東海道お化け道中

東海道お化け道中

『東海道お化け道中』は、1969年3月21日に公開された大映製作の時代劇特撮映画です。監督は安田公義と黒田義之が務めました。この作品は、『妖怪大戦争』、『妖怪百物語』と並び、「京都の妖怪三部作」として知られています。しかし、他の二作とは異なり、妖怪をメインに据えつつも、物語の軸は人情劇に置かれています。

作品の特徴

本作は、妖怪が登場するものの、その描写は比較的控えめです。物語は、「生き別れの父と娘」「やくざのイカサマ博打」「勧善懲悪」といった、時代劇の定番要素を盛り込んだ、人情股旅ものとしての側面が強く打ち出されています。妖怪たちは、主人公たちを助ける存在として登場し、物語にファンタジー要素を加えています。

キャストと製作

妖怪を演じる子役たちは、『妖怪大戦争』や『妖怪百物語』と同様に、大阪の児童劇団から選ばれました。特に、「白粉婆」役の山村嵯都子は、大映京都撮影所出身のベテラン女優で、この三部作すべてに出演しています。彼女は、後年の映像作品でも同じ役を演じ、本シリーズへの愛着を示しました。

特殊造形は、エキスプロダクションが担当し、妖怪たちの衣装は東京の工房で制作されました。監督の黒田義之は、本作について「普通の時代劇の中に妖怪を引っ張り出して、悪を滅ぼす話」と語り、妖怪を人間のように捉えて演出したと述べています。

音楽は、前作に引き続き渡辺宙明が担当しました。彼は、京都での録音に立ち会い、細部にまでこだわったそうです。本作で使用されたメロディは、後に渡辺が手掛けるTV特撮作品『人造人間キカイダー』などにも活用され、彼の音楽の特徴である「宙明節」の原点とも評されています。

ストーリー

物語の舞台は江戸時代。侠客の宮守の仁兵衛は、対立するやくざの悪事を暴く書状を持って代官所へ向かう途中、襲撃に遭います。その際、妖怪を祀る「鬼塚」の塚守りである甚兵衛も命を落とします。実はその夜は、妖怪たちが集まる特別な夜であり、霊地を汚された妖怪たちは怒り狂います。甚兵衛の孫娘であるお美代は、父を探す旅に出ることになります。一方、仁兵衛の仇を討つため、百太郎も旅に出ます。お美代は、道中妖怪たちに助けられ、また百太郎と出会い、共に旅をすることになります。物語は、お美代が実の父親と再会し、悪事を働くやくざたちを成敗する勧善懲悪の展開を見せます。

登場する主な妖怪

本作には、様々な妖怪が登場します。

百々爺：駿河の国の妖怪で、本作で初登場。
蛇骨婆：遠江の国の妖怪で、「鬼塚」の主。本作で初登場。
ぬらりひょん：三部作すべてに登場。本作では、粗末な着物に杖という姿で現れます。
木の枝のお化け：八つ墓山の木々の枝が、侵入者に絡みつきます。
土転び：八つ墓山に現れ、石灯籠のように見えます。
のっぺらぼう：顔のない姿で、人を驚かせます。
泥田坊：最後の行進では二体登場。
妖怪水車：本作初登場の妖怪で、水車の周りを生首が飛び回ります。
火吹き婆：火を吹く場面はありませんでしたが、ポスターでは主役級で描かれています。
ひょうすべ：三部作すべてに登場。
白粉婆：三部作すべてに登場。
青坊主：三部作すべてに登場する妖怪忍者。
一角大王：妖怪の近習頭。
毛女郎：三部作すべてに登場。
狂骨：三部作すべてに登場。人形操演で表現されています。
烏天狗：影となって現れます。
一つ目小僧：墓石から変化します。
人魂、生首：百太郎の夢に現れます。

公開とその後

本作は、春休み興行作品として『ガメラ対大悪獣ギロン』との二本立てで公開されました。また、1997年には、『妖怪百物語』、『妖怪大戦争』とセットになったLD-BOX『妖怪封印函』が発売されました。2000年にはDVD版も発売され、デジタル・ニューマスター版で映像が復刻されています。さらに、漫画家の浜慎二によって『恐怖まんが 東海道お化け道中』として漫画化もされました。

『東海道お化け道中』は、妖怪と時代劇の要素を巧みに融合させ、多くのファンを魅了し続けている作品です。その独特な世界観は、後の作品にも大きな影響を与えました。

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