ピサネロ

ピサネロ（Pisanello, 1395年頃 - 1455年頃）は、15世紀に活躍したイタリアの画家であり、国際ゴシック様式を代表する巨匠の一人として知られています。彼は絵画だけでなく、記念メダルの制作においても重要な役割を果たしました。本名はアントニオ・ディ・プッチョ・ピサーノ（Antonio di Puccio Pisano）またはアントニオ・ディ・プッチョ・ダ・チェレート（Antonio di Puccio da Cereto）といい、ヴィットーレ・ピサーノ（Vittore Pisano）という名前で呼ばれることもありますが、これは美術史家ジョルジョ・ヴァザーリによる誤伝です。

ピサネロは、大規模なフレスコ画、繊細な肖像画、小型の板絵など、多様な形式の作品を制作し、その才能を発揮しました。また、数多くの優れた素描も残しており、15世紀前半の肖像入り記念メダルの最も重要な作家としても知られています。彼は、ヴェネツィアの総督、ローマ教皇、そしてヴェローナ、フェラーラ、マントヴァ、ミラノ、リミニの各宮廷、ナポリ王など、当時の有力者たちからの依頼を受け、特にマントヴァのゴンザーガ家やフェラーラのエステ家からは非常に重用されました。ピサネロは、その生前から、同時代の詩人や人文主義者たち（グアリーノ・ダ・ヴェローナなど）によって高く評価され、チマブーエ（ゴシック絵画の巨匠）や、フェイディアス、プラクシテレス（ともに古代ギリシャの彫刻家）と比較されるほどでした。

彼の作品は、かつては他の画家（ピエロ・デラ・フランチェスカ、アルブレヒト・デューラー、レオナルド・ダ・ヴィンチなど）の作品と誤認されることがありましたが、今日では彼の真作の多くが特定されています。しかし、残念ながら、彼の作品の多くは失われており、現在では素描と記念メダルが主に現存しています。

生涯

ピサネロの生涯については、不明な点が多く残されています。彼の生年は1380年から1395年の間、没年は1450年から1455年の間（おそらく1455年7月14日から10月8日の間）としか分かっていません。彼はピサで生まれましたが、少年期はヴェローナ領内のサン・ヴィジリオ・スル・ラーゴで過ごしました。彼の初期の画風はヴェローナ派の伝統に根ざしており、ヴェローナの画家（おそらくはステファノ・ダ・ヴェローナ）に師事したと考えられています。

1415年から1420年まで、ピサネロはヴェネツィアとローマで、当時著名な画家ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノの助手として働きました。彼は師から洗練された画風と、細部まで緻密に描き込む技術を学び、高級品や美しい織物への関心も受け継ぎました。これらの要素は、後の彼の作品に反映されています。彼らが共同で制作したヴェネツィアのドゥカーレ宮殿のフレスコ画は、残念ながら失われてしまいました。ローマのサン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂やマントヴァ、パヴィアの宮殿のフレスコも同様に失われています。

現存する作品の中で最も古いものの一つである『鶉の聖母』（ヴェローナ、カステルヴェッキオ美術館蔵）には、ラテン語風にアントニウス・ピサヌスと署名されており、1420年頃の作品とされています。この作品は、ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノとステファノ・ダ・ヴェローナの作風が混ざり合っており、このことからピサネロがステファノ・ダ・ヴェローナにも師事していたことがうかがえます。

ヴァザーリは、ピサネロがアンドレア・デル・カスターニョ（フィレンツェ大聖堂にあるニッコロ・ダ・トレンティーノ騎馬像の作者）の工房でも働いたことがあると述べています。また、パオロ・ウッチェロ（多くの馬が登場する『サン・ロマーノの戦い』の作者）とも親交があり、ピサネロが馬の素描を好んだのは、ウッチェロの影響であるとも言われています。しかし、ピサネロの生涯には不明な部分が多いため、ヴァザーリのこれらの記述の信憑性には疑問が残ります。

マントヴァ、ヴェローナ、ローマでの活動

1422年、ピサネロはゴンザーガ家の統治するマントヴァに移り、1440年代まで同家のために仕事をしました。1424年にはヴェローナに再び滞在し、同年にパヴィアで狩猟、釣り、馬上槍試合の場面を描いたフレスコ画を制作したとされていますが、これらは今日では失われています。1424年から1426年の間には、マントヴァのゴンザーガ家に戻り、彼の代表作の一つであるフレスコ画『受胎告知』（ヴェローナ、サン・フェルモ・マッジョーレ聖堂）を描きました。

師ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノが1427年にローマで亡くなった際、サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂のフレスコ画の仕事は未完成でした。ピサネロはこれらのフレスコを1431年から1432年にかけて完成させましたが、17世紀にフランチェスコ・ボッロミーニが大聖堂を修復した際に失われてしまいました。ただし、ベルリン美術館の版画素描コレクションには、ボッロミーニがこれらのフレスコを写した淡い色のスケッチが残されています。ローマ滞在中、ピサネロはルネサンスの古典的様式にますます影響を受けました。

画家として名声を得たピサネロは、他のイタリアの都市にも赴き、多くの宮廷に紹介されました。フィレンツェに滞在した時期には、『ルクセンブルクのシギスムントの肖像』（ウィーン、美術史美術館蔵）と『男の肖像』（ジェノヴァ、パラッツォ・ロッソ蔵）という2つの重要な肖像画を制作しました。

1433年から1438年の間には、再びヴェローナに滞在し、フレスコ画『聖ゲオルギウスと王女』（ヴェローナ、サンタナスタジア聖堂ペッレグリーニ礼拝堂）を制作しました。この作品は、19世紀末に壁の雨漏りによって大きく損傷を受けており、修復が必要です。ピサネロは、この作品を制作するために多くの素描を残しており、その多くがルーヴル美術館に収蔵されています。

