東方三博士の礼拝 (ステファノ・ダ・ヴェローナ)

『東方三博士の礼拝』：豪華絢爛な国際ゴシック様式の傑作

ステファノ・ダ・ヴェローナが1434年にテンペラで描いた『東方三博士の礼拝』は、国際ゴシック様式を代表する絵画として知られています。この作品は、ミラノのブレラ美術館に所蔵されており、聖書の「マタイによる福音書」に記された東方三博士の礼拝の場面を描いたものです。

宗教的要素を超越した豪華な表現

この絵画の特徴は、宗教的な主題を扱いながらも、その絢爛豪華な趣味が際立っている点です。細部にわたるミニアチュールのような描写は、衣装や装飾品を華やかに彩り、見る者を魅了します。また、背景にはラクダや黒人などの異国趣味も取り入れられ、作品に独特の雰囲気を加えています。金箔張り漆喰などの技法も、この凝った図像表現に見事に適合しています。

作品の歴史

作品の中央には「Stefanus」という署名と制作年が記されています。この署名については、研究者の間で議論がありますが、いずれにしてもステファノがヴェローナに戻った1425年から亡くなる1438年の間に制作されたものと考えられています。19世紀にはオットリーニ家が所有していましたが、その後、ドメニコ・ビアソーリに譲渡されました。ビアソーリは1818年にこの作品をステファノ・フィオレンティーノの作としてブレラ美術館に売却しました。

構成と詳細な描写

この作品は、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノが1432年に制作した『東方三博士の礼拝』や、両者に共通の手本となった作品に影響を受けているとされています。画面は大きく2つの部分に分かれており、下半分は幼子イエス・キリストと聖母マリアを礼拝する東方三博士と随行者の行列が描かれています。上半分には、羊飼いたちの集団、彗星に導かれてやってくる東方三博士の到着、犬とラクダを連れた行列の最後尾が描かれています。また、中景には聖書の記述にはない狩猟の場面も描かれています。

前景では、牡牛とロバのいる小屋の中で、幼子イエスを膝に抱く聖母が描かれています。3人のマギはそれぞれ異なる姿で表現されており、老年のマギは跪いて幼子に金の品物を贈っています。中年のマギは金箔を施した箱を手に持ち、青年のマギは後ろから様子を見守っています。イエスの後ろにいる光輪のある二人は、聖ヨセフと聖アンナです。マギたちの従者には、モンゴル人からムーア人まで様々な人種が描かれており、多様な文化が取り入れられています。

装飾と象徴

豪華な馬具や行列の人々の空想的な帽子は、ステファノの友人であったピサネロの作品や、1431年のフィレンツェ公会議で見られたビザンチン帝国宮廷の衣装に触発されたと考えられています。小屋の屋根にいるクジャクは、初期キリスト教でキリストの「復活」と永遠性を象徴しています。スミレはキリストの「謙遜」、赤いカーネーションは「情熱」を象徴しています。

『東方三博士の礼拝』は、ステファノ・ダ・ヴェローナの卓越した技術と豊かな創造性が結実した、国際ゴシック様式の傑作として、今日も多くの人々を魅了し続けています。

参考文献

大島力監修『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年
『ブレラ　絵画館全作品ガイド』、SCALA、1977年
岡田温司監修『「聖書」と「神話」の象徴図鑑』、ナツメ社、2011年
Zuffi, Stefano (2004). Il Quattrocento. Milan: Electa

外部リンク

* ブレラ美術館公式サイト、ステファノ・ダ・ヴェローナ『東方三博士の礼拝』 (英語)

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