上井覚兼

上井覚兼（うわい かくけん/さとかね）

上井覚兼は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将であり、島津氏の家臣として活躍しました。その生涯は、武将としての側面だけでなく、政治家、行政官、そして教養人としての側面も持ち合わせていました。

出自

上井氏は、諏訪氏の支流にあたります。覚兼の祖父である上井為秋（諏訪為秋）の代から島津氏に仕えるようになりました。この出自が、彼の後の人生に大きな影響を与えたと考えられます。

略歴

天文14年（1545年）、大隅国の上井領主であった上井薫兼の子として誕生しました。永禄2年（1559年）に元服し、島津貴久に仕官しました。その2年後、肝付兼続が籠る廻城攻めで初陣を飾り、以降、日向国や大隅国への侵攻で活躍しました。

貴久の死後は、その子である義久の側近として仕え、天正元年（1573年）には申次役に任命されました。さらに、天正4年（1576年）からは老中の一員として島津氏の政治を主導しました。同年8月の義久に従っての高原城攻め、天正6年（1578年）には島津以久の副将として石ノ城攻めに参加、耳川の戦いにも参戦しました。

天正8年（1580年）からは日向の抑えとして宮崎城の守備を命じられ、行政面で手腕を発揮しました。日向地頭職に任じられ、事実上、日向一国を任されることとなりました。

天正12年（1584年）には、島津義弘から金瘡医術の伝授を受け、秘伝の医書を与えられました。金瘡医術とは、戦傷全般とそれに付随する病気、さらには婦人病などを扱う医術です。同年の10月には、有馬晴信から南蛮犬を贈られました。この珍しい犬を一目見ようと多くの人が集まり、島津義虎や島津忠長も訪れたほどでした。覚兼はこの犬を島津義久に献上しましたが、殿中での飼育は不可と判断され、覚兼の元に戻されました。

天正15年（1587年）、島津家久に従って豊臣秀長の軍勢と戦いましたが敗北し、家久と共に降伏しました。その後、伊集院地頭職に任じられ、伊集院で隠棲し、その地で病没しました。覚兼の子である経兼からは、祖父以前からの姓である「諏訪氏」を称するようになりました。

教養人としての側面

覚兼は、優れた教養人としても知られています。彼が記した『上井覚兼日記』や『伊勢守心得書』は、島津氏の首脳陣の政策決定を知る上で貴重な資料であるだけでなく、戦国大名家の信仰生活や日常生活を記録した史料としても高く評価されています。これらの記録から、当時の社会情勢や人々の生活を知ることができます。

上井覚兼は、武将としての勇猛さ、政治家としての才覚、そして教養人としての知性を兼ね備えた人物でした。彼の残した記録は、戦国時代から安土桃山時代にかけての歴史を理解する上で欠かせない資料となっています。

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