東日本大震災関連の犯罪・問題行為

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。この未曾有の災害は、人々の生活だけでなく、社会のあり方にも大きな変化をもたらし、様々な犯罪や問題行為を引き起こしました。本稿では、震災後に発生したこれらの問題について、その実態と背景にある要因を詳しく解説します。

概要

東日本大震災の発生後、地震や原発事故の影響を受けた、あるいは便乗した犯罪や問題行為が多数発生しました。被災地では、混乱に乗じた窃盗や暴力行為、性犯罪などのほか、食料不足からやむを得ず犯罪に手を染めるケースも見られました。また、被災地以外でも、募金詐欺や悪質な商法、デマの拡散など、社会全体を巻き込む問題が発生しました。これらの問題に対し、警察庁や消費者庁などが注意を呼びかけるとともに、内閣官房震災ボランティア連携室が確実な情報発信に努めました。

日本国外メディアにおける報道

震災直後、海外メディアは日本の秩序を保った状況を好意的に報じました。中国や台湾のメディアは、混乱や略奪が起きないことに驚きを表明し、アメリカのメディアも、他国の災害と比較して日本人の冷静さを称賛しました。しかし、一方でアメリカの新聞は、被災地の物資不足から略奪行為がやむを得ず行われているという報道もしました。

関係各所が注意喚起する悪質商法・詐欺

震災後、被災地やその周辺地域では、点検商法や騙り商法、募金詐欺などが横行しました。国民生活センターは「震災に関連する悪質商法110番」を開設し、注意を呼びかけました。また、ダイレクトメールによる詐欺や、除染作業員を装った空き巣も確認されました。インターネット上では、「東北に寄付する」という虚偽の広告で偽ブランド品を販売する詐欺も発生しました。

犯罪

被災地で発生している犯罪

窃盗

被災地では、避難により無人となった家屋への空き巣や、休業中の商店への店舗荒らしが多発しました。また、偽ボランティアによる窃盗や、燃料不足に乗じたガソリン窃盗も発生しました。宮城県では、地震発生から26日までの窃盗被害総額が約1億円に上りました。ATMの窃盗被害も多発し、福島第一原発事故の警戒区域内では、コンビニエンスストアを中心にATM破りの被害が相次ぎました。こうした窃盗被害を防ぐため、各自治体や警察は、バリケードの強化やパトロールの実施、店舗の防犯対策などの措置を講じました。

詐欺

被災者の家族を装い、預金通帳を騙し取る事件が発生しました。また、無登録のヤミ金業者による高金利貸し付けも横行しました。

暴力事件

避難所では、ストレスから喧嘩やトラブルが発生しました。警視庁は「警視庁きずな隊」を派遣し、相談やトラブル防止に努めました。

性犯罪事件

震災時の性犯罪も問題視されています。無料電話相談「よりそいホットライン」では、被災地からの相談の半数以上が性暴力被害に関するものでした。停電に乗じた強姦事件や、復旧作業に来ていた男による少女への暴行事件も発生しました。

自衛隊

原発事故を恐れてトラックを盗んで逃走した自衛隊員が懲戒免職処分を受けました。また、遺留品の現金を盗んだとして、陸上自衛隊の陸曹長が摘発されました。

その他

モニタリングポストの破壊行為や、除染作業員を違法派遣した暴力団関係者の逮捕、仮設住宅の破壊行為、密漁、横領事件、放火事件、廃棄物の不法投棄、談合事件、サバイバルゲームでの侵入、イノシシの故意の逃走、賠償金詐欺、落書き、被災車両の不正解体、帰還困難区域への侵入など、様々な犯罪や問題行為が発生しました。

全国的に発生している犯罪

募金詐欺

募金活動を装った詐欺事件が多発しました。電話やインターネットを利用した詐欺や、募金箱の窃盗、強盗事件も発生しました。

物資の窃盗

灯油の盗難や、民家への窃盗事件が相次ぎました。中には、震災の影響で帰国できない中国人が犯行に及ぶケースもありました。

サイバー犯罪

日本赤十字社などを騙るフィッシング詐欺サイトや、ウイルスメールが確認されました。FBIも、ネット詐欺に対する注意を呼びかけました。また、爆破予告メールにより、黙祷などの行事が中止となる事件も発生しました。

