水野忠胤

水野忠胤（みずの ただたね）

水野忠胤は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、大名です。徳川家康の従兄弟であり、織田信長の娘婿という縁戚関係にありました。彼は三河国内で1万石を領有し、幕府の大番頭という要職を務めましたが、後に家臣の不祥事により、その責任を問われ切腹を命じられました。

生涯

大名となるまで

水野忠胤は、水野忠重の次男として生まれました。兄には水野勝成がいます。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、兄と共に美濃曽根城の守備や大垣城攻撃で功績を挙げました。戦後、三河国内に1万石を与えられ、従五位下市正に叙位・任官し、大名に列することとなりました。この時、三河水野藩が成立したと考えられています。1万石の所領を与えられた時期は明確ではありませんが、『恩栄録』によれば関ヶ原の直後とされています。

その後、大番頭に任じられました。ただし、『柳営補任』には大番頭になったという記述はありません。

切腹

松平忠頼殺害事件

慶長14年（1609年）9月29日、水野忠胤は親族にあたる松平忠頼（遠州浜松藩主）を自邸に招き茶会を開きました。しかしその席で、忠胤の与力である久米左平次と服部半八郎が口論となり、刃傷沙汰に発展し、松平忠頼が殺害されるという事件が起こりました。

『寛政譜』によれば、久米と服部は「武道の事」で言い争ったとされています。松平忠頼は仲裁に入ろうとしましたが、久米左平次によって殺害されました。『徳川実紀』では、事件は9月1日に発生しており、茶会の後、久米と服部が囲碁をしていた際、服部と親しかった忠頼が一方的に助言したため、激怒した久米が脇差を抜いて斬り合いになったとされています。居合わせた者が止めようとした際に、忠頼が刺されたとされています。9月29日には忠頼の死去が記録されていますが、『徳川実紀』の注釈では、忠頼は9月1日に刺殺されており、29日は届け出の日ではないかとされています。

松平忠頼の横死により、浜松藩5万石は一旦収公され、遺児の松平忠重には8000石のみが与えられました。

水野忠胤は、自邸で家臣が松平忠頼を殺害した責任を問われ、同年10月16日に切腹を命じられ、藩も取り潰されました。事件に関与した服部半八郎は、知行地の相模国に逃亡しましたが、捕らえられて切腹させられました。また、服部を逃亡させた同僚の三浦彦八も切腹を命じられました。

大番水野忠胤組の処罰

『徳川実紀』によると、松平忠頼殺害事件に加え、以前に伏見在番中に配下の者が京都で横暴な振る舞いをしていたことが、忠胤に切腹が命じられた理由とされています。同時に、忠胤配下の多くの者が処罰されました。海保三吉は伏見城番中に城を抜け出して京都を徘徊し、辻相撲で豊臣家の「奴僕」を殺害した罪で切腹させられ、荒尾長五郎、有賀忠三郎、世良田小伝次、小俣伊右衛門、間宮彦九郎らも連座して切腹を命じられました。

その他、城番中に父の葬儀のため無断で江戸に戻った小斐（小尾）仁左衛門、家来が京都で商人を殺害した藤方平九郎・小川佐太郎、在番中の素行不良が問題となった津戸左門、戸田喜右衛門、岡部庄七、駒井孫四郎、松平九郎左衛門らが改易となりました。

系譜

父：水野忠重
母：都筑吉豊の娘
正室：織田信長の娘・於振
長男：水野勝信 - 水野勝成の養子
女子 - 水野勝成の養女。丹羽氏信室
女子 - 南条宜政の妻
側室：某氏
二男：大弐 - 僧

補足

母は忠重の正室であり、水野勝成とは同母兄弟です。『寛政譜』によれば、忠重の正室は都筑右京進吉豊の娘とされています。一方で、福山では忠重の正室は本願寺法主顕如の妹で「妙舜尼」と伝えられています。
正室の織田氏（於振）は、忠胤の死後、佐治一成に再嫁しました。
長男の水野勝信は、水野勝成の養子となり、徳川忠長に仕えましたが、後に狂気により除封されました。
長女は水野勝成の養女となり、慶長6年（1601年）に徳川家康の命により、丹羽氏信に嫁ぎました。丹羽氏信の嫡男である丹羽氏定（美濃岩村藩主）はその子です。
二女は豊臣秀頼の家臣である南条宜政に嫁ぎました。『寛政譜』によると、宜政との間に三男の南条宗俊を儲けました。南条宗俊は千姫に仕え、その縁で徳川綱重に仕え、子孫は旗本となりました。
『寛政譜』によれば、大坂の陣の際、南条宜政は大坂方として戦っていましたが、落城の際に水野勝成の軍勢が宜政の妻子を救出し、宜政自身も大坂城から脱出したとされています。宜政はその後、加藤清正、次いで森長継に仕えました。
南条宜政の二男・南条貞政は、一時期、水野忠職（水野勝成・忠胤兄弟の甥）に仕えていました。
二男の大弐は僧となり、備後福山の妙蓮寺住職となりました。妙蓮寺は、水野勝成が母の菩提を弔うために建立した寺です。妙蓮寺の所伝によれば、大弐は実名を「勝次」といい、寛永元年（1624年）に同寺が創建された際、開山となり「大弐上人」と称されました。

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