柳沢時睦

柳沢時睦：甲府新田藩から三日市藩へ

柳沢時睦（やなぎさわ ときちか、1696年7月10日 - 1750年5月29日）は、江戸時代中期の甲斐甲府新田藩主、そして越後三日市藩の初代藩主として知られています。将軍徳川綱吉の側用人として権勢を振るった柳沢吉保の五男であり、波瀾に満ちた生涯を送りました。

時睦は元禄9年（1696年）、柳沢吉保と側室の正親町町子（あるいは田中氏）の間に生まれました。父吉保の地位の高さを背景に、誕生の年には将軍徳川綱吉の柳沢邸御成の際に御目見する機会を得ています。元禄14年（1701年）には松平姓を許されるなど、幼少期から恵まれた環境の中で育ちました。

宝永6年（1709年）、兄の柳沢経隆と共に、父吉保から甲斐国山梨郡・八代郡内に1万石を分知され、甲府新田藩を立藩。帝鑑間詰を務めるなど、着実に地位を築いていきました。この甲府新田藩の成立は、吉保の政治力と時睦自身の能力を反映した出来事と言えるでしょう。

しかし、時睦の藩主としての地位は長くは続きませんでした。享保9年（1724年）、父吉保の転封に伴い、時睦も越後国三日市藩に移封されます。この移封は、吉保の政治的影響力の衰えを示唆する出来事であったとも考えられます。三日市藩主となった時睦はまもなく家督を弟の柳沢保経に譲り、隠居しました。

隠居後は、政治の表舞台から退き、静かに余生を過ごしたと考えられます。そして、寛延3年（1750年）、55歳でこの世を去りました。

系譜と人物像

時睦の生涯を理解する上で、その系譜と人物像を考察することは欠かせません。父は柳沢吉保、母は正親町町子（または田中氏）という、当時としては特筆すべき家系に生まれた時睦は、幼い頃から周囲の期待を一身に背負っていたことでしょう。兄の経隆と共に甲府新田藩を立藩した事実は、その能力の高さを示唆しています。一方、三日市藩への移封後、比較的早期に家督を弟に譲っている点からは、政治的な駆け引きや、自身の性格・能力を冷静に見極める洞察力があったと推測できます。

時睦は、父吉保の政治的影響力の下で成長し、自身も一定の地位と権力を手にする一方、時代の変遷の中で、その地位を失うという、浮き沈みの激しい生涯を送ったと言えるでしょう。彼の生涯は、江戸時代中期における政治的状況や、大名家の盛衰を理解する上で貴重な資料となります。

系譜

父: 柳沢吉保
母: 正親町町子（または田中氏）
* 養子: 柳沢保経（吉保の七男）

このように、柳沢時睦の生涯は、父吉保の影に隠れがちではありますが、甲府新田藩、三日市藩の藩主として、時代を生き抜いた一人として重要な存在でした。彼の一生は、江戸時代の権力構造や、大名家の繁栄と衰退といった歴史的テーマを考える上で、重要な視点を提供してくれると言えるでしょう。

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