2011年3月11日に発生した
東日本大震災は、未曽有の規模で
交通インフラに深刻な被害をもたらしました。地震とそれに伴う大津波は、沿岸部の
交通網を寸断し、内陸部でも計画停電による混乱が発生しました。この災害は、人々の移動手段を奪い、復旧には長期間を要しました。
自動車・バス
地震直後、東北地方を中心に多くの
高速道路が通行止めとなりました。
山形自動車道、
八戸自動車道、東北自動車道、
常磐自動車道などがその例です。
宮城県内の国道も各地で寸断され、
交通網は麻痺状態に陥りました。しかし、驚異的な復旧作業により、
常磐自動車道の一部区間はわずか6日で再開の見通しが立つなど、早期復旧への取り組みが海外メディアにも報道されました。
常磐自動車道の広野IC-常磐富岡IC間は、福島第一原発の警戒区域内に位置していたため長らく通行止めでしたが、
2014年2月に3年ぶりに再開通し、震災時の通行止め区間は全て解消されました。また、被災者支援のため、東北地方の
高速道路では被災者や避難者に対する通行料
無料措置が2012年3月まで実施されました。
バス事業も大きな被害を受け、
岩手県交通などの営業所が津波で全壊しました。新常磐
交通の営業所は原発警戒区域内にあるため、現在も使用不能となっています。利用者の激減や資金難により、路線の
廃止を検討する事業者も現れました。一方で、岡山県の
両備グループのように、義援金箱を設置するバス事業者もありました。
首都圏では、交差点への進入車両が集中し、グリッドロックと呼ばれる超渋滞が発生しました。これは日本で初めて観測された現象で、解消にほぼ一日を要しました。
各地の
鉄道路線も甚大な被害を受け、地震発生直後から機能が停止しました。多くの路線は数日後から4月末までに復旧しましたが、
常磐線、山田線、
仙石線、
石巻線、
三陸[[鉄道]]などは長期運休を余儀なくされました。
気仙沼線と
大船渡線の一部区間では、普通
鉄道による復旧を断念し、BRT(バス高速輸送システム)に転換されました。
山田線は、
東日本旅客[[鉄道]]による復旧後、
三陸[[鉄道]]に移管されました。
東北新幹線は、仙台駅付近で脱線が発生し、通常ダイヤに戻るまで約半年を要しました。
十和田観光電鉄線は、震災の影響が決定打となり、2012年に廃線となりました。
また、首都圏では多くの
帰宅困難者が発生しました。
全線復旧までに1年以上を要した主な路線は以下の通りです。
八戸線 (2012年3月17日復旧)
三陸[[鉄道]]南リアス線 (
2014年4月5日復旧)
三陸[[鉄道]]北リアス線 (2014年4月6日復旧)
石巻線 (2015年3月21日復旧)
仙石線 (2015年5月30日復旧)
山田線 (2019年
3月23日復旧)
常磐線 (2020年3月14日復旧)
BRTに転換された主な路線は以下の通りです。
気仙沼線 柳津駅-気仙沼駅間 (2012年12月22日本格移行)
*
大船渡線 気仙沼駅-盛駅間 (2012年12月22日本格移行)
船舶
震災により、多くの港が破損または
瓦礫で埋まり、被災地を結ぶ
航路が不通となりました。カー
フェリーでは、商船三井
フェリーの大洗~苫小牧
航路が6月まで欠航し、一部区間で貨物輸送に切り替えられました。
太平洋フェリーの名古屋~仙台~苫小牧
航路も、仙台港を一時的に抜港し、貨物輸送のみを再開しました。
川崎近海汽船の八戸~苫小牧
航路は、青森港へ振り替えて貨物輸送を実施し、7月に通常運航を再開しました。
震災直後、
離島は
本土から孤立状態となりました。気仙沼市の大島では、全ての船が使用不能となり、小型船での運航を余儀なくされました。車両の輸送が困難だったため、
広島県から
フェリーを借り受け、4月下旬に運行を再開しました。この事態を受け、政府は
離島航路への支援を拡充しました。
航空
震災発生直後、東日本を中心に航空路線で混乱が起こり、3月11日、12日だけで464便が欠航となりました。羽田空港では、駐機中の
旅客機が
ボーディング・ブリッジに衝突する事故が発生しました。
羽田空港と成田空港が閉鎖されたため、両空港に向かっていた86機が他の空港へ代替着陸を余儀なくされました。代替空港の想定が不十分であったため、着陸先を急遽探す必要に迫られました。特に国際線用大型機は、
中部国際空港、
関西国際空港、
新千歳空港などに分散して着陸しました。燃料不足で緊急着陸した機体もありましたが、重大な事故は発生しませんでした。
仙台空港は、津波により施設全体が浸水し、使用不能となりました。ターミナルビルも1階が水没し、約1,200人が一時孤立しました。米軍の協力を得て復旧作業が進められ、
4月13日に空港運用を再開、7月には定期便が再開しました。国際便も7月から臨時便が運航開始しました。
花巻空港と茨城空港では、ターミナルビルの天井が崩落し、一時閉鎖されました。
福島空港は管制塔の窓ガラスが破損しましたが、国内線は一部欠航のみで済みました。
山形空港は、大きな被害を免れたため、被災地支援の拠点として24時間体制で運用されました。
鉄道や
高速道路が不通だったため、避難民や支援物資が集中し、利用者が急増しました。
救援活動の本格化に伴い、東北各地の空港では民間機の活動が制限されました。
青森空港、
秋田空港、
福島空港では国際線が一時休止されました。また、原発事故の影響で、ルフトハンザ航空やエールフランス航空などは、成田空港への乗り入れを一時停止したり、運航ルートを変更するなどの措置を取りました。
民間供用以外の飛行場では、
航空自衛隊松島基地が津波により壊滅的な被害を受けました。