松竹キネマ研究所

松竹キネマ研究所とは

松竹キネマ研究所は、1920年11月に設立され、1921年8月に解散した、短命に終わった日本の映画プロダクションです。設立の背景には、映画監督であり演出家でもあった小山内薫の存在がありました。彼は、松竹キネマが設立した俳優学校の校長に就任しましたが、自身の映画改革への熱意と、蒲田撮影所の商業主義的な姿勢との間に、埋めがたい溝を感じていました。その結果、小山内は自身の理想とする映画製作を実現するため、松竹キネマを離れ、独自の研究所を立ち上げるに至りました。

設立の経緯

1920年4月、小山内薫は松竹キネマ俳優学校の校長に就任します。同年6月には蒲田撮影所が開設され、小山内は門下生と共に2本の映画を制作しますが、商業主義的な蒲田撮影所の監督たちとの対立が深まります。同年10月、俳優学校は廃止となり、小山内は松竹の社長であった大谷竹次郎と協議した結果、自身のグループを引き連れて、同年11月に本郷区春木町に松竹キネマ研究所を設立しました。運営費用は大谷社長から直接支出されたとされています。

活動と解散

研究所は、1921年4月8日に第1回作品となる『路上の霊魂』を公開しました。監督は村田実が務め、松竹キネマの配給で上映されました。同年7月1日には、牛原虚彦の監督デビュー作である『山暮るゝ』が公開されました。しかし、3作目の『君よ知らずや』公開後の8月、研究所は興行成績の不振と製作費の過大を理由に解散を余儀なくされました。研究所のメンバーの多くは蒲田撮影所に戻り、小山内は松竹キネマ株式会社本社の相談役に退きましたが、1922年3月には正式に松竹を辞任しています。また、村田実は、作品に過大な製作費をかけ、松竹の経営を圧迫した責任を取り、解散直後に辞任しています。

所属者

研究所には、所長の小山内薫をはじめ、以下のような人々が所属していました。

所長: 小山内薫
庶務: 佐藤夏樹、土橋慶三
監督: 村田実、島津保次郎、牛原虚彦、蔦見丈夫
脚本: 北村小松
撮影: 水谷文二郎、小田浜太郎、佐々木恒次郎、鈴木博、白井茂
衣裳及小道具: 山下徳松
装置: 溝口三郎
俳優: 東郷是也、根津新、東屋三郎、南光明、岡田宗太郎、小松武雄、磯野秋雄、蔦村繁、英百合子、沢村春子、伊達竜子、東栄子、春野恵美奈、エリアナ・パブロワ、久松三岐子、山田とし子

フィルモグラフィ

研究所が制作した作品は以下の3作品のみです。

1921年: 『路上の霊魂』（監督・出演:村田実、脚色・出演:牛原虚彦、撮影:水谷文次郎、出演:小山内薫、東郷是也、沢村春子、南光明、英百合子）
1921年: 『山暮るゝ』（監督:牛原虚彦、原作・脚本:北村小松、撮影:小田浜太郎、出演:南光明、根津新、沢村春子、春野恵美奈）
1921年: 『君よ知らずや』（指揮:小山内薫、監督・脚本:村田実、撮影:水谷文次郎・小田浜太郎、出演:エリアナ・パブロワ、根津新、南光明、春野恵美奈）

関連事項

松竹キネマ研究所は、以下の組織・人物と関連があります。

松竹
帝国活動写真
松竹蒲田撮影所
松竹キネマ
ヴィルヘルム・シュミットボン

まとめ

松竹キネマ研究所は、小山内薫の映画改革への情熱が生み出した、実験的な映画製作の場でした。しかし、商業的な成功には結びつかず、短期間で解散を余儀なくされました。その短い活動期間にもかかわらず、日本の映画史にその名を刻む、重要な存在と言えるでしょう。

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