密航

震災の混乱に乗じて、日本に密航しようとする事件も発生しました。

各種復興支援制度・事業を悪用もしくは詐称した犯罪

震災特例助成金を騙し取る企業や、復興支援事業を装った詐欺、山林の不当な高額購入をさせる詐欺、賠償金の詐欺、生活保護費の詐取、補助金の不正受給など、復興支援制度を悪用した犯罪が多数発生しました。

その他

瓦礫の受け入れを表明した自治体への脅迫や、被災者を装った偽名口座の開設、鎮魂の木柱への落書き、仮設住宅購入を騙る特殊詐欺事件などが発生しました。

問題行為

犯罪ではないものの、問題視される行動として、デマやチェーンメール、買い占めなどが発生しました。

被災地で発生している問題行為

避難所で発生している問題行為

避難所では、食料不足から住民同士のトラブルや、生活のストレスからくるトラブルが多発しました。

デマ情報

被災地では、治安やライフラインに関するデマ情報が拡散しました。警察庁は、デマの削除を要請し、名誉毀損や偽計業務妨害の容疑での立件を示唆しました。

便乗ごみ

震災ごみの回収に便乗し、通常ごみや事業ごみを持ち込む人が現れました。

暴力行為

自警団が火事場泥棒らしき人物に過剰な暴力を振るったという報道がありました。

精神的被害から起きた行為

震災後、精神的な被害から自殺や放火事件が起きました。

放射能関連

原発作業員の待遇問題、東電による賠償金返還要求、放射線測定の不備、除染作業の不適切処理、被曝線量データの未送付、線量計の不携帯、除染作業への高校生の動員、飛散防止剤の希釈、イヌの虚偽情報、除染費用の不正請求、実家の除雪作業命令、外国人労働者の違法派遣、除染事業の不正など、放射能関連の問題が多数発生しました。

その他

応援派遣された警察官による不適切行為、技能実習生の居住問題、防犯パトロール隊員の不適切行為などが発覚しました。

被災地外で発生している問題行為

チェーンメール

地震に関するチェーンメールが拡散し、デマが広がる例がありました。

買い占め

一部商品で買い占めが発生し、品薄状態となりました。政府は、増産や備蓄放出などの対策を講じました。

買い控え・風評被害

問題発言

著名人や一般人による不適切な発言が物議を醸しました。

過度の自粛

自粛ムードが広がり、経済活動に悪影響を及ぼしました。花見や卒業祝いなどのイベントも自粛対象となりました。

古着問題

古着の支援物資が送られましたが、未使用のものに限られていました。

放射能関連

避難者のいじめや差別、結婚の破談、電力会社への嫌がらせ、放射線検査の受診証明書問題、作業員の待遇問題、放射性セシウムの放置、復興予算の不正受給、除染装置の無駄な支出、いじめ、教員による差別発言など、放射能関連の差別や問題が発生しました。

その他

取引先への損失の押し付けや、復興事業における不正行為、マスメディアによる不適切な報道、自治体による復興予算の流用などが発覚しました。

未然に防がれた問題行為・混乱

帰宅困難者関連

首都圏では、鉄道が終日運休しましたが、大きな混乱は起こりませんでした。行政や民間による協力体制が機能しました。

便乗値上げ

食料品や日用品の値上げは見られませんでした。

まとめ

東日本大震災は、多くの人々に深い傷跡を残しましたが、その一方で、人間の醜い側面も浮き彫りにしました。震災後の混乱に乗じて利益を得ようとする人々や、デマを流して社会を混乱させようとする人々が現れました。私たちは、これらの教訓を忘れず、災害時に冷静に対応し、互いに助け合うことの大切さを学ぶ必要があります。

脚注

外部リンク

震災を口実とした「だまし・不審事案」事例!! - 警視庁
東北地方太平洋沖地震に関する情報 - 警視庁
震災に関する消費生活情報 - 国民生活センター
震災に関する義捐金詐欺にご注意ください - 消費者庁

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