この時期の作品である『聖エウスタキウスの幻視』（ロンドン、ナショナル・ギャラリー）は、その完璧な技巧から、長らくアルブレヒト・デューラーの作品とされていました。この板絵は、動物をミニアチュールのように繊細に、真横向きや固定されたポーズで描いています。

素描とメダル製作

ピサネロの素描は、15世紀においては非常に高値で取引されており、当時のエレガントな服装の指標とされていました。彼の素描は、単なる完成画のための習作ではなく、それ自体が独立した芸術作品として価値を持っていました。彼はいくつかの素描集を編集し、それらには優雅な衣装や、自然主義的な技法で描かれた動植物が詳細に描かれていました。

1435年以降、ピサネロは肖像とメダル制作にますます関心を深め、フェラーラ公レオネッロ・デステに引き会わされました。『公女の肖像』はこの時期の作品で、多くの蝶とコロンバイン（キンポウゲ科の草）を背景に、横顔を見せる女性が描かれています。彼女の周囲を舞う蝶は、死の象徴とされています。モデルが誰であるかは特定されておらず、マルゲリータ・ゴンサーガ・デステ、ジネヴラ・デステ、またはチェチリア・ゴンザーガであると考えられています。

1438年、東ローマ帝国皇帝ヨハネス8世パレオロゴスがフィレンツェ公会議に参加した際に、ピサネロは皇帝を記念するメダルを制作しました。また、皇帝と従者たちの肖像の素描もいくつか制作しており、これはピサネロがエステ家邸宅のためのフレスコ画または板絵の制作依頼を受けていたことを示唆しています。

ピサネロは、記念メダル、美術メダルの創始者となり、生前はメダル作家として最もよく知られていました。彼のメダルは後世に模倣され、ピサネロの様式から離れるにつれて、メダル芸術は衰退に向かいました。ピサネロ以前には、メダルは通常の貨幣のように鋳造されていましたが、彼はブロンズの浮き彫りのようにメダルを鋳造し、画家と鋳型製造者の技術を明確にしました。また、彼は自分の手掛けたメダルに「Opus Pisani pictoris」（画家ピサーノの作品）というサインを入れ、メダルの肖像と絵画の肖像が同等の価値を持つと考えました。メダルの裏面には寓意的な画像が描かれており、例えばチェチリア・ゴンザーガのメダルには、彼女の高貴な人格を表す一角獣が描かれています。

ミラノ、ナポリでの活動

1438年、ミラノの統治者フィリッポ・マリーア・ヴィスコンティとヴェネツィア共和国の間で戦役が発生した際、ピサネロはマントヴァのジャンフランチェスコ・ゴンザーガのもとにいました。彼らはヴェネツィア共和国の支配下にあったヴェローナを攻略しようと計画したため、ヴェネツィア共和国政府はピサネロを反逆者と見なし、重罪を宣告しようとしましたが、有力な友人のとりなしで事なきを得ました。

1440年から1441年にかけてミラノに滞在した後、1441年にフェラーラに戻り、『レオネッロ・デステの肖像』（ベルガモ、アカデミア・カッラーラ蔵）を制作しました。『聖母子と聖アントニウスと聖ゲオルギウス』もこの時期の作品であると考えられています。マントヴァのパラッツォ・ドゥカーレにある印象的なフレスコ画『騎馬戦闘図』は1447年以降の作品です。

1448年12月以降の晩年は、ナポリで過ごしました。彼はアラゴン王の統治するナポリで著名人として遇され、詩人ポルチェリオは彼を称えるオードを作りました。その後、彼は5-6年生きたとされていますが、それ以降の記録は途絶えています。

彼の現存する作品は主にヴェローナとマントヴァにあり、ロンドンのナショナル・ギャラリーには2点の作品（『聖エウスタキウスの幻視』、『聖母子と聖アントニウスと聖ゲオルギウス』）が所蔵されています。素描の多くはミラノのアンブロジアーナ図書館とパリのルーヴル美術館にあります。

彼は同時代の画家たちに大きな影響を与えましたが、独自の画派を形成することはありませんでした。彼の才能は短期間で開花し、人文主義的、古典的なルネサンス文化の台頭とともに、死後急速に忘れられていきました。しかし、彼は国際ゴシック様式の最後の、そして最も重要な画家と見なされるとともに、ルネサンス絵画の先駆者の一人としても評価されています。彼の様式は時代を先取りしており、描く風景は写実的で、制作したメダルは時代を超えた芸術的価値を持っています。ただし、『聖ゲオルギウスと王女』は、彼の作品の中でも最も古風な画風を示す作品の一つです。

代表作

素描とメダルを除いた絵画作品の真作は、現在では10点ほどしか残っていません。

『鶉の聖母』（1420年頃）ヴェローナ、カステルヴェッキオ美術館
『受胎告知』（1424 - 1426年）ヴェローナ、サン・フェルモ・マッジョーレ聖堂
『聖ゲオルギウスと王女』（1436 - 1438年）ヴェローナ、サンタナスタジア聖堂
『聖エウスタキウスの幻視』（1436 - 1438年）ロンドン、ナショナル・ギャラリー
『公女の肖像』（1438年頃）
『騎馬戦闘図』（1440年代）マントヴァ、パラッツォ・ドゥカーレ
『レオネッロ・デステの肖像』（1441年頃）ベルガモ、アカデミア・カッラーラ
『聖母子と聖アントニウスと聖ゲオルギウス』（1445年頃）ロンドン、ナショナル・ギャラリー

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