松平正方

松平正方は、享保4年（1719年）に上総大多喜藩主・松平正久の七男として生を受けました。大河内松平家は、江戸幕府において重要な役割を果たした家柄であり、正方もその一員として幕府に仕えることになります。

享保15年（1730年）11月17日、正方は分家の当主であった従兄・松平正億の末期養子となります。これは、当時の武家社会における家名存続のための重要な措置でした。同年12月27日には家督を相続し、一家の長としての地位を確立します。

翌享保16年（1731年）6月13日、正方は将軍・徳川吉宗に初めて拝謁し、名を大蔵と改めます。これは、幕府における活動を開始するにあたっての重要な儀式でした。その後、享保20年（1735年）1月13日から元文2年（1737年）8月23日まで、牛込口門番という役職を務めます。これは、江戸の治安維持に貢献するものでした。

寛保元年（1741年）11月2日には、中奥小姓という役職に就きます。これは、将軍の身辺警護や取り次ぎを行う重要な役割でした。延享元年（1744年）10月7日には、従五位下・飛騨守に叙任され、武士としての位階を上げました。宝暦5年（1755年）8月28日には、新番頭という役職に就任し、幕府の警備体制を担いました。

正方には実子がいなかったため、宝暦7年（1757年）4月9日に実兄・松平正武の次男である亀次郎（後の松平方政）を婿養子として迎えました。これは、家名を存続させるための重要な決断でした。宝暦10年（1760年）11月9日には、小姓組番頭という役職に就任し、将軍の身辺警護の責任者となりました。

明和2年（1765年）8月22日、正方は市正と改名します。これは、酒井忠香が西丸若年寄に就任したことに伴うものでした。同年11月15日には書院番頭となり、幕府の重要な文書管理や儀式を担当しました。しかし、明和4年（1767年）8月、嫡子であった方政が大病を患い、やむなく廃嫡するという悲しい出来事に見舞われます。

明和5年（1768年）6月6日、松平正方は50歳でこの世を去りました（公式には55歳とされています）。彼の死後、家督は嫡孫である友吉（後の松平正愛）が相続しました。正方の生涯は、旗本として幕府に忠実に仕え、家名を守り抜いたものでした。

参考文献

『寛政重修諸家譜』巻第二百五十七
『幡豆町史 資料編2 近世』

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