松平忠重

松平忠重（まつだいら ただしげ）

松平忠重は、江戸時代前期の旗本であり、大名です。桜井松平家の8代目当主として、波乱に満ちた生涯を送りました。父である松平忠頼の急死により、一時的に改易された桜井松平家を、見事に大名として復帰させた人物として知られています。

生涯

1601年、遠江浜松藩主であった松平忠頼の長男として誕生しました。幼少の頃から将来を嘱望されていましたが、1609年、父・忠頼が悲劇的な最期を遂げます。忠頼は、従兄弟である水野忠胤の江戸藩邸での茶会に参加中、同席していた人物同士の口論を仲裁しようとして、逆に刺殺されてしまったのです。これにより、桜井松平家は城地を没収され、妻子は江戸に召されるという状況に陥りました。

しかし、忠重は父の死後、1610年に武蔵国深谷で8000石を与えられ、旗本として再出発を果たします。その後、着実に実績を重ね、1622年には上総佐貫で1万5000石の所領を与えられ、桜井松平家は再び大名としての地位を取り戻しました。

忠重の活躍はこれに留まらず、1633年には駿河田中に移封され、2万5000石を領します。さらに、徳川家光が上洛する際には田中城に立ち寄り、その際に5000石を加増されて3万石となりました。1635年には、遠江掛川藩に4万石で移封され、初代藩主となりました。1638年には駿府城の普請を務め、奏者番にも任じられましたが、翌年の1639年に39歳という若さでこの世を去りました。

桜井松平家再興の象徴

桜井松平家は、忠重の曾孫にあたる松平忠喬の代に摂津国尼崎藩に定着します。尼崎には「朱地葵紋染抜大旗」という、桜井松平家再興の象徴とされる旗が伝わっており、以下のような逸話が残されています。

徳川家康が67歳の時、三河国安城を巡察中、赤子を抱えた一団がこの大旗を掲げているのを目撃しました。家康が尋ねたところ、その赤子こそが改易された松平忠頼の嫡子である忠重であり、家康は同族の情から忠重に8000石を与え、お家再興を許したというものです。

この逸話からもわかるように、忠重は桜井松平家を再興した人物として、後世にまで語り継がれています。明治維新後には、尼崎に桜井神社が創建され、信定、忠重、そして10代忠喬（尼崎藩主初代）が祀られるようになりました。

系譜

父：松平忠頼
母：織田長益（有楽斎）の娘
正室：木下延俊（豊後日出藩主）の娘
長女：織田信勝（丹波柏原藩主）室
* 長男：松平忠倶

補足

忠重の長女が嫁いだ織田信勝の祖父は織田信包で、忠重の外祖父である織田長益の兄にあたります。

まとめ

松平忠重は、父の不慮の死という逆境を乗り越え、桜井松平家を再興させた不屈の精神を持つ人物でした。旗本から大名へと昇りつめ、その生涯は波乱に満ちていましたが、その功績は今もなお語り継がれています。彼の物語は、困難に立ち向かう勇気と、家を再興させるという強い意志の大切さを教えてくれるでしょう。

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