松尾神社 (宝塚市)

松尾神社：歴史と自然が息づく宝塚の社

兵庫県宝塚市山本に鎮座する松尾神社は、地元住民から親しみを込めて「東の宮さん」と呼ばれ、西宮の天満神社とともに、古くから旧川辺郡山本村の氏神として信仰を集めてきました。天満神社との共催例祭では、地域全体が一体となり、活気あふれるだんじり祭が開催されます。

由緒ある歴史

『柏葉集』や『松尾丸社縁起』などの古文書によると、松尾神社の創建は平安時代に遡ります。坂上田村麻呂の父、坂上苅田麻呂が山城国松尾大社に祈願したことが起源と伝えられています。幼名松尾丸と称された田村麻呂は、多田盆地を本拠とした清和源氏の源満仲によって、山本郷の守護を任された坂上頼次によって祀られることとなりました。

頼次は田村麻呂の遺品を奉斎し、山本郷を開拓。坂上氏一族を配し、多田政所の警備にあたりました。その後、頼次の子孫である浦辺太郎坂上季猛が、安和年間に祖先である坂上田村麻呂を祀り、天下泰平を祈願して創建したのが松尾丸社のはじまりです。

松尾丸社は将軍家の祖神として崇敬され、特に源頼朝からの信仰が篤かったと伝えられています。将軍の交代の際には、新製の守護弓が奉納され、全国の武家もこれを用いたと言われています。

創建当初は坂上田村麻呂が主祭神でしたが、治承元年（1177年）に山本庄が松尾大社に寄進された際、松尾大社の祭神である大山咋神が合祀されたと考えられています。

室町時代末期から天正年間にかけては、織田信長方の塩川国満による侵略を受け、松尾丸社は焼失。慶長年間（17世紀初頭）に現在地に移転し、松尾神社と改称されました。

その後、坂上氏は花木の栽培を営み、山本の植木産業の基礎を築きました。天満神社を創建した若池氏の子孫と共に、松尾神社と天満神社の宮座の運営を交代で行い、「宮衆」と呼ばれていました。江戸時代には松尾大権現と呼ばれ、地域住民から深い信仰を集めていました。

見どころ

本殿は、流造杮葺の造りで、寛文11年（1671年）に再建されたものです。宝塚市の指定文化財に指定されています。境内には薬師如来を安置する薬師堂もあります。境内全体は自然環境保全地区に指定され、豊かな自然に囲まれた静寂な空間が広がっています。

祭事

松尾神社では、年間を通して様々な祭事が執り行われています。2月には御弓祭、5月には天満神社との共催による神輿渡御「とんとこ祭」、9月には八朔祭、そして10月には天満神社と共催で、3基の地車が宮入りする盛大なだんじり祭（例祭）が開催されます。

山本の植木産業

10世紀、坂上頼次が山本の屋敷周辺に花園を作り、草花を栽培したのが、山本の植木産業の始まりとされています。鎌倉時代には、その子孫である坂上頼定が造園の技術に優れ、園芸家として高い地位を得ました。

安土桃山時代には、第34代山本荘司の坂上頼泰が接木法を広め、豊臣秀吉から「木接太夫」の称号を授かりました。現在、山本周辺は国内有数の植木産地として知られており、阪急山本駅前に「木接太夫彰徳碑」が建立されています。

アクセス

阪急宝塚本線山本駅から徒歩8分とアクセスも良好です。周辺にはあいあいパークなどの施設もあり、神社参拝と合わせて散策を楽しむことができます。

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