松原 (佐賀市)

佐賀市松原：歴史と文化が息づく街

佐賀県佐賀市の中心部に位置する松原地区は、かつて松原小路と呼ばれた江戸時代の面影を残す地域です。郵便番号は840-0831。

地理

松原は佐賀城北堀の北側に位置し、国道264号線に沿って東西に細長く広がっています。西から一丁目、二丁目、三丁目、四丁目と区分されています。町の周囲には裏十間川、多布施川、松原川といった人工河川が流れ、特に松原川沿いには佐賀城の見通しを遮るための松並木が設けられ、これが地名の由来となっています。周辺地域は、中の小路、中央本町、呉服元町、柳町、材木、水ヶ江、城内、堀川町に隣接しています。

歴史

松原小路は、かつて武家屋敷が立ち並ぶ地域でした。『弘化二巳総着到』によれば、16名の武士が居住し、平均石高は2700石と、他の小路と比較しても高い水準でした。藩校の弘道館や松原神社は、8代藩主鍋島治茂によって建立されました。また、鍋島家は佐賀図書館や徴古館といった文化施設も建設し、地域文化の発展に貢献しました。現在、バルーンミュージアム駐車場には、嬉野家の屋敷門が保存されており、佐賀市の重要文化財に指定されています。

松原神社は1772年に創建されました。当初は幕府の社寺建立禁止令により、楠の根元に石祠を祀る形で造営されましたが、1817年には参道が開かれ、鳥居や下宮も建立されました。1877年には神苑が設けられましたが、佐嘉神社の建立時にその敷地の一部となりました。

1881年に松原町となり、1889年の市町村制施行により佐賀市の一部となりました。1968年の住居表示実施により、松原町の一部と周辺地域が統合され、現在の松原1〜4丁目、中の小路、中央本町が誕生しました。

行政・教育機関の変遷

松原地区には、かつて佐賀県庁舎、佐賀県議会議事堂、佐賀市役所などの行政機関や、勧興小学校、佐賀中学校、佐賀高等小学校などの教育機関が所在していました。これらの施設は時代の変遷とともに移転や閉鎖されましたが、地域の歴史を物語る重要な要素となっています。

現在の松原

現在、松原地区の西部には佐賀県警察本部や佐賀中央郵便局などの公的機関が立地しています。中央部には佐嘉神社・松原神社が鎮座し、その周辺は飲食店が多く立ち並ぶ繁華街となっています。3丁目には、昭和天皇が宿泊された料亭「楊柳亭」があり、ミシュランガイドで二つ星を獲得しています。かつて映画館が集中していた2丁目には、現在ミニシアター「シアター・シエマ」が営業しています。東部には住宅や商店が多く、旧福田家などの歴史的な建物も残っています。佐嘉・松原神社を含む2丁目一帯は風致地区に指定されています。

銅像園と徴古館

かつて鍋島直正の銅像が建てられた銅像園は、佐賀図書館や徴古館が開設され、文教地区として発展しました。銅像は戦時中に金属供出で失われましたが、2017年に佐賀城公園内に再建されました。徴古館は鍋島家の歴史資料を展示する博物館として公開されています。

戦後、銅像園の敷地には引揚者を受け入れた「松原マーケット」が成立しましたが、店舗の減少により規模は縮小しています。また、4丁目には引揚者が開いた「寿通り商店街」がありましたが、2017年に閉鎖されました。

佐賀米穀取引所

1888年、松原4丁目に佐賀米穀取引所が開設され、佐賀経済の発展に貢献しました。取引所は1939年に解散しましたが、松原町出身の黒田チカの父が理事を務めていたことでも知られています。

NHK佐賀放送局

松原1丁目には、2022年に移転してきたNHK佐賀放送局があります。以前は佐賀商工会館があり、佐賀商工会議所や県信用保証協会などが入居していました。NHK佐賀放送局も過去に松原に局舎を置いていました。

くすかぜ広場

くすかぜ広場は、かつて佐賀市役所があった場所に位置し、2022年にリニューアルされました。芝生広場やカフェスペースが設けられ、「歩くライフスタイル」の拠点として活用されています。

河童伝説

松原川には河童伝説が伝わっており、松原神社には河童を祀る河童社があります。川には河童の親子像が設置され、子供たちの水難除けとして親しまれています。

松原地区は、歴史的な背景と現代的な要素が融合した魅力的な街です。佐賀にお越しの際は、ぜひ松原地区を散策し、その歴史と文化に触れてみてください。

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