東郷重治

東郷重治（とうごう しげはる）

概要

東郷重治は、生没年不詳の島津家家臣です。通称は与助、与七、安房介といい、また休伴入道とも称しました。『本藩人物誌』によると、瀬戸口重為の次男で、東郷重位の兄とされています。

略歴

元亀3年（1572年）
下大隅荒平の合戦において、伊地知朝重や伊集院久春とともに武功をあげました。
天正12年から14年
『上井覚兼日記』に「瀬戸口安房介」として登場し、唐船噯（あつかい）や島津義久の料理の調理役を務めていました。天正12年12月27日には水鳥を料理した記録が残っています。
天正15年（1587年）
泰平寺行きや上洛に御供し、記録には「瀬戸口与助」と記されています。この頃、嫡家の東郷重虎（後の島津忠直）から「瀬戸口」姓から「東郷」姓への改姓を許可され、東郷氏を称するようになりました（この改姓は天正15年の上洛以降と考えられます）。
文禄年間
400石を領しました。
慶長年間
久志秋目郷の地頭を務め、年代は不明ながら内之浦地頭、山川地頭にも就任しました。
島津義久が国分新城に移住する際にも御供したとされ、『国分諸古記』には「東郷安房入道、子 十左衛門、その子十左衛門」と記載されています。また、同資料には「東郷藤兵衛尉 子 肥前、その子藤兵衛」や「瀬戸口三左衛門尉」の記述も残っています。
慶長14年
琉球侵攻に参加しました。
慶長15年
『九満崎御宮作ニ付すすめ日記』に「東郷休伴老」として記録されています。

家族

子: 東郷重恒
山川郷地頭、高江郷地頭、川内山田郷地頭を歴任しました。寛永11年に亡くなったとされています。
孫: 東郷重仍
川内山田郷地頭職、久志秋目地頭職、野尻郷地頭職に就任しました。室は町田氏で、万治2年の石高は420石8斗7升でした。
『諸郷地頭系図』には「久志秋目地頭、明暦3年ー寛文2年、東郷十左衛門」および「野尻郷地頭、寛文2年6月15日ー寛文5年7月まで、東郷十左衛門重仍」と記されています。

異説・その他

示現流の宗家高弟の系譜を記した『示現流聞書喫緊録略系図』では、『本藩人物誌』で兄とする重治を、重位の実父としています。同書によれば、東郷に改姓していた重治の次男である重位が、嫡家瀬戸口氏に嗣子がなかったため養子になったとされていますが、この説の真偽は不明です。
重治の生没年は不明ですが、『国分郷土誌 資料編』や『鹿児島県史料集 旧記雑録後編4』には、慶長年間における重治の活動を示す記述が見られます。
『示現流聞書喫緊録附録系図』では、文禄年間に400石を与えられたのは重恒（東郷重位の甥）としていますが、『鹿児島県史料集 旧記雑録』や『国分諸古記』を見る限り、慶長以降も重治が十左衛門家の当主であったことがわかります。
東郷十左衛門家については、『さつまの姓氏』や『東郷町史』に掲載されていますが、これらの書物では重治を日置流弓術初代師範の東郷重尚と混同してしまっています。東郷重尚は加治木衆から鹿児島衆になった人物であり、国分衆の瀬戸口流東郷氏とは関係がなく、同一人物ではありません。

まとめ

東郷重治は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武士であり、その生涯は史料の断片からしか辿ることができません。しかし、島津家への忠誠、武功、そしてその子孫による家名の継承は、歴史にその名を刻みました。

参考文献

「鹿児島士人名録」高城書房
「国分郷土誌 資料編」（「国分諸古記」が掲載されている。）
村山輝志著「示現流兵法」（「旧記雑録後編」等に登場する東郷重位や東郷安房守ら瀬戸口氏系東郷一門の記述が抜粋して掲載されている。）
「東郷町史」

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