松竹シナリオ研究所

松竹シナリオ研究所：脚本家養成の名門の軌跡

松竹シナリオ研究所は、かつて松竹株式会社が運営していたシナリオ学校であり、多くの脚本家を育成した名門として知られています。その歴史は、1980年の開校に遡ります。

始まりは松竹キネマ蒲田撮影所

研究所の前身は、1928年に松竹キネマ蒲田撮影所に設立された脚本部「松竹脚本研究所」です。1936年に撮影所が神奈川県鎌倉市大船に移転した後も、脚本部は活動を続け、橋田壽賀子など、後に名を成す脚本家を輩出しました。

研究所としての新たなスタート

「松竹という枠にとらわれず、広く後進を育成しよう」という理念のもと、現在の松竹シナリオ研究所が設立されました。教育課程は基礎科（1年）と本科（2年）に分かれ、基礎科では原稿用紙の使い方といった基礎から指導。本科では、映画監督経験者などベテランが講師を務め、より専門的な知識や技術を指導しました。

多くの才能を輩出

研究所は、1期生から「私をスキーに連れてって」の脚本を手がけた一色伸幸を輩出。脚本家を奨励する城戸賞の受賞者も多数輩出するなど、その教育水準の高さを示しました。最盛期には約150人の生徒が在籍していましたが、2000年6月に映画部門の不振により大船撮影所が売却され、活躍の場が減少。不況の影響も重なり、生徒数は減少の一途を辿りました。

閉鎖と山田洋次の言葉

閉鎖間際の生徒数は約30人にまで減少し、教室も本社ビルの会議室を使用する状況でした。閉鎖に際し、映画監督の山田洋次は「後進を育てるという松竹の良き伝統で、レベルも高かったのに本当に残念だ。映画界全体に若い脚本家を育てようという意欲が欠如している」と、その閉鎖を惜しみました。

講師陣

所長は川邊一外が務め、伊藤聚、升本喜年、脇田茂、鈴木敏夫などが講師を務めました。また、芦沢俊郎、下飯坂菊馬、田村孟、南部英夫、仲倉重郎、金子成人といった脚本家や映画監督に加え、特別講師として三国連太郎、山田太一なども教鞭をとりました。

主な出身者

一色伸幸、丹羽圭子、下山天、荻野欣士郎、米村圭伍、神山由美子、木下博、山口恵以子、三浦一尺、梅津正彦、松浦雅子、今一生、右田昌万、高丸雅隆、伊比恵子、阿部勉、吉高寿男など、映画、テレビ、小説など様々な分野で活躍する人材を輩出しています。

松竹シナリオ研究所は閉鎖されましたが、そこで培われた脚本家育成のノウハウと、輩出された多くの才能は、日本の映画・テレビ業界に大きな影響を与え続けています。

外部リンク

松竹株式会社
ドラマ工房・瞳

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