東京都交通局9000形電車

東京都交通局9000形電車は、2007年 5月27日に営業運転を開始した都電荒川線の路面電車車両です。この車両は、都電荒川線の活性化策の一環として、また、かつて存在したイベント用車両の復活を望む都民の声に応えるために導入されました。約2億円の予算を投じ、レトロな外観と最新技術を融合させた車両として登場しました。

概要

2001年に6000形が引退して以来、都電にはイベント用車両が存在していませんでした。都民からの要望の高まりを受け、東京都交通局は8500形以来となる新型車両を導入することを決定しました。9000形は、7500形の老朽化に伴う置き換えも目的の一つとしています。

車体

外観

9000形は、全鋼鉄製の2軸ボギー電動客車です。車体寸法は8500形とほぼ同じですが、レトロ車両というコンセプトに基づき、明治から昭和初期の東京市電をモチーフにした装飾が施されています。外観上の大きな特徴としては、二重構造に見える屋根、丸型の前照灯、丸窓や上部に丸みを持たせた側窓などが挙げられます。車体上部はクリーム色、下部はエンジ（9001号車）またはブルー（9002号車）のツートンカラーで、金色の模様がアクセントになっています。前面には東京都交通局の局紋が装飾され、LED式の行先表示器とサボ受けも設置されています。9001号車には、宝くじ協会の助成を受けて製造されたことを示す「宝くじ号」の表記があります。

集電装置にはシングルアームパンタグラフを採用し、空調装置は二重屋根部分に隠された屋根上集中式です。冷房能力は7000形や7500形と同等です。当初のデザイン画ではトロリーポールや網式の救助器が描かれていましたが、実際の製造ではパンタグラフや現在の基準に合った救助器に変更されました。

内装

内装は木目調で統一され、フローリングの床が特徴です。照明は間接式を採用し、天井を白色にすることで明るさを確保しています。丸窓や真鍮製の手すり、緑色の模様入り座席などがレトロな雰囲気を醸し出しています。座席数は8500形よりも1席少ない22席ですが、ロングシートを9人掛けにしたことで、全体の定員は64名となっています。また、3人ごとの腰掛け仕切りを兼ねた縦型の握り棒を新設しました。

乗務員室との仕切り部には、LED式表示器に加え、イベントでの使用を想定した20インチ液晶表示器が設置されました。この表示器は、車両のPRやイベント時に活用されています。さらに、カラオケ機器や照明設備も備えられています。

バリアフリーにも配慮されており、車椅子スペースの増設、吊り手の高さの変更、優先席部の色分け、握り棒の設置、車椅子固定用ベルトの装備などが行われています。また、床面高さを低くし、出入口部に傾斜を設けることで、ホームとの段差を縮小しています。

車内の広告はレトロ調のものが掲示され、路線図も9000形オリジナルの黄色いラインが施されたものとなっています。

運転台周り

運転台は、前面窓が3枚になったことに伴い、視界確保のために従来よりも中央寄りに設置されました。ハンドルは、主幹制御器とブレーキ設定器からなる2ハンドル方式です。また、都電初のデッドマン装置が搭載され、運転士の異常時に自動的にブレーキがかかるようになっています。

主要機器

制御装置はVVVFインバータ制御で、素子にはIGBTを採用しています。冷却方式にはファンを使用しています。ブレーキシステムは電気指令式電磁直通空気ブレーキ方式で、応荷重機能、回生ブレーキ、発電ブレーキを備えています。回生ブレーキと発電ブレーキを併用することで、安定したブレーキ力を確保しています。保安ブレーキは二重化され、ブレーキランプも設置されています。速度リミッターも追加され、40km/h以上の加速を防ぎます。

戸閉装置は空気式で、入口には片開き式のY6形、出口には両開き式のY4形を採用しています。主電動機の1時間定格出力は8500形と同じ60kWで、自己通風方式のかご形三相誘導電動機を使用しています。駆動装置との結合にはWN継手が用いられ、1両あたり2台の電動機が搭載されています。車輪は防音一体圧延車輪で、台車は8500形とほぼ同じですが、床面高さを下げるために軸ばねを調整しています。

営業運転開始まで

9001号車は2007年3月にアルナ車両で製造され、同月24日に荒川電車営業所に搬入されました。試運転中は「試運転中急停止します」の貼り紙が掲示されていました。同年5月26日には三ノ輪橋停留場で記念式典が開催され、翌27日から営業運転を開始しました。また、導入を記念して、7000形3両にラッピングが施されました。

9000形は、イベント用車両としてだけでなく、定期運用や貸切運用にも使用されています。導入に合わせて、三ノ輪橋や庚申塚など一部の停留場が改修されました。2009年 1月31日からは9002号車も営業運転を開始し、2両体制となりました。

運用

当初は毎週土曜日に定期運行されていましたが、現在は他の車両と共通で運用されています。「鉄道の日」やクリスマスシーズンには、記念プレートや装飾が施されて運行されました。レトロ調車両であることから、広告ラッピングは他の車両とは異なり、実施されていません。

外部リンク

都電荒川線にレトロ車両を導入します。（東京都交通局・インターネットアーカイブ）
都電荒川線にレトロ車両デビュー！平成19年5月27日（日）運行開始（東京都交通局・インターネットアーカイブ）
昨年度に続き、都電荒川線にレトロ車両を導入します。（東京都交通局・インターネットアーカイブ）
東京都交通局都電荒川線9000形車両用主回路システム (PDF) - 東洋電機技報第116号（機器に関する説明・インターネットアーカイブ）
編集長敬白アーカイブ「都電9000形が完成」（インターネットアーカイブ）
編集長敬白アーカイブ「都電荒川線9002号営業運転開始」（インターネットアーカイブ）

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