林兼造船

林兼造船株式会社：捕鯨船からフェリーへ、そしてその終焉

林兼造船株式会社は、山口県下関市に本社を置く造船会社として、かつて日本の造船業界において重要な役割を果たしていました。1916年（大正5年）中部鉄工所として創業し、1919年（大正8年）に林兼造船鉄工所と改称。その後、大洋漁業（後のマルハニチロ）系列の造船所として発展を遂げました。

下関工場：捕鯨業の隆盛と衰退

下関工場は、林兼造船の主要拠点でした。創業時の工場（第一工場）は下関駅の北側に位置し、その後、彦島に第二工場と第三工場が建設されました。下関工場は、特に捕鯨船の建造で名を馳せました。1947年（昭和22年）から1961年（昭和36年）までに32隻もの捕鯨船、そして数多くの運搬船やトロール船を建造。これらの船舶は、日本の捕鯨業、ひいては遠洋漁業の隆盛を支える重要な役割を果たしました。しかし、捕鯨業の衰退とともに、1965年（昭和40年）を最後に捕鯨船の建造は終了。その後は、フェリーや特殊船の建造へと事業転換を図りました。

第二工場は、その後継会社を経て現在も船舶修理を担い、第三工場跡地は複合施設建設計画が頓挫したのち、共立機械製作所の下関工場となっています。戦前から続く歴史的なドックの存在も注目に値します。

長崎工場：大型貨物船建造の中堅造船所

1965年（昭和40年）、林兼造船は倒産した川南工業の深堀造船所を買収し、長崎工場を開設しました。当初は漁船や1万トン級の貨物船を建造していましたが、1973年（昭和48年）の船台拡張後は、大型ばら積み貨物船やパナマックスタンカーなどの建造へと規模を拡大。三菱重工業長崎造船所に次ぐ中堅造船所として、長崎市の経済に貢献しました。しかし、1980年代の造船不況と政府の造船業界安定化政策の影響を受け、1980年（昭和55年）1月に閉鎖を余儀なくされました。工場の一部は林兼船渠として独立し、後に台湾のエバーグリーン・グループに買収、長栄造船を経て福岡造船の傘下となりました。

造船不況と企業の終焉

オイルショック、円高、そして造船不況は、林兼造船に大きな打撃を与えました。長年にわたり日本の造船業界を支えてきた同社も、これらの逆風に耐え切れず、1987年（昭和62年）12月に解散という結末を迎えました。林兼造船の歴史は、日本の造船業、そして捕鯨業、遠洋漁業の盛衰を物語る貴重な歴史の一端と言えるでしょう。

主な建造船

林兼造船は、その歴史の中で多くの船舶を建造しました。中でも、1946年から1964年にかけて建造した32隻の捕鯨船（キャッチャーボート）と6隻の冷凍船は、同社の代表的な建造物として知られています。その他、フェリー、RORO船、そして練習船である豊潮丸（2代）、耕洋丸（3代）、深江丸（2代）なども建造されました。これらの船舶は、それぞれの分野で活躍し、日本の海の進歩発展に貢献しました。林兼造船の功績は、日本の造船史にしっかりと刻まれています。

もう一度検索