東林党

東林党の概要

東林党（とうりんとう）は、中国の明朝末期において、江南地域を中心に形成された士大夫たちによる政治集団および学派です。この集団は、特に学問的な側面から「東林学派」とも呼ばれています。

形成の背景

万暦22年（1594年）に、無錫県出身の顧憲成が時の権力である万暦帝の悪政に抗議したがゆえに、政界から追放されます。彼はその後、故郷の無錫に戻り、弟の顧允成とともに、北宋の学者・楊時によって設立された東林書院を再建しました。ここに、国政に関心を持つ多くの知識人が集まり、時事問題についての議論を繰り広げました。その中には、高攀龍や銭一本などの著名な人物も含まれています。

政治活動と名称の由来

東林党は、政界にて欠員が生じた際に、鉱税反対の立場を取る李三才を採用するかどうかが議論されたとき、顧憲成たちもその論争に参加しました。顧憲成は宰輔・葉向高に対し、李三才の採用を支持するよう手紙を送りました。この出来事を受け、葉向高と李三才が「東林党人」として批判されるようになり、結果的に「東林党」という名称が誕生しました。

力を持った時期

東林党は、組織的な政治活動を行い、時には政権を握るほどの影響力を誇りました。しかし、天啓年間（1621年 - 1627年）には、反東林派の宦官・魏忠賢が権力を掌握したことで、東林書院は閉鎖に追い込まれ、楊漣や左光斗、高攀龍などの党員が次々と投獄されたり、命を落とすこととなりました。さらに、反対派は「東林点将録」という文書を作成し、東林党のメンバーを一斉に取り締まろうとしました。

迫害の終息と思想

天啓7年（1627年）、崇禎帝が即位したことにより、魏忠賢は失脚し、自害する運命を迎えました。これを機に、東林党のメンバーに対する迫害は終わりを告げます。思想的な立場としては、彼らは陽明学に対して批判的でした。彼らは心即理説や無善無悪説を否定し、学問の目的は社会の現実的要求に応えることだと認識していました。道徳的な修養と政治参加を分け、社会の欲望を調和させることに「理」を見いだそうとしたのです。

学問の取り組み

このような考えのもと、東林党の人々は水利や農業技術の開発、さらに合理的な農業経営に取り組んだり、キリスト教の宣教師と交流する中で、ヨーロッパの自然科学に関する知識の獲得にも率先していました。また、公共の利益を追求する立場から君主批判を行い、地方分権の考えを提唱するなど、彼らの思想は明末清初の経世致用の学問的基盤を築く一翼を担ったと言えます。

まとめ

このように、東林党は単なる政治団体ではなく、中国史において重要な役割を果たし、思想と政治の関係を深く考察した集団であったことがわかります。彼らの存在は、時代の流れの中で新たな視点を持ち込むきっかけとなり、その学問の影響は現代にも受け継がれていると言えるでしょう。

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