東西対抗大碁戦

東西対抗大碁戦

東西対抗大碁戦は、1950年に毎日新聞の主催により、日本棋院（東軍）と関西棋院（西軍）の棋士によって争われた囲碁の棋戦です。この棋戦は、単なる勝敗を超えた、当時の囲碁界における東西の勢力争いを象徴するものでした。

背景

1946年、日本棋院関西別院は関西総本部と改称されましたが、関西棋士の待遇改善を求める声は高まり、東西の対抗意識は強まっていました。1947年に日本棋院会館復興のための募金が行われた際、関西で集められた資金を元に、橋本宇太郎を中心に関西棋院が設立され、日本棋院の下部組織でありながらも財務的には独立しました。また、同時期に呉清源が十番碁で圧倒的な成績を収めたことで、本因坊戦の魅力が低下していました。そこで毎日新聞は、関西棋院が提唱した東西対抗戦を企画し、囲碁界の新たな盛り上がりを創出しようとしました。

対局の模様

1950年2月11-12日、東西の中間地点である名古屋で、両軍から12名ずつの高段者が参加し、同時に対局を行う対抗戦が開催されました。総互先、コミ4目半というルールのもと、審判は藤沢庫之助、選手宣誓は岩本薫が務めました。対抗戦の結果は、東軍が7勝5敗で勝利を収めました。続いて行われた勝ち抜き戦では、東軍の藤沢秀行と西軍の窪内秀知がそれぞれ1勝した後、東軍の梶原武雄が4人抜きを達成し、東軍が勝ち抜き戦も制しました。

その後

第5期本因坊戦では、橋本宇太郎が岩本薫から本因坊位を奪取し、関西棋院の勢いが増しました。また、朝日新聞主催の大手合では、五段以上の高段者による東西交流戦が行われましたが、東軍が圧倒的な勝利を収めました。しかし、その後の感情的な対立などから、関西棋院は独立派と日本棋院残留派に分裂し、9月には独立派によって関西棋院が免状発行権を持つ完全に独立した組織となりました。

対抗戦結果

対局当日、両軍のオーダーが交換され、西軍の大将格である橋本宇太郎に対し、東軍は最年少の山部俊郎が挑みました。山部が初手を天元に打つと、橋本も天元にカカり、激しい戦いが繰り広げられました。また、藤沢秀行に敗れた佐藤直男が涙を流して悔しがるなど、東西の対抗意識が非常に高まりました。高段者から選抜された東軍に対し、西軍は引退していた棋士も含む高段者全員が出場し、善戦しました。

勝抜き戦結果

対抗戦に勝利した東軍7名と西軍5名による勝ち抜き戦が、6月にかけて行われました。東軍の梶原武雄が、西軍大将で本因坊位を奪取したばかりの橋本宇太郎を破り、4人抜きを達成して勝利しました。

参考文献

坂田栄男『囲碁百年 3 実力主義の時代』平凡社 1969年
梶原武雄『石心 梶原武雄 (芸の探究シリーズ3)』日本棋院 1977年
山部俊郎『変幻 山部俊郎 (芸の探究シリーズ5)』日本棋院 1977年
藤沢秀行『昭和の名局2 不滅の抗争譜』日本棋院 1980年
林裕『囲碁風雲録（下）』講談社 1984年
中山典之『昭和囲碁風雲録（上）』岩波書店 2003年

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