面影も残されています。一般座席は、灰色と青色のブロック柄を採用し、都会的な雰囲気を演出。優先席はピンク色を基調とすることで、落ち着いた印象を与えています。

着席時の快適性を高めるため、一人あたりの座席幅が従来の車両より10mm拡大されました。座席間の大型袖仕切りには透明なガラスが使用されており、空間の開放感を保ちつつ、プライバシーや安定感を確保しています。セキュリティ面では、全車両に防犯カメラが設置されるほか、客室内に通話式の非常通報装置が1両あたり4台配置され、万一の事態への対応力が強化されています。

バリアフリーへの配慮も進んでおり、床面高さを50mm下げることでホームとの段差を低減。すべての車両に車いすやベビーカーでの利用を考慮したフリースペースが設けられ、利便性が向上しています。また、網棚やつり革の高さも低く設定され、小柄な方でも利用しやすくなっています。聴覚に障がいのある方や外国人旅行者にも分かりやすいよう、開いているドアの位置を音声で知らせる誘導鈴も設置されます。

車内の照明には、影ができにくく、柔らかい光を放つものが採用され、心地よい空間を提供します。さらに、各ドア上部には2画面の液晶ディスプレイが設置され、乗客への情報提供が充実しています。

主要機器と空調システム

走行機器構成は、JR東日本のE233系電車に準拠しており、これは相鉄12000系電車などでも見られる信頼性の高いシステムです。列車情報管理装置や主要機器の二重化が図られており、これにより単一の故障が発生した場合でも、システム全体の機能が停止することを極力回避し、安定した運行を支えます。

空調装置は、現行の70-000形に比べて能力が約20%向上しています。これに加え、カビや花粉、菌、ニオイなどの抑制に効果がある機器も搭載されており、車内の空気環境が快適に保たれます。

導入と運用

最初の編成であるZ11編成は、2024年11月20日に製造元の工場から東京総合車両センターへ向けて甲種輸送されました。この際、最後尾車両の運転台にはりんかい線のイメージキャラクター「りんかる」のぬいぐるみが飾られ、「はじめましてりんかい線新型車両です」というメッセージカードが掲示され、新型車両の登場を沿線内外に知らせました。

本形式は10両編成で運行され、各車両の車号は百の位が編成番号、十の位と一の位が号車番号と一致する付番規則となっています。2025年度下期からの営業運転開始後、順次既存車両の置き換えが進められ、りんかい線の新たな主力車両として活躍する予定です。

東京臨海高速鉄道71-000形電車